質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第四十四号

引揚者問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年三月二十九日

北條 秀一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   引揚者問題に関する質問主意書

一、「引揚者問題」とは、一は敗戦の結果国土の狭少化と引揚人口の増加によつて生じた人口問題であり、二は戦争犠牲の過重負担による不均等の合理的処理問題であると考えるが、政府は「引揚者問題」を如何に認識しているか。

二、引揚者は物質的に考えるとA級戦犯者よりも比較にならぬ程の苛酷なる待遇を受けているのである。従つて引揚者は老若男女を問わず、一人一人がA級戦犯者以上に責任を追求されている結果になつているが、これは甚だ不合理であり、民主革命完成のための最大の禍根となつていると思うが、政府の見解は何うか。

三、従来の政府は、引揚者問題を処理するに当つて、国民平等無差別待遇ということを信条として、引揚者の特別扱いを避けて来た。これは決して平等無差別待遇ではなくして、差別不平等待遇の結果となつているのが現実である。「引揚者問題」は第一項に述べた通り、敗戦の結果生じた重大問題であつて、引揚者を特別な取扱いをし、一日も速かに正常なる国民生活に復帰せしむべきである。国会はこのために特別委員会を設けたのであるが、政府もこれに同調し「引揚者問題」を特別に取扱いこれが救済をなすべきであると信ずるが、政府の所信如何。

四、「引揚者問題」は最も重大且緊要な問題であつて、労働問題とその比重において異なるところがないのみならず、より緊急を要する問題である。労働問題のために中央労働委員会が設置されているが、団体交渉権も生存擁護のための罷業権も持たない引揚者の問題を処理するために強力なる行政機関(例えば引揚者等戦争犠牲者対策委員会等)を設置することの必要が、特に今日の情勢において痛感されるが政府にその用意ありや。

五、芦田総理大臣は施政方針演説において、引揚同胞の救済に努力すると約束されたが、全国の引揚同胞が、その自立更生と救済について政府に要望しているところは政府の十二分に承知しているところである筈だが何うか。
 その要望に対して対策を持つておられることと思うが、その抱懐されるところの対策(即ち総理大臣が約束されんとする救済対策)の大綱について承り度い。