請願

 

第169回国会 請願の内閣処理経過

件名 北方領土返還促進に関する請願
新件番号 2296 所管省庁 外務省 内閣処理経過受領年月日 H21.2.4
処理要領 一 北方四島の返還要求について、改めて国会において決議することについては、立法府の判断にゆだねられるべきものであると考える。
二 北方領土問題に関するロシア政府との交渉に当たっての政府の取組については、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の北方四島は、歴史的にも法的にも我が国固有の領土であり、その返還は我が国国民の総意であるにもかかわらず、戦後六十年以上を経た今日もなお、これら諸島がロシアにより不法占拠されていることは誠に遺憾である。
 平成十五年一月の小泉純一郎内閣総理大臣(当時)の訪露の際の日露首脳会談において、両首脳は、「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより平和条約を可能な限り早期に締結し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきであるとの決意」を確認し、平和条約交渉に資するものとして「日露行動計画」を採択した。同行動計画の中では、一九五六年日ソ共同宣言、一九九三年東京宣言、二〇〇一年イルクーツク声明及びその他の諸合意が今後の交渉の基礎となるものとして挙げられており、交渉を加速することとされている。
 近年、「日露行動計画」に基づき、幅広い分野で我が国とロシア連邦との間の関係が順調に発展してきているところであるが、今後は、北方領土問題の解決に向けて、同行動計画の重要な柱である平和条約交渉についても進展を図っていく必要があり、平成十九年六月のハイリゲンダム・サミットの際の日露首脳会談において、安倍晋三内閣総理大臣(当時)よりこの点を強く申し入れた。その後の首脳レベルを含む様々なやり取りを経て、平成二十年四月に行われた福田康夫内閣総理大臣のロシア連邦訪問の際の日露首脳会談において、両国関係を高い次元に引き上げるためにも、交渉の進展を図る必要性があることで一致するとともに、これまでの諸合意及び諸文書に基づき、双方が受入れ可能な解決策を見いだすべく首脳レベルを含めて今後とも話し合っていくこと、また、そのために、両首脳が改めて指示を出すことで一致した。
 平成二十年七月の北海道洞爺湖サミットの際に行われた日露首脳会談においては、福田総理より、両国関係を高い次元に引き上げるためには、唯一の政治懸案である領土問題を解決し、国民のわだかまりを取り除く必要がある旨述べたのに対し、メドヴェージェフ・ロシア連邦大統領より、領土問題が解決されれば、両国関係が最高水準に引き上げられることに疑いがなく、現状の両国関係を抜本的に変えられると思う旨述べ、その上で、現段階での両首脳の間の共通の認識として、次の諸点で一致した。
 第一に、アジア太平洋地域において、日露両国が協力と連携を深めていくことは、両国の戦略的な利益に合致するのみならず、この地域の安定と繁栄に貢献するためにも必要であること。
 第二に、戦略的に重要な隣国である両国間に平和条約が存在しないことは、幅広い分野における日露関係の進展にとり支障になっていること。日露双方とも両国関係を完全に正常化するため、この問題を棚上げすることなく、できるだけ早期に解決することを強く望んでいること。
 第三に、平和条約については、日露間の領土問題を最終的に解決するものでなければならないこと。この問題の解決は、日露両国の利益に合致し、双方にとって受入れ可能なものでなければならないこと。
 第四に、日露双方は、以上の共通認識に従い、これまでに達成された諸合意及び諸文書に基づき、平和条約につき、首脳レベルを含む交渉を誠実に行っていく意向であること。そして、この問題を最終的に解決するために前進しようとする決意が双方において存在すること。
 政府としては、以上の両首脳間の共通の認識を踏まえ、国民の広範な支持を得ながら、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、この問題の最終的解決に向けて具体的な進展が得られるよう、引き続き、強い意思をもってロシア連邦との間で交渉を進めていく考えである。
 また、北方領土問題の解決のための環境整備として、四島交流、自由訪問、北方墓参、北方四島住民支援、北方四島周辺水域操業枠組協定に基づく日本漁船の操業といった枠組みは、重要な意義を有している。我が国国民と北方四島に居住するロシア連邦国民との間の四島交流においては、平成十九年までに延べ一万四千六百九十二人が相互に交流しており、我が国国民と北方四島住民との間の相互理解を促進する上で大きな成果をあげてきている。
 これらの枠組みによる事業に加えて、平成十九年二月のフラトコフ・ロシア連邦首相(当時)の訪日の際に、「日本国及びロシア連邦の隣接地域における地震、火山噴火及び津波の予測、警戒及び対処の分野に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協力プ ログラム」が作成され、現在、同プログラムに基づいて我が国の地震・火山学専門家による北方四島訪問等を始めとした協力が開始されている。
 さらに、平成十九年五月の麻生太郎外務大臣(当時)のロシア連邦訪問の際に北方領土問題の解決のための環境整備にも資するものとして我が方から提案した両国の隣接地域における生態系の保全及び持続可能な利用に関する協力については、平成二十年五月及び六月に行われた両国の専門家による会合の議論を経て、具体的な協力の方向性を定めた政府間の協力プログラムの内容がおおむねまとまり、署名に向けた作業を進めている。今後、同プログラムに基づいて具体的な協力が進むことが期待される。
 政府としては、高齢化する元島民の負担軽減の観点からも、安定的な四島への移動手段の確保や手続の簡素化等、四島交流、自由訪問及び北方墓参の枠組みで行われている事業の改善に引き続き努めるとともに、これらの事業の拡充に努めてまいりたい。

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