請願

 

第213回国会 請願の要旨

新件番号 506 件名 じん肺とアスベスト被害根絶に関する請願
要旨  じん肺は、最古にして今なお最大の職業病である。一九六〇年にじん肺法が制定されてから六十三年が経過したが、いまだに千三百人ものじん肺有所見者が認定されており、毎年新たに百人を超える人がじん肺の最重症患者として認定され続けている。ILO(国際労働機関)・WHO(世界保健機関)は、遅くとも二〇三〇年までに世界中からじん肺を根絶することを提唱している。今なおじん肺が多発している日本は、早急にじん肺法の改正を始め抜本的な制度改革に取り組むことが強く求められている。アスベストは、じん肺の原因となるだけでなく強い発がん性を有することが古くから明らかとなっていたが、国が十分な対策を取らなかったため、多数の被害が発生している。アスベストについての国の責任は、大阪泉南アスベスト訴訟最高裁判決や建設アスベスト訴訟最高裁判決で明確になっている。二〇〇六年にアスベストの使用などは原則禁止となったが、今後もアスベストを使用した建物の改修、解体工事などによる大量の被害発生が危惧される。国は、アスベストの加害責任が明確になった以上、被害者の早期救済と被害根絶に向けた抜本的な改革を実行するべきである。また、アスベスト関連疾患に罹患(りかん)した患者により有効な治療を行うため、これまで以上に研究に取り組むことができる体制を構築することも極めて重要である。二〇〇六年三月に施行された石綿による健康被害の救済に関する法律は、二〇一〇年七月に救済対象となる指定疾病が拡大されたが、中皮腫と肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、びまん性胸膜肥厚の四つに限定され、救済給付金も労働者災害補償保険法や公害健康被害補償法に比して低額に抑えるなど不十分な内容のままである。じん肺やアスベスト被害者を早急に救済するための基金制度の創設、取り分け被害者が多発しているトンネルじん肺や建設アスベストの被害者を速やかに救済するため、国やゼネコン、建材メーカーなどが基金を拠出し、被害者が裁判をせずに基金から補償を受けられるような制度を創設することが急務となっている。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、じん肺法施行後六十三年を経た今もなお、多くの被害者が発生し続けていることを踏まえて、じん肺やアスベスト被害の根絶に向けたじん肺法や関連法令の改正を行うこと。
二、建物の改修、解体工事に伴うアスベスト被害を防止するため、石綿障害予防規則の更なる改正を行うこと。
三、トンネル建設労働者のじん肺被災者を早期救済するための基金を創設する「トンネルじん肺救済法」を直ちに制定すること。
四、建設アスベスト被害者を早期救済するため、建材メーカーを含む補償基金を早急に創設する法律改正を行うこと。

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