質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第三号)昭和二十二年七月九日配付

内閣参甲第七号
  昭和二十二年七月八日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員姫井伊介君提出米麦専売制実施に関する質問に対し別紙答弁書を送付する。



   米麦専売制実施に関する件

   ◎参議院議員姫井伊介君提出に依る質問に対する答弁書

一、米麦専売制度の実施に関する意見は既往より屡々之を聞くのであるが、次に述べるような種々の欠陥があるため、政府としては現在その実施を考えていない。

二、専売論を考えるに当つて先ず専売制の対象をどの程度迄拡張するかが問題であるが生産物の流通配分関係に於てのみ独占権を行使する所謂販売専売の程度とすれば、生産物の販売命令、販売系路、配給機関を厳格に定め、法令に基いて運用されつつある現行食糧管理制度とは大差ないものになり、公然政府の独占を宣言し、生産者の生産意慾の上に微妙な影響を与える専売観念を採り上げる必要が稀薄であると思う。
 即ち農民によつて生産された米麦の総量を政府買上げとし、農家の消費は政府の配給に依存する形態が想定されるのであるが此の方式によれば食糧の需給調整が比較的高度に計画化されること及実収量の完全な把握が出来るとすればそれが即供出割当量となるから、現行の供出割当の決定に対する労力が節約されることの二点が長所と云える。
 然しながら農民にとつて自己の生産した食糧を悉く一旦政府に売渡さなければならないと云うことは、生産意慾に逆作用を与える虞れがあり、又収買米麦の完全管理のため、貯蔵施設の大規模な増設を必要とするため、現在の収容力を以てしては不徹底なる委託管理を行わねばならぬ等欠陥が多く現行制度に比し弊害は寧ろ増加するものと思う。
 又販売過程のみならず生産過程にまで政府の独占を拡張するときは農業経営の自律性は完全に払拭され、増産に対する農民の関心が低下することは一層甚だしくなると共に、その完全管理のため新たに厖大なる専売官署の設置を必要とする等の難点がある。
 政府としては斯かる弊害を種々勘案し、現行供出制度の改善の方向を農民の生産意慾、経営の合理化に並行せしめつつ供出本来の目的たる国民食糧の供給確保を図り得るよう目下鋭意検討中である。