請願

 

第169回国会 請願の内閣処理経過

件名 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願
新件番号 671 所管省庁 厚生労働省 内閣処理経過受領年月日 H21.2.4
処理要領 一 腎臓病の原因には不明なものもあり、原因究明の取組が必要であるが、他方、近年、糖尿病性腎症など、生活習慣に起因する腎疾患が明らかに増加傾向にあり、その予防に当たっては、食生活や運動習慣の改善を始めとする生活習慣病対策が重要である。
健康保険法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第八十三号)及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第八十四号)においては、予防の重視を一つの柱に位置付け、生活習慣病対策を推進することとしており、具体的には、保険者の役割を明確化し、効果的、効率的な健康診査や保健指導を義務付けることや、適度な運動、健全な食生活及び禁煙を柱とする生活習慣の改善に向けた国民運動を展開すること等により、糖尿病等の生活習慣病の予防に向けた取組を進めることとしている。また、平成十九年度には、腎疾患対策検討会において、普及啓発等を柱とした「今後の腎疾患対策のあり方について」が取りまとめられたところであり、これに基づいて、腎疾患の発症と進展予防に向けた総合的な対策を進めてまいりたい。
二 腎臓病に係る研究については、厚生労働科学研究費補助金による難治性疾患克服研究事業等において、進行性腎障害に関する調査研究等の研究を推進しており、腎臓病の原因究明に係る研究についても同事業等を通じて推進してまいりたい。
三 腎疾患による腎臓の機能の障害を有する者を含め、介護・支援を必要とする障害者に対しては、障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)において、障害の種別や年齢にかかわりなく、市町村において一元的にサービス提供を行う仕組みとしている。
なお、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)においても、六十五歳以上の要介護状態又は要支援状態にある者及び四十歳以上六十五歳未満の加齢に起因する疾病により要介護状態又は要支援状態にある者に対し、必要な介護サービスを提供している。
今後とも、これらの施策を進めることにより、介護サービスの適切な提供が図られるよう努めてまいりたい。
四 通院介護も含めた在宅の障害者に対する障害福祉サービスについては、障害者自立支援法に基づき、整備が計画的に進められているところである。
また、同法に基づき、市町村等の支給認定を受けた透析患者に対しては、医療費に係る自己負担部分について、自立支援医療費の公費負担がなされているところである。
今後とも、質の高い福祉サービス及び医療が提供されるよう努めてまいりたい。
五 透析医療における院内感染対策については、厚生労働省において、「透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」を作成し、透析医療における院内感染の予防対策を行ってきたところである。また、平成十八年度医療制度改革により、病院、診療所及び助産所の管理者に対して医療の安全を確保するための措置の義務付け、院内感染対策や医薬品・医療機器に係る安全管理体制の確保を含む安全管理体制の充実・強化を図ったところである。
六 産科医の確保については、平成十九年五月末に政府・与党で取りまとめた「緊急医師確保対策について」に基づき、産科に多い女性医師の就労を支援するための女性医師バンクの相談体制の強化や病院内保育所の整備など医師確保対策の推進のための予算を大幅に増額し、短期的な対策から中長期的な対策まで各般の対策を着実に実行するとともに、都道府県における奨学金の設定等を条件として、医学部定員を平成二十年度において百六十八名増やしたところである。また、平成二十年六月に閣議決定された「経済財政改革の基本方針二〇〇八」において、これまでの閣議決定に代わり、医学部定員を早急に過去最大程度まで増員することを決定したところである。
また、平成二十年度の診療報酬改定においては、産科や小児科をはじめとする病院勤務医の負担軽減の取組を推進するため、約千五百億円をこれらの取組に充て、重点的な評価を行うとともに、平成二十年度予算においては、医師確保対策の推進のための予算を百六十一億円と大幅に増額し、産科、小児科をはじめとする病院勤務医の働きやすい職場環境の整備などの対策を強化したところである。
