質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一六号

中小企業の海外投資に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年八月十一日

峯山 昭範      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   中小企業の海外投資に関する質問主意書

 最近におけるわが国の中小企業をめぐる内外情勢は激しい変化を示しており、さきのドル・ショックの場合などに端的に見られたように、多くの中小企業に対し、きびしい試練を迫つている。中小企業がこの環境変化に積極的に対応するためには、従来以上に近代化・構造改善につとめる必要があることはもちろんのこと、事業の転換、海外投資等の推進も必要であろう。
 ところで、わが国の中小企業は、発展途上国への海外投資の意欲が最近になつて高まつてはきているが、人材不足、資金調達の困難、海外投資に関する情報の収集難、海外投資経験の不足、現地に適切なパートナーがいないなどの問題があり、中小企業の海外投資の円滑化のための国の施策が強く要請されているといえよう。
 よつて次の諸点について政府の見解を明らかにされたい。

一、中小企業の海外投資の現況について

 わが国の中小企業の海外投資は、昭和四十七年十二月末現在で、六一七件に達しているが、概して、投資をしてみたものの、現状では利益すら計上できない企業が多い。
 また、投資リスクが比較的小さく投資環境が安定している近隣地域向けの場合は、集中進出がみられ、この結果、現地企業との競合を生じ、現地産業の育成を阻害し、また、タイ国における旭硝子(株)の子会社タイ・カセイソーダ会社の排水がメナム川を汚染しているのではないか等の非難を呼ぶケースも多く伝えられている。
 よつて次の諸点について政府の回答を求める。
1 国別、年次別の中小企業海外投資件数および金額実績について。
2 業種別、年次別の中小企業海外投資件数および金額実績について。
3 進出年次別の中小企業海外投資の収益状況について。
4 現地で公害等の非難があつた具体的な事例について。

二、中小企業海外投資協力事業団の設立について

 発展途上国の要請に積極的に対応するとともに、中小企業の海外投資の円滑化を図るため、中南米、アフリカ等の発展途上国における合弁事業を中小企業とともに推進する一貫した機能を持つた機関として中小企業海外投資協力事業団を設立すべきであると考えるがどうか。

三、海外貿易開発協会による中小企業海外投資協力事業について

 本年七月一日から発足した海外貿易開発協会による中小企業海外投資協力事業が創設されたが、無利子融資の経済協力というワクがあるため、相手方の資本が参加しなければならないとか、現地合弁に限るとか、相手方政府機関からの要請があるとかといつた厳しい条件および手続きが課せられている。これを少なくとも「ドル対策法」の対象となつている業種については、特例を考慮して、この種の中小企業の海外投資を促進すべきであると考えるがどうか。

四、中小企業の海外投資に対する国の施策について

 現状では、中小企業の海外投資は、人材、情報、資金等の各面での障害が大きいことにかんがみ、国の指導、援助の充実が強く望まれている。そこで政府が、今後採ろうとしている中小企業の海外投資に対する具体的な施策について伺いたい。

  右質問する。