質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第八十一号) 昭和二十二年十月九日配付

内閣参甲第九三号
  昭和二十二年十月七日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出利根川並に渡良瀬川河畔内農地埋立工事打切等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出利根川並に渡良瀬川河畔内農地埋立工事打切等に関する質問に対する答弁書

一、渡良瀬筋の所謂赤麻沼游水地内に調整池を築設致して居りますのは洪水位が最高に達せんとする所謂わば最急迫時の水を調整池内に溢流せしむることに依つて単なる遊水池よりも更に一層洪水調節機能の増大を図ろうとするものでありまして耕地の造成を主眼とするものではないのでありますが本工事の中途にしてこの度の水害を見ましたことは遺憾な次第であります。
 斯様に本工事は洪水調節機能の増大を図るものでありますけれども今回赤麻沼游水池附近に於ける堤防欠壊等もありますのでその施工の緩急順序等につきましては慎重に研究の上適当なる措置を講ずる考えであります。
 次に水害地に於ける防犯対策並犯罪状況等につきましては被害の間隙に乗じ不良徒輩の跋扈が予想せられましたので水害発生直後警視庁始め関係県に対し指令を発し強窃盗は勿論漂流物横領暴利行為等の犯罪防止に万全を期するよう指示したのであります。
 これに基きまして各庁、県では警備本部、防犯部等を設けまして被災者の救助のみならず犯罪の防止に力を尽したのでありますがこれを警視庁に例をとつて見まするに水害発生の九月十九日非常召集を行い、五五三二名の警察官を動員し更に同月二十一日には警備本部を設け毎日一千数百名の警察官を動員して一般救助の外、駅、橋梁等交通要衝地に検問所を設け不良徒輩の侵入を防ぎ又は武装警邏、密行等を強化し或は和船や進駐軍より貸与せられた上陸用舟艇等を使用して水上を警邏し犯罪の防遏、検挙に努めたのであります。他の県においても殆んどこれと同様な防犯措置を執つて居るのであります。
 この警察力と応急対策の強化に依り犯罪は減少の傾向を示したのでありますが、試に警視庁亀有警察署外四署について見るに水害発生日前十日間の犯罪発生は一七二件でありましたものが九月二十日以後十日間の発生は八二件となつて居りまして未届のもの若干あると致しましても尚多少の減少を認めることが出来ます。
 然し乍らたとえ少数のものにせよ他面相当の悪質犯が天災の上に更に重なる被害を与えるようなことは真に憂うべき憎むべき所業であつて特に漂流物の所有権や救済物資の配給を繞り横領、横流し、恐喝事件等水害特有の犯罪の発生を見ましたことは洵に遺憾に堪えないところであります故、先に述べましたような防犯対策の続行に加えて悪質犯の検挙に努力中であります。
 又災害者の救済等につきましては関東、東北風水害応急救助対策委員会を内閣に設置致しまして応急救助対策の樹立並に応急救助措置に関する各省間の調整連絡を計り関係方面の協力の下舟艇を始め食糧、寝具、衣料、日用品等の応急生活必需品、医療品の急送、救護班、防疫班の急派、ララ物資の放出等あらゆる方法を講じて参つたのでありますが、充分とは申し難い実情で御座いますので今後更に寝具、衣料、日用品等の生活必需物資の配給に努める外罹災都道府県の応急救助費につきましては過般審議を経ました災害救助法の補助率によりまして罹災都道府県の申請に基き予算審議中であります。