第221回国会(特別会)
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内閣参質二二一第一一〇号 令和八年八月四日 内閣総理大臣 高市 早苗
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員小西洋之君提出国旗の損壊等の処罰に関する法律に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員小西洋之君提出国旗の損壊等の処罰に関する法律に関する質問に対する答弁書 一について 前段のお尋ねについては、国旗の損壊等の処罰に関する法律(令和八年法律第六十九号。以下「本法」という。)は、衆議院議員により発議され、国会の両院での審議を経て法律として成立したものであり、政府としては、お答えする立場にないが、令和八年七月九日の参議院内閣委員会において、法案提出者が「本法律案につきましては、・・・国旗の損壊事例が生じていることに加えまして、SNS等が加速度的に普及し、グローバル化が進展する中で、国内にとどまらず海外でも生じている国旗を損壊などする行為がリアルタイムあるいはそれに近い形で我が国の人々が知るところとなり、様々な形で影響を与えることは否定できないことから、このような事情を踏まえつつ、国旗を損壊などする事案の発生を将来に向かって抑止する必要があるということを立法事実の一つであると考えております。その上で、刑罰法規は一般的に法益が害されることを予防するために立法するものでありますから、実際の発生件数の多寡にかかわらず、将来発生する事案の予防のための必要性を踏まえた上で立法されているものでございます。」と答弁したものと承知している。 後段のお尋ねについては、「予防的立法事実」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、将来発生する事案を予防する必要性を踏まえた上で立法されたものとしては、例えば、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成十二年法律第百四十六号)やヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律(令和八年法律第七十号)があるものと承知している。 二について 議員立法に対するお尋ねの「評価」については、政府としてお答えする立場にない。 三から五までについて お尋ねについては、一についてで述べたとおり、本法は、衆議院議員により発議され、国会の両院での審議を経て法律として成立したものであり、本法を誠実に執行するのが政府に課せられた責務であることから、政府としては、お答えする立場にないが、令和八年七月十六日の参議院内閣委員会において、法案提出者が「本法案は、対象を有体物である国旗に限定した上で、あくまでも国旗の損壊等として外形に表れた行為態様に着目して構成要件を定め、その趣旨を明らかにするため、構成要件のうち、人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法に該当するか否かを判断するに当たっては、行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案する旨の規定を置くとともに、さらに、このような本法案の罰則規定が、個人の内心に立ち入って規制を加えたり、表現の内容に着目して規制を加えたりするものではなくて、必要かつ合理的な規制として憲法上許されることを前提としつつ、なお入念的に、本法案の適用に当たって、国民の思想及び良心の自由や表現の自由等を不当に侵害することのなきよう万全を期すために、三条において適用上の注意の規定を設けることとしたものであります。このように、本法案では表現の自由等の侵害につながらないように十分に配慮した上で、思想及び良心の自由や表現の自由といった憲法上の権利を不当に制約するものではなく、これらによる萎縮効果も生まないものと考えております。」と答弁したものと承知している。 六について お尋ねについては、一についてで述べたとおり、本法は、衆議院議員により発議され、国会の両院での審議を経て法律として成立したものであり、本法を誠実に執行するのが政府に課せられた責務であることから、政府としては、お答えする立場にないが、令和八年七月十六日の参議院内閣委員会において、法案提出者が「確かに、国旗の損壊等のような象徴的表現行為は、現代社会における効果的な表現手段となり得るものではございます。しかしながら、だからといって、常に個人が最も効果的であると思う表現手段を選択するという利益が、そのような表現手段が取られた場合に侵害される他の利益に優先されるわけではないということは、最高裁の判例等においても示されているところでございます。そして、人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法で公然と国旗を損壊等する行為が何らかの政治的主張のための効果的な表現手段となり得る場合であっても、そのこと自体が国旗を大切に思う国民感情を保護する本法案の罰則を免責する十分な理由になるわけではないというふうに考えております。このことは、現行法におきましても、例えば、裸でデモ活動を行えば公然わいせつ罪、神社に政治的主張を落書きすれば礼拝所不敬罪に問われること、またその可能性があるということと同様でございます。こうした考え方に基づきまして、本法案は、必要かつ合理的な規制として表現の自由を保障する憲法二十一条一項に違反するものではないというふうに考えております。」及び「本法案において、その第三条の適用上の注意の規定を設けた理由につきましては、本法案二条の規定が、個人の内心に立ち入って規制を加えたり表現の内容に着目して規制を加えたりするものではなくて、必要かつ合理的な規制として憲法上許されるものであることを前提としつつ、なお入念的に、本法の適用に当たって国民の思想及び良心の自由や表現の自由等を不当に侵害することのないよう万全を期すために置いた規定でございます。したがいまして、本法案が内容規制につながる、あるいは内容規制そのものであるという御指摘は当たらないものと考えております。」と答弁したものと承知している。 七について お尋ねの「衆理事懇資料の内容」は承知している。 八から十までについて 犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個々に判断されるべき事柄であるため、一概にお答えすることは困難であるが、捜査機関においては、御指摘の「衆理事懇資料」の内容を含む国会における審議の内容等も踏まえ、個別具体的な事案に応じて、法と証拠に基づき適切に対処していくものと考えている。 十一について 令和八年六月二十六日の衆議院内閣委員会において、法案提出者が「客観的な状況、一連の行為であるとか、また周囲の状況、それがどのような流れの中で行われたのか、どのような物体を用いて行われたのかといった態様、あるいはどのような場所で行われたのかといったシチュエーションなど、一連の行為、周囲の状況、そういう客観的な事情を総合的に勘案して行うということで、そのために二条二項を規定しているところであります。」と答弁したものと承知しているところ、お尋ねについては、本法第二条第二項の規定により、「行為の外形」、「周囲の状況」を含む「客観的な事情」を指すものと認識している。 