質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第五十号)昭和二十二年九月三日配付

住宅問題についての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年九月二日

北條 秀一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   住宅問題についての質問主意書

 敗戦日本再建に最も緊急の必要に迫られながら最も貧弱なる結果しかもたらしていない施策の中に住宅問題がある。このことは既に参議院の自由討議においても取上げられ大方語り尽された通りであるが、我々引揚者は戦災者及び一般困窮者と共に此の問題に関しては以上の認識に止らず抜本的対策の樹立と更に何よりもその一刻も速やかな実施断行を望むものである。以下数点に亘り政府の覚悟と具体的な方策を御うかがいしたい。

一、政府は国有財産(旧軍財産)に就ては財政収入の見地のみでなく民生安定の面からもその活用を考慮される由(国分寺旧陸軍技術研究所に関する特殊物件処理委員会委員長西尾長官の返答―七月三十一日)であるが、遊休官有建物にも民生安定政策から之を活用する意思はないか、且つ右の物件にして既に貸下げられたものでも名儀のみで実際は使用せざるか、ブローカー的に又貸ししているもの、或は一部使用で大部分は無使用に放任されているもの等に対しては貸下げ許可取消し、或はそれを引場者等に開放する為の責任ある調査及び積極的斡旋をなす意思ありや否や。

二、住宅建設の実績が僅かに今日一〇%の復興にすぎない最大の障害が資金の点にあることについて住宅復興金庫の如き特別融資の方途を講ずる意思なきや否や。

三、現在政府の一般庶民住宅として建設しつゝある一戸一〇坪程度の賃貸住宅はその建設費を政府は半額補助しているにかゝわらず尚家賃一ケ月四五〇円――五〇〇円に達する。政府の基準賃銀の中の生計費基準算定では住宅費は八九円五五銭になつて居り、その差額実に三六〇円――四一〇円である。此矛盾に対して差額は補償する考えか又は建設費全額国庫負担にする意思ありや。

四、公営住宅の維持管理は今日、昭和十三年地代家賃統制令の枠内の家賃収入では不可能であり独立採算は成立しない状態であり、然も戦事並に終戦直後の粗雑なる住居は極めて過大な修繕を要することは当然であるので、借家入乃至公共団体等に於て赤字負担することは不可能なるに鑑み、公営住宅の国家管理を断行し運営については借家人組合等の自主的方法によつて合理的管理をする必要があると考えるが政府は如何に考えるか。

五、住宅の配分を抽籤方法によつているが本当に必要な者に貸与すべきであり、之がために民主的な運営をなすため住宅需要者供給者の代表による民主的住宅委員会を設置することが最も緊切であると考えるが、政府にその準備ありや。

六、戦災者、引揚者等をはじめ一般大衆の自力住宅建設は全く不可能であり、国家計画による賃貸住宅によらざるを得ない。分譲住宅については、全く大衆の能力外にある。現在住宅建設は地方公共団体の責任に於て施行されているが遅々として進まないのは政府のやり方に熱意が無いためと行政機構の不備によるのである。此際国家復興のために特に民生安定の基礎として住宅建設が必要であるので、建設省を設置すると共に政府並に人民代表の参加による住宅公団の如き民主的住宅建設機構設置の考えはないか。

七、借地権利金をめぐつて錯綜している土地投機を抑制するため又罹災土地借地借家臨時処理法を廃し、土地使用権を公収し国家管理せねば、計画住宅の完全な建設は絶対不可能であるが政府は土地収用に関する緊急措置を講ずる考えはないか。

八、木材、セメント等建築基礎資材の生産手段乃至用具を国家管理とし計画生産を行い配給を計画化し、ヤミ横流しをなくする意向なきや。又、副資材生産のための中小企業者の育成保護について具体策ありや。

九、現行緊急措置令の欠陥例えば悪持主に対する強権発動をうたいつゝ事実は「勧奨規定」にすぎざる点、或は開放施設の経費の国家的補償を規定しつゝ実情は全く死文となつているので、之を改正若くは廃止して余裕住宅の徹底的開放の措置をとるべきであると考えるか何うか。

一〇、非戦災課税(非戦災者、家屋家財税)は「戦争犠牲均分化」の建前より戦災家屋復興のために行われるのであるならば正しいと思ふが、それが単に財政収入の見地のみから考えられたのでは、大衆課税となることは必須である。
 この際非戦災家屋課税によつて戦災家屋を復興する考えはないか。