請願

 

第213回国会 請願の要旨

新件番号 713 件名 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願
要旨  我が国では慢性腎臓病患者が千三百万人を超えると推計され、新たな国民病と言われている。現在では早期に発見して治療を開始すれば、腎臓の機能低下を防いだり遅らせたりすることができるようになったが、一たび腎不全になれば人工透析や腎移植が必要になる。また、慢性腎臓病は動脈硬化を促し、心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など命に関わる病気の発症リスクも高まる。国は腎疾患対策事業、糖尿病を含む生活習慣病対策事業などを推進しており、その成果や官民を挙げての啓発活動の効果などがあいまって透析患者の増加率こそ鈍化傾向となっているが、減少するまでに至っていない。現在、約三十五万人が慢性腎不全の治療のために人工透析を受けているが、七十歳未満は減少傾向にありながら七十歳以上での増加が多く、全体として毎年増加し続けている。早期発見や適切な治療により透析導入の時期は遅くなったが、その結果、透析患者全体の高齢化が顕著となり、通院支援、介護支援、フレイル・サルコペニアの予防・改善などが喫緊の課題となっている。生産年齢世代にある透析患者においては社会で活躍している患者が多くいる一方で、就労意欲はあるが仕事に就けない透析患者がおり、透析患者に対する就労支援を充実させていく必要がある。また、切迫性が高まっている南海トラフ巨大地震や首都直下型地震、激甚化する自然災害が発生した場合、毎週三回の通院を要する透析患者には、透析医療の確保、避難所での対応、通院手段の確保などについて平時の対策が重要になる。腎移植に関しては、日本臓器移植ネットワークに登録している腎臓の移植希望登録者数は約一万四千人だが、二〇二二年の脳死下・心停止後の移植件数は腎臓単独が百六十二件、膵(すい)腎同時で二十七件となっており、脳死下・心停止後の腎移植の平均待機年数は約十五年となっている。腎臓病の早期発見、十分な保存期治療を求めるとともに、腎代替療法が必要となった場合の十分な説明と同意、そして、いつでもどこでも誰でも透析が受けられる社会を維持しつつ、高齢化対策、就労支援、災害対策についても万全を期すことを求める。さらに、臓器移植については一層国民の理解が進むような普及啓発、国内での移植件数を最大化させる施策の推進とともに、再生医療の研究が進むことを求める。
 ついては、国民を腎疾患から守る総合対策として、次の措置を採られたい。

一、腎臓病の早期発見と重症化予防、透析患者及び腎移植患者を含む慢性腎臓病患者の生活の質の向上のため医療や介護に関わるそれぞれの職種の連携した取組を推進すること。
二、透析患者であっても、安心して介護保険施設に入所できるよう、透析施設と介護施設の連携体制を整備し、人的・財政的措置を検討すること。
三、透析患者の高齢化や障害の重度化により通院困難者が増えている。国と地方自治体が連携し、通院を支援する体制を整備するよう努めること。
四、透析患者の治療と就労の両立のための支援対策を推進すること。
五、広域災害発生時において、透析患者の透析医療、通院手段を確保するため、自治体と透析施設団体が連携した上で、隣接する都道府県において透析患者を速やかに受け入れられる体制を構築すること。
六、臓器移植の推進及び再生医療研究の促進に努め、実用化に近い腎臓再生医療の研究については体制の充実を図ること。

一覧に戻る