質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第八十六号)昭和二十二年十月十一日配付

水害地救護米等腐敗物配給等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十月九日

小川 友三      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   水害地救護米等腐敗物配給等に関する質問主意書

一、本議員が関東地方水害地を視察するに埼玉県幸手町、杉戸町各方面に泥水に数日間又はそれ以上漬りたる米麦等相当腐敗せる食用に甚だしき不適なものを配給しておるが、政府の命令によるものか、処見を問う。又パン類等も、腐敗物を配給しておるのが沢山あり、水害地国民の反感と不満は、甚大である。之れ等は計劃的配給なるや。或は、不注意を強行せるものなるや。所見を問う。

二、社会事業費不足並に水害対策費不足にて、幾百万人の国民が衣食住に苦しんでおる昨今、映画観劇の人々は、Aクラス的幸福なる存在である。之れ等の人々は、余裕ある人である。政府は、この際、臨時観覧税を設け、今日の税の外に、三倍より五倍程度の課税すべきであり、その税収にて水害対策及び社会事業費等に当てるべきであるが、賢明なる政府の御処見を問う。絶対に可能なる課税方法と信じ、政府の英断を期待する。

三、首相の「国民に訴う」書の三頁より四頁に、国民の体力のある内手術の必要を説かれておるが、治山、治水事業もその内である。昨今の治山及び治水は手術どころか、籔医者的一時手当ではないか。利根川の修理を視察しても当然放水路を手術すべきを堤防を一時的に膏薬張にやる程度で最良のチヤンスたる決潰地より放水路を作つておらない。水勢を知らざる。科学者でない証明である。又科学者の意見を聞かざる素人的政治であると見られる。著書の大精神は、科学者、名医的御意見であるが、実際行う政治は、籔医者にも及ばざる点が有るのである。
 食糧問題にも四頁において及んでおるが、本議員が度々質問する通り、わが国には、闇農地が非常に多いのである。主食物一千万石以上二千万石は、これら闇農地より収穫されておる。これ等は、闇売買の温床である。又農民の六合以上の食糧の基本である。政府は、本議員の質問の結果、調査の一部を答えられたる青森県下では、一戸平均農民が、五段歩の闇農地があつたと報告された。この割合なら二千万石以上の闇主食の計算が出るのである。輸入により連合国より三億ドル前後の借金が出来た今日、今後も借金苦は、破滅の主因であるが、国内消費は、充分出来る。主食がある大発見の闇農地を何故速かに調査し、発表しないか。著書は、誠に素人には良いが、本議員の不賛成なのは、科学的調査の不充分なる著書の及ぼす大影響を苦悩し、首相の科学的責任ある処見を問う。

四、九月十五日十六日の風水害にて一番打撃を受けた私鉄は、前橋市桐生間の私鉄である。大部分の鉄橋は、根本より流出し、再起困難を伝えられる私鉄である。利用する幾十万人の国民の不便この上ない。
 資本金の小さい同会社の資本力にて恢復は全く困難である。政府は、之れを調査し、国民の幸福の為、買収し、復旧すべきであると信ずるが、政府の処見を問う。

五、政府は、台所で金がないと言うが、国民の所得額は、未曾有に巨額なるを認めざるを得ない現状である。治山、治水事業に少なくも二百億万円投資の必要がある。水害の損失は、本年度数百億万円以上に達してある。茲において水害防止資金の収入の為に、臨時に酒(日本酒)一升を五百円程度にして臨時収入を得る為発売したらば二百億万円の増収は容易である。或る村にて六・三制の新制中学資本に、米供出配給酒に二十万円を加重して寄附を求めたら、一日にて二十万円が出来たのである。全国大小三十万町村と見て、二百億万円の増収は、この方法で一、二ケ月で成功するが、政府は、断行すべきである。
 政府の処見を問う。

六、現下のたばこの闇取引は、巻煙草十本入四十円平均であるが、入手困難で、唐モロコシなどの毛を煙草代用に使用しておる人が多い。茲において、政府は、赤字防止の方針として、治水(仮称名)と言う煙草を十本入り(五十円)にて売出し、この利益の一部を治水治山事業に出し、一部を赤字防止に廻す一石二鳥の政策を実行する積極的意志があるや。処見を問う。

  右質問に対し速かなる御答弁を要求する。