質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第八十二号)昭和二十二年十月八日配付

山林濫伐と放水路問題等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十月六日

小川 友三      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   山林濫伐と放水路問題等に関する質問主意書

一、十年来の山林の濫伐と植林の不足が今日の大水害の主因であると共に、今日の河川では水の収容力が不足しておる。刑務所の昨今は大入り満員で大洪水にならないが、水の方は河川の収容力以上は大洪水となり大水害を与える。茲に新設放水路の必要が必至であるが、洪水地を視察するに、全くその放水路計画がない。奔流の作用に反逆する治水事業は、多年失敗し、国民は、苦境に転落しておるが、之れに対する政府の処見を問う。
 又、治水作業は政府直営が可か、民営が可か之れに対する処見を問う。

二、今回の風水害にて流出或は破壊された家屋に対する救済策は、長期の低利資本によるべきであり、二十年又は二十五年の年賦が適当と信ずるが政府の処見を問う。
 国民の片山内閣に期待する気持は絶大であるが特に栗栖蔵相の答弁を中心に明確なる答弁を求む。

三、我が国のセメント工業は現在全く其の製産が低下し国民需要の一〇%にも達せず、闇値は一俵四百円以上である。国内資源によるセメント工業の不振は、資金難と石炭不足による。政府は、極力融資し又石炭増産により同品増配をなすべきである。水谷商相の主張する石炭国管でも或形式でも一日も早く大増産を石炭にも注入し、緊急の治水工事、砂防工事、河川工事にセメントを沢山送るべきであるが、之れに対する積極的政策ありや処見を問う。

四、現下の開拓農民の一部が大洪水の基たる山林の開拓に当つておるが、之れ等は、大洪水の原因の一因をなすものにて百町歩の開拓が百倍千倍の美田に洪水を送る起源をなしておるのは、政府も国民も今や全部知る処である。茲において水産業開拓に方向転換の必要がある。水産業に百万人の開拓者を送る大計画を樹て戦災者・海外引揚者に職を与うべきである。木造船と網を中心に政府は予算を計上し直に着手し失業救済、水害防止及び食糧問題解決の一石三鳥の政策に対し政府の処見を問う。

五、水害地は人心動き不安定である、水の中の家に舟にて切盗団が侵入する、或は集団強盗等を聞く、警察官の手不足のために、町村の消防団が防犯に協力しておる処が多いが、之れ等消防団員は、収入がなく全くの奉仕である。それ等の人々に政府にて臨時出費し、防犯に尽す人々に敬意を表すべきであるが、政府の処見を問う。

  右質問に対し速かなる答弁を要求する。