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平成17年3月9日
二院制と参議院の在り方については、従前より参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきというのが各会派ともおおむね共通した認識であった。憲法調査会では、これまで調査は本調査会で行うことを基本としてきたが、このテーマに関しては、弾力的かつ機動的に運営できる小委員会方式により集中的に行うことが望ましいとの判断から、第159回国会の平成16年2月18日の憲法調査会で「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」を設置することが決定された。
同国会において本小委員会は、3月12日「二院制と参議院の在り方をめぐる論点」(参考人 国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室主任・北海道大学名誉教授 高見勝利氏)、4月14日「参議院改革」(参考人 日本大学法学部教授 岩井奉信氏、京都大学大学院法学研究科教授 大石眞氏及び東京大学大学院法学政治学研究科教授 蒲島郁夫氏)及び5月19日「選挙制度の在り方」(参考人 政策研究大学院大学教授 飯尾潤氏、駒澤大学法学部教授 大山礼子氏、元日本経済新聞社論説顧問 金指正雄氏)のテーマで、それぞれ参考人質疑をした後、小委員間で意見交換を行い、5月26日、保坂三蔵小委員長がその経過の概要を憲法調査会において報告した。
第20回参議院議員通常選挙(平成16年7月11日)後、第161回国会の平成16年10月15日に再び「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」が設置され、11月5日「選挙制度を中心とした参議院の在り方」(参考人 慶應義塾大学法学部教授 小林良彰氏)のテーマで、参考人質疑及び小委員間での意見交換を、11月19日「参議院と衆議院の役割分担」のテーマで、小委員間で意見交換を行い、12月1日の憲法調査会において、舛添要一小委員長がそれまでの議論を論点整理し報告した。
今第162回国会においては、平成17年2月4日及び2月16日に舛添小委員長報告(論点整理)で示された論点に基づいて小委員間での意見交換を行った。
これら7回にわたる小委員会での論議を通し、会派を超えて二院制と参議院の在り方についての理解が深まったと確信する。その内容については、各会派おおむね共通の認識が得られたものと、現段階では意見が分かれているため、さらに今後検討が必要なものがあるので、これらを整理し、今般、小委員会報告として取りまとめ報告する。
21世紀に相応しい、公正で活力ある社会を実現するためには、統治システム及びその相互関係の在り方をより進化・洗練させていく必要があるが、その具体化に当たって鍵となるのが、民主主義と法の支配のバランスであり、政治全体が事前調整型から事後チェック型になろうとする中でのチェック機能であり、また、複雑・多様化する国民の価値観を如何に反映するか等の諸点である。
「二院制及び参議院の在り方」を考えるに当たって、法の支配の実現は、立法府においては参議院がその実現の一翼を担うべき、参議院がチェック機能を担うべき、また、一院ではできない多様な意見を反映すべきなどの意見が出された。
今日の我が国において、国民主権の実効性を高め、基本的人権の保障を進展させ、地方分権と地方の自立を推進していくためには、参議院がこのような機能を発揮することが極めて重要であると考えられる。
本小委員会においては、このような認識を踏まえ、多岐な方面にわたって活発な議論が交わされた。そこで、舛添要一小委員長の下で、その内容にしたがってこれまでの議論を論点ごとに整理した。
一院制及び二院制それぞれの長所・短所は、いわば表裏の関係にあり、一院制を支持する意見は効率的な意思決定や円滑な政権交代、また両院の役割・機能分担や調整の困難さ等の点を挙げる一方、二院制を支持する意見は慎重審議や多様な民意の反映等の点を理由とすることが多い。小委員会においては、最初に二院制ありきということではなく国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、熱心な議論を行った。
是非と理由 本小委員会においては、会派を超えて二院制を堅持することで一致した。
その理由として、次のような理由が挙げられた。
ただ、迅速な政策判断が求められる現代にあっては、効率的な意思決定と円滑な政権交代を可能にすることは、二院制を採用する場合でも忘れてはならないとの指摘もなされた。
参議院の改革が今後も必要であることは各会派とも認識が一致している。この点に関し、両院の権能、選出方法、役割が似ていることが二院制の意義が薄れがちと言われる背景であり、それをそのまま維持すべきではなく、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が出された。
改革の方向として
などの意見が出された。
参議院が補完・抑制、多様な民意の反映といった本来の役割・機能を果たすためには、衆参両院の構成・権能等の相違を明確にすべきことが多くの小委員から指摘された。そのためには、参議院が独自性を発揮すべき機能は何か、衆議院とどのような役割・機能分担を行うかが大きな課題であることは、一致した意見であった。
役割・機能分担の重要性 役割や機能の分担を考えるに当たって、参議院は6年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していること、全国単位の比例区と都道府県単位の地方区という選挙制度の下で何十万という支持を得て議員になっていることなどの参議院の特質をいかすことが重要であることは、一致した意見であった。 したがって、参議院の補完機能の充実は無論のこととして、衆議院との違いを明らかにするため、独自性を発揮すべき機能をどのようなものにするかが大きな議論の焦点となった。なお、両院の役割分担は、ある程度は政党内の運営により可能との指摘も同時にあった。
独自性を発揮すべき具体的分野等 参議院が独自性を発揮すべき具体的分野と果たすべき役割・機能について、次の項目が挙げられた(※は憲法改正に係る事項と考えられるもの)。
1)長期的、基本的な政策課題
参議院は、長期的・基本的な政策課題を重点的に行うという点で、意見は一致している。
などの意見が出された。
2)決算及び会計検査院
参議院は、チェックの院として、決算審査を重点的に行うべきことは一致した意見である。 そして、決算審査の実効性を高めるため、
などの意見が出された。
3)行政監視、政策評価
決算と並んで、行政監視、すなわち国政調査や政策評価をさらに充実させ、チェックに重点を置く監視の院として権威を高めることが重要であることは、一致した意見である。
