質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第二十六号)昭和二十二年八月十六日配付

内閣参甲第三三号
  昭和二十二年八月十五日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出農地の実際作付面積調査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する



   参議院議員小川友三君提出農地の実際作付面積調査に関する質問に対する答弁書

一、農作物の作付面積は、八月一日を期して全国的に行われた臨時農業センサスで各農家から申告を求めた一重要項目である。
 同調査は毎年定期のものであり、従来、水稲、甘藷等数種類のものしか調査しなかつたが、本年は連合軍総司令部からの意見もあり、供出配給割当てに用うる資料として完全を期し、主要作物全部に亘つて申告を求めた。この全国的集計ができるのは、九月初旬の予定である。

二、特に水稲と甘藷については、八月一日に各農家から一筆毎の面積の申告を求め、作物報告事務所(但し本年はその末端職員が未だ整わないから、食糧事務所の職員をして兼務にて担当させる)が、一筆毎の実地検分をし、著しく不正確な申告の発見に努めると共に、申告の脱漏の発見に努め、殊に出作入作の関係が複雑であるために脱漏する恐れがあるので、農地委員会の一筆調査の結果を参考として検討することになつている。

三、しかし、以上の調査は申告に基ずくものであつて、農家が意識的に内輪申告をした場合もあり、土地台帳の面積そのものに比して実際面積が総延びのある場合もあり、又申告の場合には何畝何歩まで精しく記載せずラウンドナムバーで申告するのが普通であつて、それに基ずく誤差も決して小さくはない。申告の結果と実際とがどれだけの差があるか見当をつけるために、八月二十五日より一月を期して、農林省統計調査局及び作物報告事務所の職員をして全国一万余筆の田畑について実測をなし、その実測面積とその筆について八月一日に申告されてゐる面積とを対比して何割内輪になつているかの推測をする計画をしている。

四、ヤミ耕作面積の予想は困難であつて、地方によつて可なり相違があると思う。ヤミ耕作面積のうち一筆全部を隠すものは、平坦稲作地帯に少く山間畑作地帯に多いが、筆毎に実面積より過少に申告して隠すものは、耕地整理地に少なく未整理地に多い。小経営者に少なく大経営者に多いだらうと想像している。前記三の調査を実行するための準備調査として、東京都北多摩郡多摩村において実施した実測面積と申告面積との対比によると、実測の平均一筆六畝十五歩に対して、申告の平均四畝二十六歩で約二割五分の内輪となつていた。
 青森県農地部が、一旦中央農地委員会の承認をえたところの県内を七階層に区分するところの農地保有面積を更に二階層に区分し直して訂正の承認を求められた際の主要な理由は、耕地面積の統計が過少な村があつて、極端な村において村の平均において一戸当り五反歩の誤差があつたから、農林省の示した算式にのみ従い難いことを発見したということであつた。
 右の如きは恐らく極端な例であると思う。しかし少くとも実面積の一割、多ければ二割が昨年の申告による耕地面積統計の誤差ではないかと思う。

五、耕地整理施行地は、精密に実測されておるために縄延びが少い。
 この点は供出割当てにおいて不公平を生じている。又自作地は縄延びがあるのに、小作地は精密な面積になつて居り、これまた供出割当において不公平を生じているという声を聞いている。

六、耕地面積を精密に調査し、ヤミ耕作面積をなくすることについては、衆議院においても成瀬喜五郎議員より希望的意見を自由討議の会議において述べられている。三に述べた如き方法は、応急的な一策に過ぎないのであつて、農林省は本格的な耕地面積調査を統計調査局をして立案せしめている。

七、現在我が国の直面せる最緊急事たる食糧問題解決の為土地改良事業の一環として耕地整理を昭和二十三年度以降毎年四万町歩を施行する計画であるが開拓法の制定技術者の養成と共に財政の許す範囲内に於て最善の努力を尽し未整理地の改善に尽力する予定である。