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参議院のあらまし

二院制と参議院の在り方

参議院憲法調査会 二院制と参議院の在り方に関する小委員会調査報告書

憲法調査会における検討

平成17年3月9日

一 審議経過

 二院制と参議院の在り方については、従前より参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきというのが各会派ともおおむね共通した認識であった。憲法調査会では、これまで調査は本調査会で行うことを基本としてきたが、このテーマに関しては、弾力的かつ機動的に運営できる小委員会方式により集中的に行うことが望ましいとの判断から、第159回国会の平成16年2月18日の憲法調査会で「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」を設置することが決定された。
 同国会において本小委員会は、3月12日「二院制と参議院の在り方をめぐる論点」(参考人 国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室主任・北海道大学名誉教授 高見勝利氏)、4月14日「参議院改革」(参考人 日本大学法学部教授 岩井奉信氏、京都大学大学院法学研究科教授 大石眞氏及び東京大学大学院法学政治学研究科教授 蒲島郁夫氏)及び5月19日「選挙制度の在り方」(参考人 政策研究大学院大学教授 飯尾潤氏、駒澤大学法学部教授 大山礼子氏、元日本経済新聞社論説顧問 金指正雄氏)のテーマで、それぞれ参考人質疑をした後、小委員間で意見交換を行い、5月26日、保坂三蔵小委員長がその経過の概要を憲法調査会において報告した。
 第20回参議院議員通常選挙(平成16年7月11日)後、第161回国会の平成16年10月15日に再び「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」が設置され、11月5日「選挙制度を中心とした参議院の在り方」(参考人 慶應義塾大学法学部教授 小林良彰氏)のテーマで、参考人質疑及び小委員間での意見交換を、11月19日「参議院と衆議院の役割分担」のテーマで、小委員間で意見交換を行い、12月1日の憲法調査会において、舛添要一小委員長がそれまでの議論を論点整理し報告した。
 今第162回国会においては、平成17年2月4日及び2月16日に舛添小委員長報告(論点整理)で示された論点に基づいて小委員間での意見交換を行った。
 これら7回にわたる小委員会での論議を通し、会派を超えて二院制と参議院の在り方についての理解が深まったと確信する。その内容については、各会派おおむね共通の認識が得られたものと、現段階では意見が分かれているため、さらに今後検討が必要なものがあるので、これらを整理し、今般、小委員会報告として取りまとめ報告する。

二 主な論点及びこれに関する各党・各小委員等の意見

 21世紀に相応しい、公正で活力ある社会を実現するためには、統治システム及びその相互関係の在り方をより進化・洗練させていく必要があるが、その具体化に当たって鍵となるのが、民主主義と法の支配のバランスであり、政治全体が事前調整型から事後チェック型になろうとする中でのチェック機能であり、また、複雑・多様化する国民の価値観を如何に反映するか等の諸点である。
 「二院制及び参議院の在り方」を考えるに当たって、法の支配の実現は、立法府においては参議院がその実現の一翼を担うべき、参議院がチェック機能を担うべき、また、一院ではできない多様な意見を反映すべきなどの意見が出された。
 今日の我が国において、国民主権の実効性を高め、基本的人権の保障を進展させ、地方分権と地方の自立を推進していくためには、参議院がこのような機能を発揮することが極めて重要であると考えられる。
 本小委員会においては、このような認識を踏まえ、多岐な方面にわたって活発な議論が交わされた。そこで、舛添要一小委員長の下で、その内容にしたがってこれまでの議論を論点ごとに整理した。

1 一院制・二院制の長所・短所、是非

 一院制及び二院制それぞれの長所・短所は、いわば表裏の関係にあり、一院制を支持する意見は効率的な意思決定や円滑な政権交代、また両院の役割・機能分担や調整の困難さ等の点を挙げる一方、二院制を支持する意見は慎重審議や多様な民意の反映等の点を理由とすることが多い。小委員会においては、最初に二院制ありきということではなく国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、熱心な議論を行った。
 是非と理由 本小委員会においては、会派を超えて二院制を堅持することで一致した。
 その理由として、次のような理由が挙げられた。

