第1回国会(特別会)
(答弁書第百七号)昭和二十二年十一月六日配付 内閣参甲第一一九号 昭和二十二年十一月四日 内閣総理大臣 片山 哲 参議院議長 松平 恒雄 殿 参議院議員池田恒雄君提出ワラ工品に対する報償肥料に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員池田恒雄君提出ワラ工品に対する報償肥料に関する質問に対する答弁書 第一 (1)藁工品の統制機構 従来藁工品の統制は藁工品配給統制規則(農林省令)により藁工品の集荷は全国農業会の出荷指図により原則として市町村農業会を通じ都府県農業会をして集荷せしめ、これを全国農業会に出荷し、配給は全国農業会内に、全国農業会、府県集荷機関代表者又はその団体、都府県配給機関代表者、学識経験者等を以て組織する中央藁工品需給協議会を設置し、全国農業会の樹立する配給計画を審議し、その決定に基き全国農業会から直接配給(肥料塩、農機具、油脂用、農業会自己消費用、北海道向)する分と、都府県藁工品配給協同組合を通じて配給する分とに区分して配給を実施して来たのであるが九月二十日附を以て内閣訓令第三号指定配給物資配給手続規定に従い、臨時物資調整法に基き農林省令農産品配給規則が公布され十二月一日より施行されることとなつた。その要旨とするところは 一、規則の対象品目 (一)藁工品(故藁工品を除く。)―稲藁を主要原料とする叺(地莚を含む)、莚(莚代用こもを含み皆川莚を除く。)、荷造縄及び堅縄(みご縄を除く。) (二)藺製品(故藺製品を除く。)―藺、七島藺又は太藺を主要原料とする畳表、薄縁莫蓙、上敷莫蓙、莫蓙長物及び間物、着莫蓙生地並びに花莚。 (三)除虫菊乾花 二、集荷配給方法の大要 1 集荷は登録を受けた卸売業者が行う。 2 一定規模以下の農家の自家消費の場合等を除き、生産者は原則として、生産品の全量を登録を受けた卸売業者に譲り渡さなければならない。 3 農林省は都道府県が卸売業者よりの報告に基いてなす出荷見込数量報告により都道府県別に配給割当及び出荷割当を行う。 4 都道府県及び市町村は右に基き需要者別配給割当を行い配給券を需要者に交付する。 5 需要者は配給券の予約券の部分により登録を受けた小売業者に購入申込をなす。現品の存する場合には本券も共に渡して現品購入することは差支えない。 6 都道府県は小売業者に対し、その集めた配給券の予約券の数量に応じて購入割当証明書を発給し、小売業者はそれを以て卸売業者より購入する。 7 販売業者の登録は六ヶ月毎に更新し、小売と卸売の兼業は認めない。 (2)藁工品の需給計画並に集荷配給の実情 藁工品就中、叺、莚及縄は種々の原因により累年減産の一途を辿りつつあつたが、特に昭和二十一藁工品年度の生産は (一)二十年産米の不作による原料稲藁の減収 (二)肥料、燃料、飼料、畳床等に要する稲藁の需要量の増加 (三)稲藁価格の高騰 (四)藁工品価格の割安 (五)敗戦に因る生産意欲の減退等の原因により統制機関たる全国農業会の出荷指図数量二一五、六二〇千点に対し出荷実績は僅に四八、三七六千点(達成率二二%)と云う著しい減産を示したが、昭和二十二藁工品年度に入り (一)増産競技会の開催 (二)生産者販売代金の現金払 (三)化学肥料の特配 (四)その他生産意欲の昂揚等各種の増産対策と生産者の奮起により生産は順次好転し、二十一年十一月-二十二年九月の出荷実績は一五五、四五四千点に達し、昨年同期の三.五倍に達しているのであるがなお本年度出荷指図数量(二四九、三七二千点)の六二%を達成しているにすぎず本年度の需要三七七、七七〇千点を充足する為には今後一層の増産と消費規正を図らなければならない実情にある。 特に本第三、四半期は藁工品の端境期であり、本期に於ける増産量を相当見込んでも配給割当可能量は第二、四半期以前の割当の未積返分を差引くと僅に
計一一、九九三千枚貫に過ぎず、之に対して 本期需要見込量は供給見込割合
であつて需給状況は極度に逼迫している。 尚第二、四半期までは肥料用、塩、進駐軍納入物資用等の重要用途に対して、概して順調に配給し得たが、麦肥用叺、塩用叺が特に逼迫する虞があるので、これらの叺につき九月以降十二月迄の間において肥料特配量の増量を行い緊急増産を強行している。 以上のような逼迫せる需給状況下において十一月一日より昭和二十三藁工品年度が開始されるのであるが藁工品の需要は益々増加の傾向にあり、地方庁よりの調査が未報告の分があるため集計できないが全国農業会の調査によると四一〇、八九七千枚貫に達しているのであるが関東、東北地区の水害その他の事情を考案し各府県と打合せの結果、藁工品の最低需要量を確保するため二四六、五三七千枚貫の最低出荷量を決定し、次官通牒を以て各都道府県知事宛割当し右数量以上の生産と出荷の確保方通牒した。 第二 報 償 (1) 藁工品に対する報償制度 (イ) 稲藁中の肥効成分を補給還元することによつて藁工品用原料藁の確保に資するため、藁工品の出荷数量に応じ肥料を配給しその実績は(昭和二十一年十一月より昭和二十二年八月)約二〇、〇〇〇トンである。 (ロ)藁工品生産者の生産意欲の昂揚施設として製作競技会を開催せしめ、その賞品用として繊維製品、地下足袋、ゴム長靴を特配した。 本年度特配量 繊維製品 八、五一九反 地下足袋 四、〇〇〇足 ゴム長靴 二、〇〇〇足 (2) 藁工品生産用肥料配給方法 肥料の配給対象は藁工品の統制機関である全国農業会が収買した藁工品の供出者を原則とするも農家に非らざる製縄工場等の出荷品に対しては肥料配給の趣旨に鑑み製縄工場生産者より原料藁供給者名及供給数量を製縄工場所在地町村農業会に報告せしめ、肥料の現物は製縄工場に配給せずして当該町村農業会より原料藁供給者は直接配給するよう指導しているが斯くては原料藁の確保上遺憾の点があるので、製縄工場の原料藁(購入原料藁)に対する肥料の配給方法を改善すべく目下考究中である。 なお非農家である藁工品の生産者が受配肥料を横流しする噂があるので地方庁に対し指導取締方を再三通達している。 (3)藁工品生産者戸数及び生産数量等 昭和二十年(農林省統計書による) 製造戸数 一、一九六、八八七戸 販売数量 叺 三七、二三八、六〇九枚 莚 三三、一四五、八三五枚 縄 五一、五〇七、一二五貫 俵 三、三九七、一二六枚 草 履 表 一一、一〇九、三二二足 であるが農家生産と非農家生産との区別については、最近の調査資料がないので不明である。 なお報償物資の配給については地方庁をして直接指導せしめているので農林省に於ては実数は不明である。 参考資料 (一)昭和十六年-昭和二十二年(自二一、一一 至二二、九)出荷実績
(二) 昭和二十二年度需給状況
(三) 昭和二十二年度需給計画
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