質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第一二三号
  令和六年五月十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員福島みずほ君提出辺野古大浦湾の工事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出辺野古大浦湾の工事に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 普天間飛行場代替施設建設事業の実施に当たり、沖縄防衛局が環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第二十一条第二項の規定に基づき作成し、同法第二十五条第二項の規定に基づき補正した環境影響評価書及び平成二十五年三月二十二日付けの公有水面埋立承認願書に添付した公有水面埋立法施行規則(昭和四十九年運輸省・建設省令第一号)第三条第八号に掲げる環境保全に関し講じる措置を記載した図書(以下「平成二十五年環境保全図書」という。)においては、御指摘の「サンゴ移植」について、「事業実施前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的方策について、専門家等の指導・助言を得て、可能な限り工事施工区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築して影響の低減を図り、その後、周囲のサンゴ類も含め生息状況について事後調査を実施します。」と記載しているところ、この内容を明確化するため、令和二年四月二十一日付けの埋立地用途変更・設計概要変更承認申請書に添付した同号に掲げる環境保全に関し講じる措置を記載した図書(以下「令和二年環境保全図書」という。)においては、「サンゴ類に影響を与える工事を実施する前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的方策について、専門家等の指導・助言を得て、可能な限り工事施工区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築して影響の低減を図り、その後、周囲のサンゴ類も含め生息状況について事後調査を実施します。」と記載しているところである。

 このため、沖縄防衛局においては、同事業に係る埋立区域内に生息する移植・移築対象のサンゴ類について、平成二十五年環境保全図書及び令和二年環境保全図書に基づき、「可能な限り工事施工区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築」をするとともに、同事業に係る工事による水の濁り等についてのシミュレーションの結果、当該サンゴ類のうち移植・移築ができていないものの生息環境に影響を与えないことが確認された箇所について、工事に着手してきており、環境の保全についての適正な配慮をして事業を実施してきていることから、「環境影響評価法第三十八条に明らかに違反している」との御指摘は当たらない。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、環境影響評価法においては、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について、同法第三十三条から第三十七条までの規定に基づき、免許等を行う者が、環境保全措置が記載された環境影響評価書に基づき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものかどうかを審査しなければならないものとされ、また、環境の保全についての適正な配慮がなされていないと判断した場合には、当該免許等を拒否する処分を行うことができること等とされている。また、事業者は、同法第三十八条第一項の規定に基づき、環境影響評価書に記載されているところにより、環境の保全についての適正な配慮をして事業を実施するようにしなければならないこととされている。したがって、事業者が、環境影響評価書に記載されているところによって事業を実施することなく、「あとから都合の良いシミュレーション結果を付け加えれば、環境保全措置を行わずに済む」との御指摘は当たらない。政府としては、こうした事業について適正な環境配慮が確保されるよう、引き続きこれらの規定を適切に運用していく考えである。

 なお、普天間飛行場代替施設建設事業については、平成二十五年十二月二十七日付けの公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)第四十二条第一項の規定に基づく沖縄県知事の承認に際し、同法第四条第一項により同項第二号に規定する環境保全につき十分配慮されるものであることが確認されていると承知しており、また、一及び二についてで述べたとおり、沖縄防衛局においては、環境の保全についての適正な配慮をした上で同事業を実施してきていることから、御指摘のように「環境保全措置を行わずに済むという「あしき先例」となる」というものではない。

四について

 御指摘の「沖縄県との事前協議」は、三についてで述べた沖縄県知事の承認に係る承認書の別紙「留意事項」の一に基づく協議を指すものと理解しているが、同協議について、防衛省としては、普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認願書等の「設計の概要」に記載のある護岸等が対象であり、この「設計の概要」に記載のない御指摘の「海上ヤード」は同協議の対象外であると認識しているため、その趣旨を述べたものである。