  • 国民の総意を慎重審議を通じ正確に反映し、また、一院の専断を抑制し、衆議院の審議を補完し、世論の帰着について判断を的確にすることを目的とする二院制の趣旨は今日においても適切妥当なもの、
  • 一億人以上の有権者の多様な意思を反映するには二院制が望ましく、実際、世界の主要国も概ね二院制を採用し、世界全体としても二院制を採用する国が増加している。価値観が多様化し社会が複雑な日本においても民主政治を担保するために必要、
  • 国民の意思を完全に代表する第一院の実現は不可能ないし著しく困難、
  • 二院制が有するチェック・アンド・バランスの機能は、正に少数派の権利の確保・保障とも密接な関連がある、
  • 一院制では議会を構成する多数政党がそのまま内閣を構成するため、行政府に対する立法府のチェックが弱まり、行政の肥大化、官僚制の弊害等が増えるおそれがある。二院制は立法府自体の権力分立に一定の役割を果たす、
  • 時々の政治状況の中で解散のある衆議院と、解散がなく3年毎に必ず国民の意見が問われる参議院の二つの院で構成することは、第一院及び民意の暴走にブレーキをかけるという重要な意味がある、
  • 一院で議論して終わりという場合は、よほど冷静な国民でないと、大混乱が起きる可能性が避けられない、
  • 国論を二分する問題で参議院は大きな役割を果たしてきた。衆議院で審議した後、有権者の意識の変化を参議院がまた受け止めるという制度はどうしても必要、
  • 地方自治体議会は一院制で問題はないとの意見があるが、外交や防衛などの議論を内政の延長で行うのは危険、

 ただ、迅速な政策判断が求められる現代にあっては、効率的な意思決定と円滑な政権交代を可能にすることは、二院制を採用する場合でも忘れてはならないとの指摘もなされた。

 参議院の改革が今後も必要であることは各会派とも認識が一致している。この点に関し、両院の権能、選出方法、役割が似ていることが二院制の意義が薄れがちと言われる背景であり、それをそのまま維持すべきではなく、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が出された。
 改革の方向として

  • 抑制均衡・良識・再考の府としての役割をはっきりさせるべき、
  • 立法府では衆議院よりも参議院が立憲主義の実現の一翼を担うべき、
  • 一院ではできない、二院だからこそできるという論理を積み立て、二院間の役割及び機能分担を明らかにする、
  • 今は政策決定にスピード・ダイナミズムが必要。衆議院と重複する議論より、衆議院とは視点を変えた議論と役割分担が求められている、
  • 執行の院である衆議院に対して、決算や行政監視などチェックの院としての機能を強化することが必要、
  • いかに熟慮の院にするかという観点から、衆議院との割り振りやルール作りが必要、

 などの意見が出された。

2 参議院の機能-特に独自性を発揮すべき分野

 参議院が補完・抑制、多様な民意の反映といった本来の役割・機能を果たすためには、衆参両院の構成・権能等の相違を明確にすべきことが多くの小委員から指摘された。そのためには、参議院が独自性を発揮すべき機能は何か、衆議院とどのような役割・機能分担を行うかが大きな課題であることは、一致した意見であった。
 役割・機能分担の重要性 役割や機能の分担を考えるに当たって、参議院は6年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していること、全国単位の比例区と都道府県単位の地方区という選挙制度の下で何十万という支持を得て議員になっていることなどの参議院の特質をいかすことが重要であることは、一致した意見であった。 したがって、参議院の補完機能の充実は無論のこととして、衆議院との違いを明らかにするため、独自性を発揮すべき機能をどのようなものにするかが大きな議論の焦点となった。なお、両院の役割分担は、ある程度は政党内の運営により可能との指摘も同時にあった。

 独自性を発揮すべき具体的分野等 参議院が独自性を発揮すべき具体的分野と果たすべき役割・機能について、次の項目が挙げられた(※は憲法改正に係る事項と考えられるもの)。

 1)長期的、基本的な政策課題
 参議院は、長期的・基本的な政策課題を重点的に行うという点で、意見は一致している。

  • 基本法は参議院中心で審議すべきで先議案件にすることも考慮に入れるべき(※)(60条関係参照)、
  • 世代間にわたる年金・教育等の問題や長期的な視点が要求される条約等の外交案件など、長期的テーマに取り組むべき、
  • 参議院調査会の立法などの成果は多様な意見を反映し、非党派的かつ客観的議論を背景に実現したものであり、これらをさらに強化すべき、
  • 中長期的政策の調査研究の強化が必要、