十二及び十三について お尋ねの「内容を踏まえる」及び「政府における本法の運用に係る解釈」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、警察庁においては、都道府県警察に対し、「国旗の損壊等の処罰に関する法律の公布について(通達)」(令和八年七月二十四日付け警察庁丙捜一発第七号・丙刑企発第二十五号警察庁刑事局長通達)において、本法の趣旨、要点等を示すとともに、「国旗の損壊等の処罰に関する法律の施行に伴う関係規定の適切な運用等について(通達)」(令和八年七月二十四日付け警察庁丁捜一発第百三十三号等警察庁刑事局捜査第一課長等通達)において、お尋ねの「衆理事懇資料」を示した上で、「法の運用上の留意事項等」として、「組織的かつ緻密な擬律判断の徹底」、「逮捕に関する適正な判断の確保」及び「通報への適切な対応等」について指示している。 十四について 御指摘の「政治的表現や芸術表現における国旗損壊行為」の態様については様々なものが想定されるため、一概にお答えすることは困難であるが、令和八年七月九日の参議院内閣委員会において、法案提出者が「今回の法案は、政治的意見そのものを処罰対象とするものではございません。・・・この構成要件としては、人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊、除去又は汚損する外形的、客観的な行為態様のみを構成要件としております。そういった意味で、政治的な抗議としてなされたかどうかということにつきましては、直接その構成要件該当性の判断の枠組みとは別の要素ということになってまいります。その上で、仮に構成要件に該当したとしても、刑法三十五条の正当行為など、この違法性阻却に該当する場合というのはあり得るということでございまして、そのときの判断基準としては、社会通念上相当かどうか、つまり、社会一般に通用している常識や見解に照らして、個別具体的な事案ごとに行為の目的、態様、行われた状況、一連の経過など、こうしたものを踏まえて判断されるものと理解しております。」及び「本法案におきましては、芸術表現であれ、ほかの何らかの活動であれ、あくまでもその行為自体が人に著しく不快又は嫌悪の情を催させる方法によって公然と行われたのであれば構成要件該当性を満たす可能性がございます。そして、そのことを前提として、個別具体の事情に応じてその行為が社会通念上相当性を有すると判断されれば違法性が阻却されることがあり得るということになります。」と答弁したものと承知している。 十五について 前段のお尋ねについては、御指摘の「附帯決議」の内容と議員立法に関する法案提出者による「国会答弁」の内容との間の関係について、政府としてお答えする立場にない。 後段のお尋ねについては、犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個々に判断されるべき事柄であるため、一概にお答えすることは困難であるが、捜査機関においては、国会における審議の内容等も踏まえ、個別具体的な事案に応じて、法と証拠に基づき適切に対処していくものと考えている。 十六について 前段及び中段のお尋ねについては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の正当行為とは、一般に、社会生活上正当なものとして許容される行為をいうとされており、どのような行為が正当行為に該当するかについては、捜査機関により収集された証拠に基づき個々に判断されるべき事柄であるため、一概にお答えすることは困難である。 後段のお尋ねについては、「国旗損壊罪の適用除外の根拠が刑法第三十五条の正当行為であるとすることが法的な正当性を有するものであるか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、本法第二条第一項の罰則についても刑法第三十五条が適用され得るものと承知している。 十七について お尋ねについては、一についてで述べたとおり、本法は、衆議院議員により発議され、国会の両院での審議を経て法律として成立したものであり、政府としては、お答えする立場にないが、令和八年七月九日の参議院内閣委員会において、法案提出者が「仮に構成要件に該当したとしても、刑法三十五条の正当行為など、この違法性阻却に該当する場合というのはあり得るということでございまして、そのときの判断基準としては、社会通念上相当かどうか、つまり、社会一般に通用している常識や見解に照らして、個別具体的な事案ごとに行為の目的、態様、行われた状況、一連の経過など、こうしたものを踏まえて判断されるものと理解しております。今、そうしたことについての判断基準、より具体化できないかというお話ありました。なかなかこの違法性阻却について類型化するというのは難しいところでございますが、一つの判断要素としては、例えばその方法以外による方法で政治的な意見表明ができないような、社会的に、状況にあったかどうか、こういった要素というものは挙げられるというふうに我々としては考えております。」と答弁したものと承知している。 十八について お尋ねについては、一についてで述べたとおり、本法は、衆議院議員により発議され、国会の両院での審議を経て法律として成立したものであり、本法を誠実に執行するのが政府に課せられた責務であることから、政府としては、お答えする立場にないが、令和八年七月十六日の参議院内閣委員会において、法案提出者が「本法案二条一項の人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法と、その文言については、同条二項の規定が行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情に基づいて判断する旨を定めていることも併せて考えますと、その文、文言から、通常の判断能力を有する一般人の理解において、その行為の態様や周囲の状況などから具体的場合に当該行為がその適用を受けるものなのかどうかの判断を可能ならしめるような基準が十分に読み取れると考えられることから、刑罰法規として十分な明確性を備えており、憲法三十一条にも違反するものではないというふうに考えております。」と答弁したものと承知している。 十九について お尋ねの「国旗の損壊等の処罰に関する法律の運用」の具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、また、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項又は第二項の規定が適用されるか否かについては、個別具体の事案に即して判断すべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体は、同条第一項に規定する賠償責任を負い、この場合において、当該公務員に故意又は重大な過失があったときは、当該国又は公共団体は、当該公務員に対して、同条第二項の規定に基づく求償権を有することとなる。 二十について お尋ねの「愛国心の醸成を目的として本法の周知、適用等をする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府として、国会における審議の内容等も踏まえ、本法の適切な運用がなされるよう、本法の趣旨及び内容を周知徹底してまいりたい。 |