などの意見が出された。
4)国会同意人事案件
国会同意人事案件について、
などの意見が出された。
5)司法府との関係
特に司法府に対するチェックを含めた関係を見直したらどうかとの考えが示された。
などの意見が出された。
6)国と地方の調整
参議院の地域代表性を重視する考え方にかんがみ、参議院が国と地方の関係を扱うこととしたらどうかとの考えが示された。
などの意見が出された。
7)憲法解釈機能・違憲審査的機能
最高裁判所が容易には統治行為の憲法審査に踏み込まない状況があり、また内閣法制局の憲法解釈が絶対的地位を占めるのは不健全であるという議論を背景に、憲法解釈機能、そして違憲審査的機能を参議院に持たせたらどうかとの考えが示された。
などの意見が出された。
なお、これらの独自性機能を持つ場合、衆議院と重複する権限・機能については、参議院として逆に弱めるところや行わないところをより明確化させることも必要であって、例えば、予算案や衆議院で全会一致であった法案など特定の議案について、参議院は審査の省略ないし簡略化を行うなどの意見が出される一方、参議院の果たすべき抑制・補完の機能という観点から反対する意見も出され、見解が分かれた。
会期制
会期制(※)(52条、53条関係)についても、参議院の役割・機能との関連で議論がなされた。
会期不継続との関係や衆参同一会期の要否については検討が必要であるが、参議院では通年国会的に、政策機能を抜本的に充実し、チェックの院として立法機能をより広範に果たすべき、また、必要があれば会期にこだわらずチェックの院としての機能を果たすべきとの意見がある一方、会期制を採らないと法案を参議院に送っておけばいつでも成立が図れることになり、衆議院で会期制を採る意味がなくなるとの反対意見もあり、見解が分かれた。
運営事項
憲法事項に限らず、運営の改善に関する事項についても多数の指摘がなされた。
などの意見が出された。
議会が二つの院から構成される場合、両院間に意思不一致が生じたときにどのように調整するかは、二院制を採用する場合の極めて重要な問題である。小委員会でも、国会のもっとも根本的ないし基本的なところ、すなわち、法律案・予算案の議決及び条約の承認はあくまで両院の議決をもって国会の意思決定とすることを前提に、現行憲法の調整規定の妥当性や両院協議会制度とその運営の問題点等について議論がなされた。
1)法律案の再議決要件 (※)(59条関係)
法律案の再議決要件につき、3分の2以上の多数を要求する現行憲法の規定(59条2項)は、極めてハードルが高く、事実上、参議院に拒否権を認めるに等しく、「強すぎる参議院」にしているとの批判に示されるように、両院間の調整の最大の問題は、現行の再議決要件の是非である。
本小委員会においては、
などの意見のほか、
などの意見も出された。
2)内閣総理大臣の指名 (※)(67条関係)
内閣総理大臣の指名について、本小委員会においては、
などの意見のほか、
などの意見も出された。
3)両院協議会
両院協議会の在り方について、
などの意見が出された。
衆議院は政党を軸に活動しているので、参議院が衆議院に対する独自性を発揮しようとする場合は、政党から距離を置かなければならないのではないか、また、緑風会時代が最も参議院らしさを発揮していたのではないかなどの問題提起がなされ、活発な議論が交わされた。
1)政党との関係
など、必ずしも政党政治の枠にとらわれないことに参議院の意味があるとの意見がある一方、
などの意見が出された。
2)党議拘束
などの意見が出された。
3)政権から距離を置く必要性
本小委員会では、参議院は政権から距離を置くべきとの意見ではほぼ一致したが、閣僚等を参議院から出すことを自粛する(68条関係)かについては、
などの意見のほか、
などの意見が出た。
多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは、二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であるという認識で一致した。
[構成]
参議院の構成の在り方については、
などの意見が表明された。
[選挙制度]
1)直接公選制の維持
直接公選制の維持は、両院の一翼を担う一院という立場から譲れない点であることは一致した意見であった。
などの意見が出され、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところであった。
2)選出の在り方
衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面よりも個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めた。
などの意見が出された。
3)選挙方法
具体的な選挙制度については、意見は分かれた。
との評価がなされ、
などの意見が出された。
4)一票の較差問題
一票の較差問題については、
本小委員会としては、次の諸点について、共通認識が得られた。
(1) 二院制を堅持する。(42条関係)
(2) 両院の違いを明確にするため、参議院の改革は今後とも必要であり、また選挙制度設計が極めて重要である。
(3) 参議院議員の直接選挙制は維持すべきである。(43条関係)
(4) 参議院は自らの特性をいかして衆議院とは異なる役割を果たすべきである。
「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、長期的・基本的な政策課題への取り組み、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など。(90条関係)
(5) 現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当である。したがって、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきである。(59条、60条、61条、67条関係)
また、今後積極的に検討すべき問題として、次の諸点が残った。
(1) 参議院と政党との関係(党議拘束の緩和、参議院から閣僚を出すことを含む)
(2) 参議院の構成・選挙制度(47条関係)
(3) 会期制(52条、53条関係)
(4) 予算、特定の条約・法案等の参議院における審議の簡略化(59条、60条、61条関係)
(5) 「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、会計検査院の位置付け、同意人事案件、司法府との関係、国と地方の調整、憲法解釈機能・違憲審査的機能など。(90条、81条関係)
これらの課題について、今後も引き続き、真摯な検討がなされることを望むものである。