防衛大臣田中直紀君問責決議(平成24年4月20日):本会議決議:参議院
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防衛大臣田中直紀君問責決議

平成24年4月20日

参議院本会議

 本院は、防衛大臣田中直紀君を問責する。

  右決議する。

     理由

北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げと称して、長距離弾道ミサイルの発射を強行したが、発射後の対応や情報伝達の混乱は、内閣に危機管理能力が欠如していることを露呈し、国民に大きな不安を与えており、自衛隊の隊務を統括する田中防衛大臣もその責任を免れない。

また、田中防衛大臣は委員会審議において、秘書官のサポートなしにはほとんどまともに答弁できないなど、安全保障政策に関して基礎的知識が全くないことは周知の事実となっている。

鳩山元総理の普天間飛行場代替施設に関する「最低でも県外」発言、菅内閣時の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件への対応、最近では鳩山民主党外交担当最高顧問がイランを訪問し、国際原子力機関(IAEA)の対応を「二重基準」と批判したと伝えられるなど、民主党政権の安全保障・外交音痴ぶりは枚挙にいとまがないが、我が国を取り巻く安全保障環境が緊張を増す現在、一川前防衛大臣に続いて、防衛大臣が素人であることは到底許されない。

以下、田中防衛大臣を問責する理由を列挙する。

理由の第一は、「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルへの対処である。

四月十三日、北朝鮮は長距離弾道ミサイル発射を強行した。結果は失敗に終わったが、政府の初動対応の遅れ、情報伝達の混乱は目を覆うばかりである。

日本政府がミサイル発射を発表したのは、米韓の発射確認から大きく遅れ、打ち上げから約四十五分後の田中防衛大臣の会見であった。この間、エムネットで地方公共団体へ「発射を確認していない」と発信し、初動対応に混乱が見られた。この「混乱の四十分」は一分一秒を争う弾道ミサイル対処において決して看過することができない失態である。

発射情報は本来官邸が一元化して集約し発表すべきであるにもかかわらず、田中防衛大臣が独断専行して会見を行い、その後も防衛省が米軍の早期警戒衛星(SEW)発射情報を首相官邸に正式に伝えた時間を修正するなど、官邸と防衛省の連携が取れておらず、危機管理の体を全くなしていない。

発射前においても、三月二十七日の外交防衛委員会での質疑をはじめとして、田中防衛大臣は弾道ミサイル等に対する破壊措置に関し、自衛隊法第八十二条の三第三項から第一項へ移行する場合や迎撃判断をする者を正確に説明できず、さらには自治体の要請があればPAC3が配備できるかのように説明するなど、誤った答弁を繰り返した。また、田中防衛大臣は三月二十一日の記者会見で、航空自衛隊の地対空誘導弾ペトリオット(PAC3)を海上自衛隊の哨戒機P3Cと混同するなど政治家として最低限備わっているべき基本的常識すら知らないのではないかと疑わざるを得ない。

沖縄県の多良間島にPAC3を配備しない理由について、田中防衛大臣は島の人口規模に言及した。これは住民が少ないから配備しないと受け取られかねない発言であり、かつ南西諸島の防衛力強化をうたう現在の中期防衛力整備計画に反している。日本の防衛政策を理解していない発言だと断じざるを得ない。

四月三日の参議院予算委員会では、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」への防衛体制について「今の態勢では、私の認識では全国土について守りきれない」と答弁した。弾道ミサイルから国民を守りきる、というメッセージを国内外に発すべき防衛大臣の発言として、俄かには信じがたい発言である。弾道ミサイル発射に関し、国民の不安を煽り、国際社会の信用を失墜させた田中防衛大臣の責任は重大である。