などの意見が出された。
 2)決算及び会計検査院
 参議院は、チェックの院として、決算審査を重点的に行うべきことは一致した意見である。 そして、決算審査の実効性を高めるため、

  • 決算を報告ではなく議案とする、
  • 参議院の決算議決内容は次の予算を拘束するような効果を持たせたり、決算を通じて予算について介入・管理していくことが必要、
  • 会計財政のチェックのみならず制度や政策の根幹からチェックすべき、
  • 組織的には実動部隊を足下に置くことが重要であり、スタッフの強化が必要、
  • 会計検査院は国会または参議院に帰属させることが望ましい(※)(90条関係)、
  • 会計検査院的機能を参議院に取り込むべき(※)(90条関係)、

などの意見が出された。
 3)行政監視、政策評価
 決算と並んで、行政監視、すなわち国政調査や政策評価をさらに充実させ、チェックに重点を置く監視の院として権威を高めることが重要であることは、一致した意見である。

  • 国民の側に立ち統計を十分につかんだ行政監視をすることが独自性発揮となる、
  • 例えばお手盛りになる可能性が高いODAの調査・評価を参議院がしっかりできることが重要、
  • 参議院に実動部隊として総務省行政評価局を置くことも考えられるし、政策評価院的なものを作る考え方もある、
  • 行政監視の一環としてほとんど野放しになっている政省令や通達のチェックが重要、

などの意見が出された。
 4)国会同意人事案件
 国会同意人事案件について、

  • 米国上院のように、参議院の専権ないし優先事項とすべき、
  • 重要な人事案件について、ヒアリングも含めた審査を参議院が中心になって行うべき、
  • 現在は国会同意人事となっていない大使人事について、国会承認事項とし参議院の専権事項とすることも考えられる、

などの意見が出された。
 5)司法府との関係
 特に司法府に対するチェックを含めた関係を見直したらどうかとの考えが示された。

  • 行政全体が事後チェック型になろうとしている中で、司法との関係をどう考えるかは、チェックの院という意味で参議院にとって非常に重要、
  • 裁判官の訴追は衆議院に、弾劾は参議院の専権事項にする(※)(78条関係)、
  • 現在は国会同意人事となっていない重要な裁判官の任命についても承認事項とし参議院の専権事項とすることも考えられる(※)(79条関係)、

などの意見が出された。
 6)国と地方の調整
 参議院の地域代表性を重視する考え方にかんがみ、参議院が国と地方の関係を扱うこととしたらどうかとの考えが示された。

  • 国と地方の権限調整・財政調整は、国会が担うべきで、政治的対立の中で議論するより、参議院にその仕組みを持つべき、
  • 地方公共団体の長との協議・意見交換の機能を参議院に創設するという考えもあろう、

などの意見が出された。
 7)憲法解釈機能・違憲審査的機能
 最高裁判所が容易には統治行為の憲法審査に踏み込まない状況があり、また内閣法制局の憲法解釈が絶対的地位を占めるのは不健全であるという議論を背景に、憲法解釈機能、そして違憲審査的機能を参議院に持たせたらどうかとの考えが示された。

  • 内閣が内閣としての憲法解釈機能を持つのはよいが、それが憲法解釈のすべてを決めるような現状はおかしく、立法府として憲法解釈機能を持つべき、
  • 国会が自らの憲法解釈について見解を示すべきだが、政治的に使われないために参議院に憲法解釈を持たせてはどうか、
  • さらに違憲審査権的な機能を持たせるという考えもある(※)(81条関係)、

などの意見が出された。

 なお、これらの独自性機能を持つ場合、衆議院と重複する権限・機能については、参議院として逆に弱めるところや行わないところをより明確化させることも必要であって、例えば、予算案や衆議院で全会一致であった法案など特定の議案について、参議院は審査の省略ないし簡略化を行うなどの意見が出される一方、参議院の果たすべき抑制・補完の機能という観点から反対する意見も出され、見解が分かれた。

