質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第二十一号)昭和二十二年八月十二日配付

内閣参甲第二六号
  昭和二十二年八月十一日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出医薬分業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出医薬分業に関する質問に対する答弁書

 医薬分業については、医薬業行政上多年にわたつて論議せられて居る所であり、当局としても是が利害得失につき、種々研究を重ねている次第であります。
 元来医薬分業は、種々利点のあることは言うまでもない事でありまして、現代医学、薬学夫々の分野における進歩並びに学問上の分化と共に益々複雑専門化して来た調剤技術を専門家たる薬剤師に委ねることは、只でさえ不足せる医薬品を多数の医師の手下に散在退蔵する弊を防ぎ得る等幾多の利点を挙げ得ると考えられるのであります。
 然し乍ら、医師も調剤し得ることは、医療上種々の利点が有りますと共に、翻つて日本の現状を顧みますとき、従来多年にわたつて医師が調剤を兼ねて来た関係上、一般民衆もこの状態に慣れ、親しみを感じて居り、一方において我が国の薬局は、殊に終戦後戦災に依る復興が遅々として進捗して居らぬ現在、完全な医薬分業を行うのには適当でない状態と考えられます。又薬局の分布状況よりするも、国民大衆に却つて不便をもたらす結果となり、更に医薬品の不足せるための薬局における調剤の困難は、益々大衆を不安に陥れる虞が大であるようにも考えられます。
 かく考えますとき、多年にわたる慣習を一朝にして激変せしめることは、幾多の混乱が予想されるのでありまして、医薬分業の利点は充分に考えられ乍らも、未だ日本の現状では時期尚早であるの感が大であります。さりとてこの問題は、将来解決しなければならぬ重大懸案でありますので、今後充分な検討を加え、万遺憾のないよう慎重を期したいと考えている次第であります。