さらに、平成二十年六月に厚生労働省において取りまとめた「安心と希望の医療確保ビジョン」及び同年七月に政府として策定した「五つの安心プラン」において、地域でお産を支えている産科医への財政支援、産科、小児科等の女性医師の離職防止、復職支援の充実等、実効性のある各般の対策を実現・実行することにより、今後とも地域医療とその担い手の確保が図られるよう取り組んでまいりたい。
 看護師等の確保については、これまでも看護師等の人材確保の促進に関する法律(平成 四年法律第八十六号)に基づき、看護師等の資質の向上、養成力の確保、再就業の促進、離職の防止等総合的な対策を推進してきており、看護師等の就業者数は毎年着実に増加しているところである。平成二十年度においても、看護師等養成所及び病院内保育施設の運営、国が都道府県に委託している看護師等の確保が困難な医療機関を対象とする人材確保に向けた総合的な支援事業等に対して国庫補助を行っており、今後とも、看護師等の確保に努めてまいりたい。また、厚生労働大臣の下に「看護の質の向上と確保に関する検討会」を立ち上げ、現下の具体的課題を把握するとともに、今後の対応策の基本的な方向性について、検討を進めているところである。
 福祉・介護サービス分野においては、社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針(平成十九年厚生労働省告示第二百八十九号)に基づき、労働環境の整備の推進等について、経営者、関係団体及び地方公共団体等と連携して取り組み、福祉・介護サービスの仕事を多くの方々に選択していただくとともに、職場に定着していただけるよう努めてまいりたい。
七 臓器移植の普及・啓発については、地方公共団体や社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)を始めとする関係機関等との連携の下、臓器提供意思表示カードの普及、政府広報等を活用した普及啓発等に取り組んでいるところである。また、平成十九年一月から政府管掌健康保険(平成二十年十月から全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)に移行)の被保険者証に臓器提供意思表示欄を順次導入したほか、同年三月にはネットワークにおいてインターネットを活用した臓器提供意思登録システムの運用を開始したところである。
 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)において、地方公共団体は、移植医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない旨規定されていることを受け、各都道府県においては、都道府県臓器移植連絡調整者(以下「都道府県コーディネーター」という。)を、腎バンク、病院等の臓器移植対策の推進に適すると認める場所に設置しているところである。このため、都道府県コーディネーターの増員及び個々のコーディネーターの就業条件等その身分に係る取扱いについては、都道府県において決定されるものと考えている。また、院内コーディネーターの設置については、地域の実情に応じた、都道府県や医療機関における移植医療の推進のための取組の一つと考えており、今後とも、都道府県と連携を図りながら、移植医療の推進に向けた体制整備に努めてまいりたい。
なお、政府としては、都道府県コーディネーターについては、移植医療を含めた医学的知識や法制度等について一定以上の理解や知識が求められるものと認識しており、このため、その質を担保する観点から、ネットワークが行う試験に合格した医療有資格者等であること等その採用に当たって求められる基準を示すとともに、ネットワークが行う研修に対して国庫補助を行うほか、都道府県コーディネーターがネットワークの指揮命令下であっせん業務を行う際の活動費について国庫補助を行っているところである。また、平成十九年度からは、ネットワークにおいて行う院内コーディネーターの技術研修会に係る費用について、国庫補助を行うこととしたところである。
八 災害時の透析医療の確保については、厚生労働省防災業務計画において、被災都道府県は、社団法人日本透析医会が提供する被災地等における人工透析患者の受療状況や透析医療機関の稼働状況に係る情報を透析患者や患者団体に提供するほか、透析医療機関における水・医薬品等の確保等の必要な措置を講ずることとされている。また、患者等の搬送についても、都道府県は、平常時から、災害時における複数の搬送手段の確保に努めるほか、厚生労働省が関係省庁と必要な調整を行うこととなっている。  
政府としては、都道府県及び社団法人日本透析医会に対して、こうした人工透析提供体制の確保を図るよう周知しているところであり、今後とも、大規模な災害発生時にも対処できる人工透析提供体制の確立に向けて、都道府県及び社団法人日本透析医会と連携して、適切に対応してまいりたい。

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