 会期制
 会期制(※)(52条、53条関係)についても、参議院の役割・機能との関連で議論がなされた。
 会期不継続との関係や衆参同一会期の要否については検討が必要であるが、参議院では通年国会的に、政策機能を抜本的に充実し、チェックの院として立法機能をより広範に果たすべき、また、必要があれば会期にこだわらずチェックの院としての機能を果たすべきとの意見がある一方、会期制を採らないと法案を参議院に送っておけばいつでも成立が図れることになり、衆議院で会期制を採る意味がなくなるとの反対意見もあり、見解が分かれた。

 運営事項
 憲法事項に限らず、運営の改善に関する事項についても多数の指摘がなされた。

  • 議員立法をもっと活発に行うべきで、そのための党内手続も検討すべき、
  • 法律案の逐条的審査や審査の本会議中心主義も検討に値する、
  • 法律の改正について、その改正部分より、その法律の根っこや時代の要請を体しているのかという根本からの議論をすべき、
  • 政治日程とは独立に委員間で具体的制度・政策についての突っ込んだ意見交換を行うようなことも必要、
  • 参議院は必ず修正案や衆議院とは別の附帯決議を出すようにし、修正案提出ルールを整備して意見が修正案に結集するようにすべき、
  • 修正協議に対する弾力化・柔軟化が実質的審議活性化の突破口になる、
  • 参議院で会派を超えて調査会活動で議員立法をより強めていくということが重要、
  • 調査会の数を増やすほか、報告書を議長に提出するだけでなく、行政府にも提出し、回答を出させることなどが有効である、
  • 委員会でより客観的、非党派的議論を行い、フランス、ドイツ等の報告者制を導入するなど、議会の中で与野党が協議をしながらより良いものにしていくことを制度的に位置付けていった方がよい、
  • 公聴会や参考人の多用など参議院独自の審議をしている委員会もあり、そのような形で専門性を出していけば価値がある、
  • 民意の反映として請願の扱いは重要、
  • 調査会の機能強化、決算審査の強化などを果たすには、スタッフの充実が重要な観点、
  • 権限を実効あらしめるものにするには霞ヶ関への政策人材一極集中を是正し国会のスタッフを充実すべき、

などの意見が出された。

3 両院間の調整-意思不一致の場合等の調整の在り方

 議会が二つの院から構成される場合、両院間に意思不一致が生じたときにどのように調整するかは、二院制を採用する場合の極めて重要な問題である。小委員会でも、国会のもっとも根本的ないし基本的なところ、すなわち、法律案・予算案の議決及び条約の承認はあくまで両院の議決をもって国会の意思決定とすることを前提に、現行憲法の調整規定の妥当性や両院協議会制度とその運営の問題点等について議論がなされた。

1)法律案の再議決要件 (※)(59条関係)
 法律案の再議決要件につき、3分の2以上の多数を要求する現行憲法の規定(59条2項)は、極めてハードルが高く、事実上、参議院に拒否権を認めるに等しく、「強すぎる参議院」にしているとの批判に示されるように、両院間の調整の最大の問題は、現行の再議決要件の是非である。
 本小委員会においては、

  • 再議決要件の緩和は、衆議院の権限強化となり、さらには行政権の強化につながるので、参議院の権限を弱くすることには反対、
  • 3分の2を過半数に改めたのでは衆議院への歯止めにならないから、現行の規定を維持すべき、

などの意見のほか、

  • 再議決要件を過半数で足りるとする、
  • 衆議院の再議決権を一定期間行使停止とした上で、再議決要件を過半数で足りるとし、参議院独自の役割を果たしていく、

などの意見も出された。
 2)内閣総理大臣の指名 (※)(67条関係)
 内閣総理大臣の指名について、本小委員会においては、

  • 内閣総理大臣は、現行の規定どおり、国会議員の中から、国会の議決で指名するのが望ましい、
  • 議院内閣制という統治構造を取る限りは、衆議院だけでなく、参議院も同じ位置付けでないとおかしい、

などの意見のほか、

  • 内閣総理大臣の指名は参議院の議論で変わる要素がないことから、審議の意義に疑問があり、67条の改正も視野に入れるべき、
  • 内閣と距離を置く関係で、内閣総理大臣の指名は参議院を省くこともあり得る、また、内閣総理大臣の指名は参議院は行使しないことにするなど、明文改正なしでも運用で実質的に行い得る、

