請願

 

第190回国会 請願の要旨

新件番号 1459 件名 ウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とB型肝炎ウイルスを排除する治療薬等の研究・開発促進及び肝炎ウイルス検診の更なる推進に関する請願
要旨  我が国のウイルス性肝炎患者・感染者は、現在二百五十万人と推定(厚生労働省)されている。死亡者数は一九六〇年代と比較し二〇〇〇年代は四倍以上の四万五千人に上り、これまでに百万人以上が肝硬変や肝がんで亡くなっている。現在の年間死亡者数は三万五千人余となった。毎日、約百名の患者が命を失っている。こうしたウイルス性肝炎の感染拡大の原因については、平成二十一年に成立した肝炎対策基本法の前文に「B型肝炎及びC型肝炎に係るウイルスへの感染については、国の責めに帰すべき事由によりもたらされ、又はその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがある。」と記載され、肝炎ウイルス感染拡大の責任が国にもあると明記された。さらに、予防注射と同様、一般医療においても、針と筒の消毒や取替えが不十分なことや長期の売血制度による輸血等での血液感染がウイルス性肝炎の蔓延(まんえん)を拡大させたとされている。このようなウイルス性肝炎問題が抱える特殊事情を受け、肝炎対策基本法第十五条には「国及び地方公共団体は、肝炎患者が必要に応じ適切な肝炎医療を受けることができるよう、肝炎患者に係る経済的な負担を軽減するために必要な施策を講ずるものとする。」とある。これを受けて国に肝炎対策推進協議会が設けられて肝炎対策基本指針が制定され、都道府県には肝炎対策協議会が設けられて啓発活動と共に治療及び検診体制の構築と推進が行われてきた。また、抗ウイルス薬が次々と開発され高額な医療費助成が実施され、多くの患者がその恩恵にあずかった。しかし、長崎医療センター八橋医師の厚生労働科学研究「病態別の患者の実態把握のための調査」が発表され、患者が置かれている厳しい状況が明らかになっている。平成二十七年六月に肝炎対策推進議員連盟が設置され、関係者と協議が行われ、肝炎対策が前進してきており、今後一層の拡充が期待される。現行の医療費助成は、抗ウイルス治療や重症化予防のための検査費用で主として症状が軽い患者が対象になっている。重い患者を対象とした身体障害者手帳は、平成二十八年度より認定基準が緩和された。医療費助成の対象は、従来より拡大されるが、やはり一部に限定される。高齢化・重篤化により精神的・肉体的・経済的に一層負担が増える肝硬変・肝がん患者が安心して治療を受けられる医療費助成制度の創設が早急に求められている。抗ウイルス療法への医療費助成の下で、C型肝炎については、ほぼ完全にウイルスを排除できる高額な新薬を平成二十七年九月から使用できるようになったが、B型肝炎はウイルスを排除できる薬がまだ開発されていない。核酸アナログ製剤(抗ウイルス薬)によりウイルス量をコントロールできるようになりつつあるが、肝炎ウイルスが排除されない限り、常に肝がん発症の危険性から免れることができない。国も既に特別予算を投じてウイルスを排除する画期的な治療薬等の研究・開発に力を入れているが、一日も早い創薬実現が求められる。平成二十六年七月の厚生労働省肝炎対策推進協議会資料によると、平成二十三年現在、肝炎ウイルスの感染を知らない潜在キャリアは八十万人程度、入通院している患者は八十万人ぐらい、感染を知りながら継続的に受診をしていないキャリアは五十三~百二十万人程度である。新しい治療薬が開発された今、潜在患者・感染者を検診によって掘り起こし、治療に結び付けていくことが、今後の医療費削減に大きく寄与し、これまで以上に重要度を増している。スピーディーかつ効果的なウイルス検診の実施と陽性者の受診促進が必要である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、ウイルス性肝硬変・肝がん患者に係る医療費助成制度づくりを早急に検討し進めること。 
二、既に着手しているB型肝炎ウイルスを排除する治療薬等の研究開発を加速すること。
三、潜在する肝炎患者・感染者の早期発見と適切な治療のため、肝炎ウイルス検診を更に促進し、陽性者を受診・治療に結び付けるフォローアップ施策に一層力を入れること。

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