質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第百二十九号)昭和二十二年十一月二十六日配付

農機具生産用並に小農具生産及補修用諸資材等の所要数量確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十一月二十四日

宿谷 榮一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   農機具生産用並に小農具生産及補修用諸資材等の所要数量確保に関する質問主意書

一、農作物生産及び加工資材としての農機具は肥料と共に最も重要なることは言う迄もない。年々農家の必要とする機種、数量を充分に確保供給し且つ手持小農具類の損傷等に対する迅速な補修を行い農作業上に不測の支障を来さねように計らねばならぬことは今更多言を要しない処で、これが供給に完壁を期することによつて農家の生産意慾を昂揚し生産実績を増進せしめるのである。これが迅速なる供給に事欠くようであれば米、麦、藷類其他農産物供出の完遂を期することは到底至難のことであると考えられる。然るにこの重大なる農機具の生産並に、補修の問題に対して政府は如何なる施策を樹てつつあるか、恐らく何等真剣な考慮が払われていないのではないか。
政府は国民生活安定の基盤をなすものとして米、麦等主要食糧の生産計画を樹てその供出割当を決定するに当り、先ずこれ等生産過程において絶体必要とする農機具の年間需要量を測定しこれが百パーセント確保に万全の施策を傾注すべきであるにも拘らずその実際は何うであるか。

一、昭和二十二年度に於ける全国農家の要望する農機具の絶対需要数量生産のための資材最低必需量を鋼材について観るに、年間四三、三四七屯に対し年度当初八、〇〇〇屯の割当を一応は決定したが、この数字は実現を伴わぬ想定で現物の裏附なき机上計画的数字で期別割当数量として第一四半期において漸く一、〇〇〇屯、第二四半期一、二〇〇屯、第三四半期一、七〇〇屯(内三〇〇屯は地方発券)第四四半期見込量三、〇〇〇屯合計六、九〇〇屯という極めて微々たるもので需要量に対して殆んど問題にならぬ数量にしか達しておらないのである。この僅かな数量を以てしては最低需要数量の極少部分の生産をなし得るに止まり、所期の農作業上に甚だしい障碍を来し食糧生産の著しい減退を招来する惧れが充分に予想されるのである。

一、なお特に寒心に耐えないのは農家の最も手近にして日常必需の小農具、鍬鎌類の製造並に修理等を主業とする全国二万五千の野鍛冶業に対する鋼材並に生産用燃料等の割当は殆んど絶無に等しいものがある。
最近本員の手許に届いた資料による関東信越地区の一例のみによつてみても、この事実を窺い知ることが出来よう。
即ちこの地区(関東信越一都九県下)所在の野鍛冶業者約三千五百余軒に対し昭和二十二年九月、十月両月のコークス総割当実量は僅かに各々六十一屯宛に過ぎないのである。斯様な状態では新造品の生産は言うまでもなく緊急修理の完全をも期することは到底望み難いのである。

一、よつて、これ等野鍛冶業者に対し新規生産並に補修用の鋼材、燃料の外更に木材その他の副資材、二次製品等今後の適正なる割当問題に対して、政府は果して如何なる策を施さんとする考えであるか。次年度以降においては充分割当増加の見込があるか、無いとすれば何うすれば良いか、特に深甚の留意を促したいのは前述の主要農機具及び野鍛冶用の資材燃料の供給不充分の結果は農産物の生産並に供出に直結し至大の影響を及ぼす所以であると思う点である。

一、なお終戦後一見形態のみを模倣した性能劣悪なる農機具が市場に氾濫したために優良農機具に対する信用をも失墜したに止まらず延いては農家に甚大な迷惑を被らしめ、遂には農産物の生産費にまで波及するの事態をも生むに到つたが、これ等の転用された資材の適正なる配分を計る等当然政府の打つべき手は幾多あり、今後これ等の取締については充分遺憾なきを期せられたい。

一、要は農機具の生産配給並に補修等は米、麦藷類その他主要農産物に対する生産確保と供出完遂の必然的裏附となるべき性質のもので、向後これ等両者の生産計画は当然一環の繋りを有つて樹立せらるべきものであるということを深く銘記されたい。

  右に対する政府の明確且つ速かなる答弁を要求する。