などの意見も出された。
 3)両院協議会
 両院協議会の在り方について、

  • 二院制であれば両院の意思が一致しない場合の調整を効率的に行う仕組みが必要であり、両院協議会の実効的な活用を検討すべき、
  • 両院協議会が機能しないのは残念であり、その使い方を工夫すべき、
  • 両院制の在り方や会期制などのマクロ的問題は両院が合同審査会等で議論しそれぞれ独自性を発揮できる体制を作る必要がある、

などの意見が出された。

4 参議院と政党との関係

 衆議院は政党を軸に活動しているので、参議院が衆議院に対する独自性を発揮しようとする場合は、政党から距離を置かなければならないのではないか、また、緑風会時代が最も参議院らしさを発揮していたのではないかなどの問題提起がなされ、活発な議論が交わされた。

1)政党との関係

  • 政党単位で考えると一度決めた政策が状況に対応できなくなっても縛られてしまうという隘路があり、それをどう乗り越えていくかというところに参議院の意味が出てくる、
  • 参議院は議員一人一人が独立した存在であるという基本的観念を持つことが重要、
  • 政党交付金が間接的に参議院の政党化に資しているのではないか、
  • 緑風会衰退の過程には行政ポストを使った一本釣りもあり、参議院と行政とのかかわりを整理しておくことが必要。参議院議員は行政ポストに就かないという思いで全うしてもよいのではないか、

など、必ずしも政党政治の枠にとらわれないことに参議院の意味があるとの意見がある一方、

  • 政党は議会制民主主義に不可欠な要素であり、議案に対して政党が責任ある態度を表明するのは当然、
  • 二院制の趣旨は、慎重審議であって政党化を防止することではない、

などの意見が出された。
 2)党議拘束

  • 両院にまたがる党議拘束が、参議院の独自性を阻害する部分があるのは事実、
  • 参議院は、政党よりも議員個人が選ばれたそのバックグラウンドの意見を代弁し、個人の意見の受け皿となることで補完機能が果たせるので、国論を二分するような問題は別にして、両院にまたがる政党の拘束を解き放つことから始めるべき、
  • 脱政党、政権そのものから距離を置く観点が重要であり、閣僚を出さない、首相指名権はなくすといったことから、党議拘束をできるだけ弱めていく取組が重要、

などの意見が出された。
 3)政権から距離を置く必要性
 本小委員会では、参議院は政権から距離を置くべきとの意見ではほぼ一致したが、閣僚等を参議院から出すことを自粛する(68条関係)かについては、

  • 参議院議員は行政に入らず、立法府の職務に専念し、国民の側に立って監視することで独自性が出るのではないか、
  • チェックの院である参議院が行政部に閣僚を送るなどのコミットメントは利益相反的な関係になるため、首班指名、閣僚を出す、問責決議の取り扱いなどについては慎重に検討すべき、

などの意見のほか、

  • 議院内閣制である以上、閣僚を出す出さないという議論についても、衆議院と同じ位置付けであるべき、

などの意見が出た。

5 参議院の構成の在り方・選挙制度

 多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは、二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であるという認識で一致した。

[構成]
 参議院の構成の在り方については、

  • 二院制の中で参議院の定数についてどの程度の規模が適正なのかしっかり議論すべき、
  • 6年という長い任期、定数、3年ごとの半数改選、被選挙権30歳は引き続き大事にし、独自の役割を果たしやすい工夫を引き続き行うべき、
  • 選挙を行う以上政党の支配力が強まるのは当然であり、それを弱めるには、再選禁止規定を置き、任期を長くするのが一つの方法、

などの意見が表明された。

[選挙制度]
 1)直接公選制の維持
 直接公選制の維持は、両院の一翼を担う一院という立場から譲れない点であることは一致した意見であった。

  • 国民の直接選挙によらない参議院議員は、行政府へのチェック権限も強力に行使できなくなる、
  • 推薦制などではチェック機能が発揮できないので、直接選挙によって選ばれた議員で構成されるべき、
  • 今日の日本では誰が有識者かは選びにくく、やはり選挙で選ぶべき、

