質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第三十号)昭和二十二年八月十三日配付

開拓政策途上に於ける隘路に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年八月十一日

北條 秀一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   開拓政策途上に於ける隘路に関する質問主意書

 緊急開拓増産は平和日本再建途上に於ける重大問題であり、緊急開拓増産の目的を達成する為に最も考えねばならぬことは安定開拓農家を速急に育成することでなければならない。
 現在の状況下に於ては開拓政策遂行上幾多の困難は当然であつて、それ丈け開拓の必要性も亦強調されねばならない。然るに現在の施策は開拓とは開墾なりとの感を深くする、即ち機械的に木を伐り、土地を耕し、開拓者を入植せしめ、時期はずれの金融をやり、且つ直に必要なる肥料、農具等も中央政府に於ては準備するであろうが、現実には個々の開拓者には行き亘らない状況であり、開拓者の育成について無関心であるか、さもなければ無策であるという実情ではないか。
 現在開拓政策遂行途上隘路となつている諸点に付て政府は如何に考えているか。

一、土地の問題

 開拓者が入植に際して先ず第一に問題になるのは入植地である。而して既耕地の買収は可成り順調に進んでいる模様だが、入植地の対象となるべき未墾地については非常に成績が悪い。
 先ず私有地については既耕地に対する地主の諦めが反動的に顕れていて、地主勢力の温存に努めているかの感さえある。
 従つて入植者の大部分が引揚者、復員者、戦災者であり、資金のない之等のものが入植地を獲得する為に多大の運動費を要する現状にあり、然も真面目な入植希望者が入植を断念する如き傾向にある。
 又入植希望者に対し、直に土地が与えられない為入植の熱意がうすらぎ、又土地の解放が決定すると地主は直ちに立木を伐つて了い、折角土地は決つたが将来開拓地建設になくてはならない立木もなくなる始末である。従つて入植希望者は私有未墾地の開放に代るに国有林野の開放を望んでいるが、之亦行政機構の末端における事務担当者の認識不充分乃至縄張根性等から開放は遅々として進まぬ。
 政府は国土の綜合的開発計画の下に開拓計画、特に未墾地開放を強力に促進すべきである。

二、資金の問題

 前述の如く入植希望者は資金乏しく、就中永年海外に在つた引揚者は殆ど無一物といつてよい。
 しかも入植に際しては、当初より相当の資金を必要とするのである。資金の無い為に入植希望を断念せざるを得ない者があると共に、入植前後の継ぎ資金がない為に開拓に専念出来ず、開拓の進度が遅れるのみならず脱落者さえ出す結果になつている。
 従つて現行開拓資金融通法に於ては、入植後一定期間を経過せねば融資は受けられない実情にある故、帰農組合の結成が出来た入植希望者に対しては入植前に営農資金の一部を前貸する便法を講ずべきである。
 尚現在の物価高に於ては現行融資額を以ては健全な開拓農家の育成は困難であるが特に高冷地、寒冷地平野部に於ける融資額が一律であることは不適当である。地帯別、地区別に営農標準案を作成し、之に基く適正なる融資をなすべきではないか。

三、開拓者用食糧、肥料等の確保

 食糧については加配米を受けることになつているが、加配米はおろか遅配がある状態であり、資金不足の開拓者にとつては重大問題である。是非遅配の絶滅は勿論、加配米の確保を期さねばならない。
 肥料については開拓地は原則として非常に地味が不良で、是非肥料を必要とする故確保を図らねばならない。
 肥料等については開拓者の枠はあるが、最末端に於いては一般農家に横流れして手に渡らない状況である。

四、家畜預託制度の実施

 開拓地特に高冷地開拓には畜産を主体とする以外に方法は無いが、現在の資金状況ではとても買い得ない状況である故、国家又は特定機関によつて家畜の預託制度(仔で返済する)が実施さるべきである。
 尚開墾方法に付ても(新墾プラウの改良は必要であるが)畜力開墾の面を大きく取上げ、営農面との連繋を保たしめるべきである。

五、大規模開拓に必要な基本施設の国家負担

 集団地は概ね交通不便な避遠地である故、道路、電気、通信、水路等の基本施設は国家の負担で国家がなすべきであり、現状も実施することになつているらしいが、徹底しない状況ではないか。

  右質問する。