第104回国会(常会)
質問第四号
四国ドック株式会社の労使紛争に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和六十年十二月二十四日 寺田 熊雄
四国ドック株式会社の労使紛争に関する質問主意書 高松市朝日町所在の四国ドック株式会社(以下、単に「会社」という。)では、昭和五十五年五月、親会社たる三井造船株式会社常務取締役たりし河面良治氏が社長に就任して以来現在まで、自己の好まざる労働組合の壊滅をめざす露骨な不当労働行為が継続して行われ、労使紛争が絶えない。
一 政府は、かくのごとき陰惨なる労使紛争の実体を把握しているのかどうか。もし、把握していなければ、速やかに調査の上、その経過と現状を明らかにされたい。 二 企業内に二つの労働組合が併存する場合、企業が賃上げや一時金について一方の労働組合が受け入れ難いことが予測される前提条件を提示して譲らず、そのため、これらに関する協定が容易に成立しないのに反し、もう一方の労働組合は右の前提条件を受諾して団体交渉を妥結させ、いち早く賃上げや一時金協定を締結するため、これら給与の支払について両組合員間に差異を生じ、一方の組合員らに深刻な生活上の困難を生ぜしめるような労務対策は明らかに不当労働行為であると考えられるがどうか。また、このようなケースについての最高裁判所の判例があれば示されたい。 三 政府は、右に述べた陰惨なる労使紛争や露骨な不当労働行為については、適切な指導を行い、その速やかな是正を図るべきであると考えるがどうか。 四 会社が、昭和五十六年中、賃上げや一時金に関する協定締結の前提条件とし、分会がやむなくこれを受諾したものに、土曜を休日とする週休二日制の実施と引換えに他の就労日の労働時間を七時間五分から八時間に、休憩時間を四十五分から六十分に、拘束時間を八時間から九時間にそれぞれ延長した上、さらに従来の休日を一日減らすこととする労働条件の変更があり、そのため、年間の総労働時間がふえるという結果を招来した事実があつたのではないか。
五 会社は、就業時間五分前に音楽を流し、管理職を動員し、自由参加という名目の下に、事実上、従業員に就業時間外の体操を強要しているのではないか。政府は、この様な事実について承知しているか。 六 会社は、従業員に対し、昼休みは十二時のサイレンが鳴つてから作業を止め、然る後、ガス・酸素・電気などを止めさせてから食堂に行くことを許し、午後は、十三時から就業という規則にもかかわらず、クレーン職場のごときは第二組合職制の指導下に、任意のサービス労働と称して就業時の十数分前から作業に就かしめ、終業は十七時のサイレンが鳴るまで作業するよう強要し、それ以後電源を切り、ガスボンベのバルブを締め、長さ三十メートル以上の二本のホースを仕舞う作業を行つて後帰宅させるため、労働時間は事実上八時間を超え、休憩時間も一時間より短縮を余儀なくされている。
七 分会は、不合理きわまる会社の団交拒否にかんがみ、総評その他の者に団交の権限を委任し、数度にわたる地労委の斡旋により、昭和五十九年十二月七日、ようやく会社と労使関係協定書を締結した。
八 およそ地労委に対し不当労働行為の申立を行つたり、団体交渉の斡旋申請をしたりすることは、労働組合の正当な行為と目されるから、地労委の調査、審問等に当たり組合が何名の役員を出頭せしめるかは、社会通念に反して著しく多数の者を出頭せしめるような場合は別として、組合が自主的に決定する問題であると考えるがどうか。政府の見解を承りたい。
九 会社は、さらに、昭和六十年九月、労使関係協定書に違反した就業規則の改定を行い、一方的に実施するという理不尽な措置をとつたといわれるが、その事実を明らかにされたい。 十 右に述べたような不当労働行為により分会が賃上げ及び一時金協定を締結し得ないため、会社は、分会組合員が定年退職する場合、賃上げ前の給与による退職金を支払い、離職証明書の記載も旧賃金で行うなど、退職者についても嫌がらせを行い、以て、分会の弱体化を図つているといわれるが、その実態を明らかにされたい。 十一 その他、会社は、昭和五十九年十二月締結の労使関係協定書を一方的に破棄して分会の組合活動を禁止又は制限するばかりか、組合事務所の貸与、構内掲示板の設置、組合員のチェック・オフなどの便宜供与を打ち切るなど、第二組合との間に著しい差別を行い、以て、分会の弱体化を図りつつあるといわれるが、その実態を明らかにせられたい。 十二 会社は、分会執行委員が会社の職制に対し、労使協議会の開催申入れを行い、その交渉がたまたま就業時間に及んだことを理由に、執行委員を五日間の出勤停止にするという非常識きわまる処置をとつたといわれるが、その実態を明らかにされたい。 十三 地労委は労働者の団結権、団体交渉権、その他の団体行動権を擁護することを主要な任務とする機関であるにもかかわらず、現実には、会社の右に述べたような不合理且つ残忍な組合対策や不当労働行為に対しては、殆んど有効な対策を講じ得ないのが実情である。
十四 わが国が世界のGNPの一割を超える経済大国になつたことは喜ぶべきであるが、その陰に、労働者に対する長時間労働の強制、不当労働行為や陰湿な組合いじめによる使用者の好まざる労働組合壊滅工作と御用組合育成策とが広く行われていることは、先進諸国の批判と蔑視とを招くものと考える。
右質問する。 |