請願

 

第166回国会 請願の要旨

新件番号 962 件名 裁判員制度充実のための速記録の作成に関する請願
要旨  裁判員制度には迅速で正確な速記録が必要である。二○○九(平成二一)年五月までに、裁判員制度がスタートする。捜査機関作成の調書偏重だった刑事裁判に対する反省もあって生まれた裁判員制度は、公判(法廷での審理)を重視し、公訴事実について、証人尋問や被告人質問で立証することが求められている。したがって、法廷でのやり取りは、これまで以上に具体的になり、視覚的に理解の助けとなるスクリーンの活用など、検察官、弁護人には、分かりやすい公判の運営に工夫が求められ、それは、裁判官においても同様である。公判でやり取りされる情報も相当な量になることから、だれが、どう記録するのかが問われている。裁判官・裁判員は公判を見聞きして、心証(事実認定に関する内心的判断)を形成する。評議・評決は個々人の記憶に基づいて議論・決定されるが、記憶違い、聞き違いや誤解を避け、聞き漏らしを補うためには、正確で客観的な速記録が迅速に提供されることが重要であり、評議に入る段階で裁判員に提出されなければならない。録音反訳では間に合わないし、裁判に時間が掛かることになる。裁判員制度の機能を十分に発揮させるための基盤として、裁判員制度が対象とするすべての刑事事件において、裁判所速記官の立会いが保障されるよう、裁判所速記官の人的・物的整備を行う必要がある。その他のすべての裁判についても、迅速で正確な速記録を提供するため、電子速記システムを基本とした新たな裁判所速記官制度を早期に確立することが大切である。裁判員制度スタートを照準に考えると、今すぐにでも速記官の養成を再開することが必要である。配置については、集中審理、連日開廷が可能となる体制を整備し、速記録の即日交付が可能となるようにすべきである。さらに、少年の重大事件や家庭裁判所移管後の人事訴訟に対応するため、家庭裁判所においても速記録は求められている。電子速記システムの導入により、新たな司法サービスが可能になる。同システムの大きな特徴である法廷証言のリアルタイムでの文字情報化により、聴覚障害者や高齢者への字幕表示サービスや、当事者への証言録の迅速なデータ配信などが可能となる。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、裁判所速記官の養成を再開すること。
二、裁判員制度においての記録は、速記録により作成し、裁判員制度の充実を図ること。

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