第二に、防衛大臣としての自覚、緊張感の欠如である。

田中防衛大臣からは、国会審議に対する緊張感や、説明責任を果たそうという誠実さが全く感じられない。

一月三十一日の参議院予算委員会開会中に無断で中座して、国会内食堂でコーヒーを飲んで休憩し「行方不明」の大臣を捜索する間、委員会審議を中断させた。

さらに、三月二十八日の参議院外交防衛委員会では、自民党の宇都隆史委員の専守防衛に関する質問に対し、PKOの答弁ペーパーを取り違えて読んでいる。

三月十四日の予算委員会では、ゴラン高原及び南スーダンPKOの、いわゆる「緊急撤収計画」を見ていないと答弁した。同委員会で総理が田中防衛大臣に撤収計画を読み、判断することを強く求めたにもかかわらず、同月二十六日の同委員会でも撤収計画の「表紙しか見ていない」との答弁を堂々と行った。総理が、南スーダンへの自衛隊派遣の隊旗授与式で、「隊員全員が安心して任務に当たられるよう政府として全面的に後押しを誓う」と訓示したのに反し、田中防衛大臣がその職責をまったく自覚してないのは明白である。

またゴラン高原に展開するPKO部隊がヨルダンに派遣されているとの事実とは異なった答弁をし、さらにはPKO業務の一時休止、中断、撤収の手続きについての答弁も混乱し、何度も審議が中断した。このような防衛大臣としての自覚、緊張感にかける大臣のもとでは、日本国民を守ることはできず、文民統制も図られないと言わざるを得ない。

第三に、防衛大臣としての知識、説明能力の欠如である。

田中防衛大臣は、国会答弁をはじめ、記者会見など様々な場で、防衛知識の欠如を露呈している。

特に、国会答弁の迷走ぶりは凄まじく、参議院の予算委員会、外交防衛委員会では、弾道ミサイル対処、PKO、専守防衛など、防衛大臣の言い間違え、事実誤認によって速記がたびたび中断している。予算委員会においては速記の中断は四十回近くにのぼる。

衆議院予算委員会では「自衛隊が合憲とされる根拠は何か」との質問に、「私自身は理解していない」と従来の政府見解すら説明できなかった。

また、普天間飛行場移設問題についても、一月三十一日の参議院予算委員会での「沖縄海兵隊の抑止力としての意味、なぜ普天間基地が沖縄でなければならないのか」との質問に、また三月十四日の同委員会では、「普天間飛行場の移設先がなぜ辺野古なのか」との質問に対し、過去の検討の経緯を説明できず、審議が中断するなどしている。

さらには、NHKの討論番組で南スーダンPKOに関し武器使用基準の緩和について問われ、「PKOで使った空港や橋、道路などを建設する道具は、国に置いてこられるように検討している」などと、武器輸出三原則の緩和と取り違えた発言をし、司会者に四度問われても三原則の緩和内容を繰り返した。

普天間飛行場移設事業について、就任直後、テレビの討論番組で「着工を年内にできるかどうかは、当面の手順になっている」と発言、また埋め立て許可申請を六月までにやるのかと問われ、即座に認めるなどし、沖縄の不信を招いている。米国政府、埋め立て許可権限を持つ沖縄県と慎重な交渉が要求される立場である防衛大臣の発言として、極めて不適切である。

その他、二月六日の参議院予算委員会では、在日米軍再編のロードマップ(工程表)見直しについての質問に対し、田中大臣は協議に関与しておらず、一川前防衛大臣から引継ぎもなかったとの趣旨の発言をした。在日米軍の施設及び区域を所管する防衛大臣として、俄かに信じがたい発言である。

以上述べたように、弾道ミサイル対処の不手際、防衛大臣としての自覚、緊張感、知識、説明能力の欠如と、田中防衛大臣には防衛大臣としての資質が著しく欠けている。このような大臣に、他国の防衛責任者と国益をかけた丁々発止の交渉などできるわけもなく、田中防衛大臣が自らの職に固執することで、日本の国益が損なわれているのは明らかである。

なお、野田総理は内閣人事について、「まさに考えられるベストの布陣」「適材適所」と述べているが、これほど防衛知識が欠如し、防衛大臣としての資質に欠ける人物を防衛大臣に選んだ野田総理の見識を疑わざるを得ないことを付言する。

以上が本決議案を提出する理由である

(愛知治郎君外七名発議)