質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第四十四号)昭和二十二年九月二日配付

内閣参甲第四七号
  昭和二十二年八月二十九日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員稻垣平太郎君、大隈信幸君提出戦災私学復興助成に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員稻垣平太郎君、大隈信幸君提出戦災私学復興助成に関する質問に対する答弁書

一、戦災私学えの寄附金と所得税との関係については、

 所得税法において個人の所得一切を綜合して能力に応じた税額を納付せしめる建前となつているから、個人は所得税を納付せる残額の中から寄附をなすべきである。この考え方により、従来寄附金については、その目的を問わず、課税対象より除外し或は免税した事例はない。従つて戦災私学復興のための寄附は、誠に結構であるがそれについて所得税を免税することは国家財政にも重大な関係があり、適当でないと考える。

二、戦災私学に富籤の発行を認めることについては、

1 個々の私学に籤の発行を認めるときは全国において相当多数の発行主体を認めることとなり、なお他の事業等にも発行を認めざるを得なくなるのでその監督が誠に困難となる。
2 各学校単位における籤発行額は概ね少額となるものと思はれるが、発行経費、宣伝経費、奨金の割合はかえつて増加するので純収入はせいぜい発行額の四割以下のものに過ぎない。
3 籤の氾濫を予想され従つて国民の籤に対する飽和感から国、都道府県の発行の籤の売捌に影響を来すおそれもある
 等の理由により実施は適当でない。

三、軍建築物等に無償払下について、

 私学が戦後の我国教育文化振興に重要なる地位を占める実情にあると認められるので、この点は文部省とも協議の上緊急と認められるものに対し復旧の応急的措置として優先して旧軍用財産の転用を図つており、これ等については払下げも考慮している。
 ただ、旧軍用財産は終戦後雑種財産となつたのであるが雑種財産の無償払下は国有財産法第五条の規定により法律を以て規定の要がある。而して憲法第八十九条、財政法第九条の趣旨より見て無償の払下は認められない。かつ雑種財産は財政収入源に引当てている次第でもあるので、遺憾ながら無償払下の点については御希望に応ぜられない。