請願

 

第190回国会 請願の内閣処理経過

件名 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願
新件番号 1988 所管省庁 厚生労働省 内閣処理経過受領年月日 H28.11.14
処理要領 一 政府としては、精神保健医療福祉の一環として、てんかんについて施策を講じているところであり、平成十六年九月に策定した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において掲げた「こころのバリアフリー宣言」及び平成二十一年九月に「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」において取りまとめた「精神保健医療福祉の更なる改革に向けて」に基づき、精神障害に関する正しい知識の普及啓発に取り組んでいる。また、良質かつ適切な精神障害者の医療の提供を確保するための指針(平成二十六年厚生労働省告示第六十五号。以下「指針」という。)において、精神保健医療福祉関係者が目指すべき方向性として、てんかんに関する正しい知識や理解の普及啓発を推進する旨を盛り込んだところである。さらに、てんかん診療における地域連携体制モデルの確立を目的として、平成二十七年度から、てんかん地域診療連携体制整備事業を実施し、医療従事者に対する研修及び一般市民に対するセミナー等を行っている。
  このほか、てんかんに関する正しい知識及び理解の普及啓発を推進する観点から、公益社団法人日本てんかん協会と一般社団法人日本てんかん学会が定める「てんかん月間」に対し、政府としても後援しているところである。
  今後、医療従事者以外の関係者に対する普及啓発及びてんかん発作が起きた場合の対応方法の周知等も含め、これらの取組等を通じて、てんかんにかかっている者の支えとなるようなてんかんに関する普及啓発に努めてまいりたい。
二 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)に基づき、平成二十八年四月から、事業主に対し、雇用の分野における障害者に対する差別禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置の実施が義務付けられており、障害者に対する差別等が行われている場合、公共職業安定所等において助言、指導又は勧告を行うことができることとされている。
  また、職場において、てんかんにかかっていることを理由に解雇など雇用管理上の不利益な取扱いが行われることを防止するため、てんかんにかかっていても適切な配慮があれば十分に能力を発揮して働くことができることについて、周知啓発に努めてまいりたい。
  これに加え、公共職業安定所においては、障害者がその能力に適合する職業に就けるよう、個々の障害者の障害特性等に応じた就職支援に努めている。
  さらに、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(平成二十五年法律第四十六号)により、平成三十年四月から、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた精神障害者が雇用義務の対象に加わることとなるため、その円滑な施行に努めてまいりたい。
三 専門医については、現在、医学に関係する各学会が、それぞれの分野の医師の育成を目的として認定を行っており、てんかんについても、日本てんかん学会がてんかん専門医を認定している。非専門医に対する教育及び研修については、小児科医及び精神科医等を対象とした思春期精神保健対策医療従事者専門研修のカリキュラムで、てんかんについても取り上げられている。引き続きこのような機会を活用し、周知を図ってまいりたい。
  平成二十三年度から平成二十五年度までの厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(精神障害分野)「てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究」において、インターネット上に、全国の主なてんかん診療施設のリスト等を掲載し、地域診療と関連諸学会専門医が連携した「てんかん診療ネットワーク」の基盤を形成している。また、指針において、専門的な診療を行うことができる体制を整備し、てんかんの診療ネットワークを整備する旨を盛り込み、平成二十七年度からは、地域におけるてんかん支援体制モデルの確立のため、「てんかん地域診療連携体制整備事業」を実施しており、引き続き、地域におけるてんかんの診療ネットワークの整備を進めてまいりたい。
  合併障害や併発症への対応については、指針において、精神科と他の診療科の連携に係る取組を推進する旨を盛り込んだところであり、引き続き取組を進めてまいりたい。
  障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号。以下「障害者総合支援法」という。)に基づく自立支援給付の支給決定及び支給認定の申請時に添付することとされている診断書の取得のための費用を公費負担とすることについては、新たな財源の確保が必要となること等を踏まえる必要がある。
  災害時における医薬品の供給体制については、地域の卸売業者を介した供給に加え、必要に応じて国及び業界団体が連携して広域支援を実施する体制を整備するとともに、都道府県における医薬品備 蓄により供給体制を整備している。また、東日本大震災においては、ガソリン不足により搬送に支障が生じたことを踏まえ、各都道府県に対して災害時に医薬品搬送車両に対する優先給油が確保されるよう対策を講じる旨の要請を行うこと等により、供給体制の強化を図ったところである。こうした取組により、抗てんかん薬も含め、災害時における医薬品の安定的な供給体制の確立を図ってまいりたい。
  精神・神経疾患研究開発事業については、国が交付する運営費交付金を充てて実施するものであり、その研究課題については、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターに置く精神・神経疾患研究開発費評価委員会の意見を聴取した上で決定されることとなるが、今後も適切に研究を推進していくため、引き続き予算の確保に努めてまいりたい。
  難治性てんかんの新薬開発に関しては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の難治性疾患実用化研究事業の「難治性てんかんを呈する希少疾患群の遺伝要因と分子病態の解明」及び「難治性てんかん病態におけるグリア機能の解明と診療ガイドライン作成の研究」において、病態解明及び新薬開発を含む治療法開発を目指す研究が実施されている。
  難治性てんかんに係る医療提供体制については、平成二十七年度から、地域におけるてんかん支援体制モデルの確立のため、てんかん地域診療連携体制整備事業を実施している。当該事業の対象には難治性てんかんも含まれており、今後、本事業の成果を踏まえ、地域におけるてんかんの診療体制の整備を進めてまいりたい。
  難治性てんかんに係る医療費の自己負担額については、患者の負担が過重なものとならないよう、医療保険制度の高額療養費制度において、所得に応じて月単位の上限を設けている。また、障害者総合支援法に基づき、通院による治療を継続的に必要とする程度の状態のてんかんにかかっている者であって支給認定を受けたものに対して、通院に係る医療費の自己負担額の一部を公費で助成するとともに、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に基づき、難治性てんかんと併存する疾病が対象疾病とされている場合、その対象疾病にかかっている者であって支給認定を受けたものに対しても、医療費の自己負担額の一部を公費で助成している。
四 地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律(平成二十四年法律第五十一号。以下「改正法」という。)により、障害者権利条約の趣旨を反映した障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)を踏まえた基本理念を障害者総合支援法に盛り込み、重度訪問介護の対象者について、重度の肢体不自由者に加え、重度の知的障害者及び精神障害者をその対象者とするとともに、ケアホーム及びグループホームの一元化等の見直しによる地域における住まいの選択肢の更なる拡大を図り、平成二十六年四月から施行している。
  また、改正法により、平成二十六年四月から、「障害程度区分」を「障害支援区分」に改め、「障害支援区分」の認定については、てんかんにかかっている者を含む精神障害者の特性に応じて適切に行われるよう、認定業務に携わる者の資質の向上を図る取組等を行い、てんかんにかかっている者を含む障害者の特性に応じたサービス提供を推進している。
  さらに、障害者の地域生活に対する更なる支援の充実や障害者のニーズに対するよりきめ細かな対応を実現していくため、障害福祉サービスの拡充等を内容とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律(平成二十八年法律第六十五号)の施行に向けて、引き続き取り組んでまいりたい。
  てんかんを含む精神医療及び精神保健福祉に関する相談に対応する精神保健福祉センター等については、運営要綱等により、相談指導を行う際に、必要に応じて関係機関の協力を求めることとしており、引き続き、てんかんにかかっている者を含む障害者が地域社会で安心して暮らすことができる体制の整備に取り組んでまいりたい。

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