請願

 

第186回国会 請願の要旨

新件番号 2114 件名 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願
要旨  てんかんは脳の病気で、全国に百万人の患者がいる。医療の進歩、早期診断・早期治療によりおよそ七〇%の人が発作に悩まされない生活を送ることができるようになったが、現代の医療では発作を止めることのできない人、いまだに適切な医療を受けられない患者がいる。また、発作の止まっている人でさえ、不安・鬱や行動障害などの併発症、医療費や生活の問題、学校や仕事の問題など様々な悩みを抱えていることが多く、その上、根強く残っている世間の誤解や無理解に苦しめられる場合も少なくない。てんかんのある人は、修学、就職、結婚など人生の多くの場面でてんかんが障壁となる。さらに、二〇一一年に発生した東日本大震災は、てんかんのある人が日常生活を送る上での不安や課題を浮き彫りにした。これまでの制度は、必ずしもてんかんの障害の特徴に合ったものではなく利用しやすいものではなかった。現在、政府は障害者を支援するための新しい制度を推進しているが、新たな制度で安全で安心できる生活が国民に等しく保障されることを求める。特に、二年以上発作が止まっていないなどの理由で自動車運転免許を所持できない病状の人は、そのまま職を失う、又は職に就けない状況に陥るため、ハローワークが事業主をしっかり指導できるよう、障害者雇用に限らず就業の場全般における制度の充実を求める。さらに、二〇〇八年の第百六十九回国会で提出した請願五項目全てが採択されたにもかかわらず、その後施策の実現が遅々として進んでいない。
 ついては、てんかんのある人とその家族が参加しやすい社会の実現のため、次の措置を採られたい。

一、啓発に関しては、てんかんについて、国民の理解を深めるための広報を行うこと。
   てんかんのある人とその家族が、社会生活の中で接する機会の多い人々、特に、福祉施設、行政担当、交通機関や病院の職員、教職員、警察官、救急隊、消防官などに対して、てんかんの正しい知識と観察・介助法を、組織的・計画的に周知徹底をすること。また、てんかんのあることを知ってもらうための、当事者が所持する緊急カードなどの活用と周知を、全国に広めること。
二、福祉に関しては、てんかんのある人が地域で安心して生活ができ、日中活動ができる支援体制を整備すること。
   「障害者権利条約」の精神を重視し、総合福祉部会の骨格提言、違憲訴訟の基本合意文書に沿った障害者総合支援法の改正を行うとともに、「障害支援区分」の在り方については、てんかんの障害特性を反映できるような制度設計をし、必要なサービスが受けられるようにすること。
三、労働に関しては、働く場の機会拡充を図ること。
   障害者法定雇用率の完全適用(雇用の義務化)を早期実施し、てんかんのある人の雇用促進を図ること。また、てんかん発作がある場合は、差別が生じないように十分に配慮・検討の上で、適切な職場や職種で就労できるよう、国や都道府県・市区の行政機関が、事業所への啓発・指導を行えるようにすること。さらに、てんかんにより自動車運転が困難な人のために、運転免許を必要としない職種へ配置するよう、行政機関が事業主を指導できるようにすること。なお、継続勤務が難しく退職せざるを得ない場合には、優先的な仕事のあっせんを全国のハローワークができるようにすること。
四、交通に関しては、
 1 障害者手帳にも交通運賃減額制度を適用すること。
    知的障害者の「療育手帳」、身体障害者の「身体障害者手帳」では、鉄道、バス、航空機、船舶、高速道路料金など、交通運賃の減額制度が適用され、自治体によっては、通院交通費の補助制度が実施されている。さらに、家族の送迎、同伴者(介助者)に対する交通運賃の減額制度や、タクシーチケットの配布なども実施されている。そこで、てんかんのある人が利用できる「精神保健福祉手帳(障害者手帳)」も、これらの交通運賃減額制度や通院交通費補助制度の対象にするとともに、自治体間の地域格差が生じないように国が指導をすること。
 2 交通安全に向けた先端技術の提供を推進すること。
    高齢者、病気や障害のある人、そしてあらゆる人の移動に関するバリアフリー社会を実現すること。国が道路、交通、地域づくりの最先端の技術を一元化し、てんかんのある人も安心して運転できる自動車の開発や交通環境づくりと、新しい地域社会の実現を推進すること。
五、医療に関しては、
 1 てんかん医療ネットワークを充実すること。
    てんかんは、日常診療と専門医療の連携が重要な疾患である。そのため、専門医の数を増やすとともに、非専門医に対するてんかん診療の教育、研修の機会を設けること。その上で、地域におけるてんかん診療ネットワーク体制を構築し、診療報酬制度(保険制度)の対象とすることで、て んかん医療の地域格差を改善すること。また、合併障害や併発症に対応するための診察時間が確保できるように、制度の充実を図ること。そして、各種制度利用のための診断書料に公費負担と相談機関の拡充も必要である。さらに、てんかんの高度な医療、研究を実践するてんかんセンターの充実を国として推進すること。
 2 災害時に抗てんかん薬が不足しないようにすること。
    東日本大震災のとき、被災地で抗てんかん薬が不足する危機があった。緊急医薬品の指定がされない、災害時持ち出し医薬品一覧に記載がないなどから、被災地で至急に必要とされた搬送が滞った。災害時に、抗てんかん薬の供給が滞ることのないシステムを構築すること。

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