質問主意書

第108回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七号

内閣参質一〇八第一七号

  昭和六十二年五月二十二日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員田代富士男君提出高度科学技術の発達に伴い惹起する著作物保護・利用制度の確立に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員田代富士男君提出高度科学技術の発達に伴い惹起する著作物保護・利用制度の確立に関する質問に対する答弁書

一について

 著作権に関する紛争を解決する制度として、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)に著作権紛争解決あつせん委員の制度が設けられており、これ以外に新たに特別の制度を設けることについては、検討していない。

二及び三について

 「著作権問題に関する懇談会」において結論を出すに至らなかつたのは、問題解決のための具体的な方策について、同懇談会において関係当事者間の合意を形成するに至ることは、極めて困難であると認識せざるを得なかつたことによるものと承知している。
 なお、私的録音・録画問題については、昭和六十二年五月八日に開催された著作権審議会において、今後、この問題についてDAT発売問題にも留意しつつ検討することが決定されたところであり、同審議会における検討の目途については、現在のところ未確定である。

四について

 現在、義務教育段階においては、児童生徒の心身の発達段階を考慮し、著作権自体を教科の内容とはしていないが、基本的事項として、社会科等における国民としての権利・義務に関する指導の中で、他人の権利を尊重することが大切であることなどについて指導することとしている。
 なお、教育課程審議会に対しては、「幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善について」として、既に包括的に諮問を行つているところである。

五について

 従来の著作権、特許権などではカバーしきれない問題については、例えば、新たな法律により対処する等これまでも適切な対応を図つてきており、今後とも、技術の発達と権利の保護との適正な調和に配慮しつつ所要の対処を行つていく所存である。
 また、知的所有権に関する国際ルール作りについては、WIPO(世界知的所有権機関)において、集積回路、バイオテクノロジー等新分野の権利を含めた知的所有権全般について国際的調和の観点から保護の在り方の検討が行われており、ウルグァイ・ラウンドにおいても、国際貿易に対するわい曲及び障害を削減するという観点から、「不正商品貿易を含む知的所有権の貿易関連側面」を交渉項目の一つとして採り上げ、昭和六十二年に入り交渉を開始しているところである。我が国としては、これらに対しても積極的に取り組んでまいりたい。