質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第五十号)昭和二十二年九月十六日配付

内閣参甲第五八号
  昭和二十二年九月十二日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出住宅問題についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出住宅問題についての質問に対する答弁書

一、国有財産(特に旧軍用財産)中の建物で、住宅問題の解決等民生安定のために転用出来るものは事情の許す限りこれに振り向けている。又国有財産で既に一時使用を認可したものでも、その使用の状況に鑑み、余裕のあるものその他使用の方法が適当でないと認められるものについては目下その再検討を励行しつつあり、それによつて一時使用範囲の縮少或いは使用の取消等を行い、最も合理的な使用目的に供するように努力しております。

二、住宅資金の円滑を図るため御質問の如き住宅復興金庫の設置も住宅政策上の一つの方策と考えられますが国家の財政、金融の現状からみまして困難な事情にあり、目下住宅資金に関する方策について慎重検討中であります。

三、生計費の基準である住宅費は既存の住宅の低い家賃も入れて算定した平均であるため半額の国庫補助を以てしても現在の建設費で算出した庶民住宅の家賃と右の基準の家賃との間に相当な開きがあることは御説の通りであります。この生計費と住宅費の矛盾をなくするため政府は建築費の低減につとめると共に経済、財政等のあらゆる角度から適切なる施策を講じたいと考える次第であります。

四、公営住宅の経営が極めて困難であることは御主意の通りでありまして、此に対しましては国家としてもその経営を容易ならしむるよう各種の方法を講じて公共団体に対し積極的援助を与え此の問題の解決に当りたいと思います。
 尚国家管理の点につきましては財政上の制約もありますのでよく考究して見たいと思います。

五、住宅の困窮度は具体的の場合には千差万別であつてその優先順序は中々判定しにくいものでありますから希望者を審査し真に住宅に困窮するものであれば之を適格者としてこの適格者の中から公開抽せんによつて入居者を決定する現在の入居者決定方法は貸家の供給が非常に少い現状においては巳むを得ないものと考えております。
 たゞ民主的な委員会をこの適格者審査に加わらしめることは審査の公正上のぞましいので左様指導いたしたいと思つております。

六、現在庶民住宅建設を阻害しております主な原因は資材の絶対量の不足及金融の梗塞等の根本的な点にありますので此が解決には真に官民一体となり住宅問題に取り組む心構えと根本的施策の実施が必要と存ずる次第でありまして政府は強力に此が実施に当る決意であります。
 此の意味において行政機構の上においても強力な機構を要するものと考えておりますが建設省の設置は住宅政策のみならず凡ての建設力の綜合的発揮という新しい観点より考慮する必要がありますので行政機構全般を検討の上将来研究致したいと存じております。
 尚御主意の住宅公団の如き統一的な建設機構を通じて建設を行わせるか、各地方の実情に適応した機関を動員して建設を行わせた方がよいか否かについては住宅営団の経験から考えても余程考えて見なくてはならぬと思つております。

七、今日住宅敷地の確保は御説のとおり極めて困難でありまして、住宅供給上少なからぬ支障を与えていますので、計画住宅建設に必要な敷地を確保するための立法的措置につきましては特に取急ぎ研究を進めています。
 又御質問の土地投機売買の抑制に関しましては別途必要な措置を講ずるべく目下考慮中であります。

八、建築基礎資材の生産手段乃至用具を国家管理とする意思は目下のところ考えておりません。
 御主意の通り建築需要に応ずる資材の計画生産につきましては今後一層尽力致しますと共に併せて規格住宅の工場生産代用資材の積極的調査研究並びに生産指導を実施致したいと考えております。
 尚配給の面につきましては現在の指定生産資材割当規則及び臨時建築等制限規則の運用によりまして割当の適正を図ると共にその取締を益々強化して、やみ横流しの撲滅を期する所存でございます。
 中小企業者の育成保護については目下その対策を関係官庁で練つて居りますので近く具体化される見込みでございます。

九、余裕住宅の開放は御主意の通り現在の深刻な住宅事情の下に於ては強力に促進を要するものと認めますが、此を促進するに当つては我国の生活様式、風俗、慣習、家屋の構造の上に於て同一家屋の居住が困難である点をよく考慮の上行うべきであると考える次第であります。
 以上の意味におきまして政府の方針と致しましては強制権を発動する以前に先ず極力開放せしめるよう勧奨し、所有者に対して意見具申の機会を与えることとし、正当の理由のないものについては貸付命令をなすことに致しているのであります。
 ただ従来の実績に鑑みますと運用上なお改善を要すべき点があると思いますので、輿論の支持の下に一層これが徹底化のため努力致したい所存であります。

一〇、今回の非戦災者特別税は、戦災者と非戦災者との間における犠牲の不均衡を是正するとともに臨時緊急な財政需要に応ずるため、この際、非戦災者に或程度の負担を課することも真に巳むを得ないものと認め、非戦災者に対し一回限りの特別課税を行うことを考慮しているのであります。
 以上の趣旨により創設される非戦災者特別税は、直接これを戦災家屋の復興の財源に充てる考えはありません、戦災家屋の復興については、政府において戦災復興に対する綜合施策を樹て着々その実行を期しているのでありまして、そのための経費は、一般の国庫の収入で賄うべきであると考えるのであります。