質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第九号)昭和二十二年七月十一日配付

経済実相報告中疑義に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年七月十日

油井 賢太郎      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   経済実相報告中疑義に関する質問主意書

 先ず第一に総説十三の(一)に於て商業にたずさわるものの所得の微増を大きく取り上げて居るが勤労所得の一九、八%から三六、九%に上昇せるのに比べて其の差が甚しく劣る事と物価指数が二十一年第一四半期六三〇%から第四、四半期の一、九三三%に昇騰せる事を基調とすれば敢えて問題にするに足らないではないか。然も其の末尾に「商業にたずさわるものの人口が有業者全体の中で七、一%しかないことと、比べて考えるべきである」と謡われて居るが政府は此の現象並に商業を如何に考えて居るか具体的に示して頂きたい。
 又今日経済再建、貿易の再開に当り健全なる思想と組織を有する商業者に対し其の経験と商品に対する豊富なる智識を充分に活用するこそ経済危機突破の一大原動力となるべきものと信ずるが政府の見解如何。
 次に生産に関する諸発表中、消費財の生産と生産資材の生産の量並に比率に付き発表がないが経済実相を国民に示す上に於て特に重大なる点であると思う。右に付き如何なる比率が最も当を得て居るものか政府の所信を伺いたい。
 次に総論十六ノ(一)に於て国土の荒廃の点に付き発表にもあつたが木材を切り倒した跡の植林が殆んど行われて居ないと云う事は誠に遺憾に堪えない処であるが此の責は独り国民の自覚にのみ負わせるべきものでなく政府の施策の拙劣な事が原因を為して居ると云われて居る事に対し一考を煩わしたい。何故なれば折角努力し、経費をかけて植林をしても例の農地法の様にいつ取り上げられるか判らないし万一植林する費用より遥かに低廉な代価で買上げられる事等があつては寧ろ努力する丈馬鹿を見るのではないかと懸念され植林意慾が起きないと云う事も伝えられて居る。独り植林のみならず総ての事業に於てかゝる傾向が見受けられるのは三思四考を要する事と思う。国民総てが聖人君子の域に達した思想の持主ならばいざ知らず人間には向上心がある慾望がある。此の心理状態を把握せずして単なる精神的協力を国民に強いても無駄である。働かざる者食うべからずの鉄則の反面働く者努力する者には其れ相当の余裕の出来得る制度も考えるべきであると思う。徒らに大衆に迎合する為富の均分化のみに力を入れる事は或意味に於て勤労と生産意慾の減退を来す虞れもあり敢て政府の猛省を促す次第である。