などの意見が出され、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところであった。
 2)選出の在り方
 衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面よりも個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めた。

  • 投票する国民にとって、簡潔明瞭な制度であればあるほどベター、
  • 参議院が衆議院をチェックする、衆参が互いの欠陥を補うという立場なら、似通ってきた衆参の選挙制度を変えていくべき、
  • 同じような選挙で選ばれた二院制は混乱のもとになる、
  • 衆参の在り方と選挙制度が連動して決められてこなかったことを反省すべき、
  • 参議院のカーボンコピー化の原因は政党政治にあり、衆議院と異なる機能を確保するには脱政党化した選挙制度の確立が必要、
  • 直近の参議院選挙で二大政党制が進んだが、複雑で国民も多様な生き方をする中で政党のみを二つに絞ることを誘導する選挙制度が適切か疑問であり、参議院こそ多様な民意を保障する選挙制度が望ましい、
  • 参議院の選挙制度の大原則は、政党ではなく人を選べる選挙制度であるべきで、また、NGOの人たちが出てこられるような制度を採り入れるべきではないか、
  • 選挙制度を自分たちだけで決めると大政党に有利になるのは当たり前であり、第三者機関を設置して意見を出してもらうべき、
  • 参議院選挙は時期が決まっており争点選挙や業績選挙になるという特徴があり、選挙制度は参議院の独自性を発揮する一番明らかな方法ではないか、

などの意見が出された。
 3)選挙方法
 具体的な選挙制度については、意見は分かれた。

  • 参議院の独自性は選挙に現れており、1)選挙時期が決まっているので、国民意思の発現が時の首相の思うままにはならない、2)小選挙区の支持しか得ない衆議院と異なり、県又は全国の支持がある点が特徴、

との評価がなされ、

  • 日本全体のことを考えた民意を集約する上で、ある程度の広さの選挙区が必要、
  • 参議院の選挙制度としては、比例代表が一番優れているのではないか、
  • 次の世代の利益はだれも代表していないが、比例代表なら世代別クオータも導入可能ではないか、
  • 比例代表は政党色が強くなり、参議院としての独立感に対しても障害になってくるのではないか、
  • 投票率を上げるため、3年毎の改選について、比例区と選挙区の比重を同じにし、比例区だけの選挙と選挙区だけの選挙を交互に行うのも一考、
  • 人物本位の選挙という観点から、ブロック別の大選挙区も一案、
  • 国家と個人の間にある中間集団が入るような制度設計は重要、

などの意見が出された。
 4)一票の較差問題
 一票の較差問題については、

  • 参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題、
  • 国土の均衡ある発展は極めて重要な政策課題であるが、国民の生命や財産の確保のような重要テーマで地域により意思のウェートに差が生じるのは問題、
  • 両院制の在り方から見て、議員定数不均衡の問題より両院が類似した選挙方法になる方が問題で、直接選挙制を前提とする場合でも、平等選挙制は必ずしも要求されない、

三 まとめ

 本小委員会としては、次の諸点について、共通認識が得られた。

(1) 二院制を堅持する。(42条関係)

(2) 両院の違いを明確にするため、参議院の改革は今後とも必要であり、また選挙制度設計が極めて重要である。

(3) 参議院議員の直接選挙制は維持すべきである。(43条関係)

(4) 参議院は自らの特性をいかして衆議院とは異なる役割を果たすべきである。
 「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、長期的・基本的な政策課題への取り組み、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など。(90条関係)

(5) 現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当である。したがって、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきである。(59条、60条、61条、67条関係)

また、今後積極的に検討すべき問題として、次の諸点が残った。

(1) 参議院と政党との関係(党議拘束の緩和、参議院から閣僚を出すことを含む)

(2) 参議院の構成・選挙制度(47条関係)

(3) 会期制(52条、53条関係)

(4) 予算、特定の条約・法案等の参議院における審議の簡略化(59条、60条、61条関係)

(5) 「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、会計検査院の位置付け、同意人事案件、司法府との関係、国と地方の調整、憲法解釈機能・違憲審査的機能など。(90条、81条関係)

 これらの課題について、今後も引き続き、真摯な検討がなされることを望むものである。

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