第221回国会(特別会)
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質問第一一〇号 国旗の損壊等の処罰に関する法律に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和八年七月二十四日 小西 洋之
参議院議長 関口 昌一 殿 国旗の損壊等の処罰に関する法律に関する質問主意書 国旗の損壊等の処罰に関する法律(以下「本法」という。)は議員立法ではあるが、今後、政府は本法を運用する立場となることから、以下の質問に対して運用解釈等に係る答弁を留保することなく、誠実に対応されたい。 一 法律案提出者の説明において、本法の立法事実の一つとして、国旗を損壊等する事案の発生を将来に向かって抑止する必要性が挙げられている。法益の侵害の発生を将来に向かって抑止するという立法事実について、政府の見解を示されたい。また、政府は、法益の侵害の発生を将来に向かって抑止するといういわゆる「予防的立法事実」に基づいて国会に法律案を提出したことはあるのか。提出したことがある場合、その法律案の名称を示されたい。 二 本法の立法事実の一つとされる国旗を損壊等する事案の発生を将来に向かって抑止する必要性について政府はどのように評価するか。 三 日本国憲法第十九条の「思想及び良心の自由」の観点から、本法は合憲であると考えるか、政府の見解を示されたい。 四 日本国憲法第二十一条第一項の「表現の自由」の観点から、本法は合憲であると考えるか、政府の見解を示されたい。 五 法律案提出者は、「表現の自由」との関係を踏まえ、行為の外形から本法の適用を判断するとしているが、国旗を損壊した者がどのような考えを持っていたかを考慮しないことによって、無用に処罰範囲が広がり、逆に「表現の自由」を過度に制限することにつながるのではないか、政府の見解を示されたい。 六 国旗損壊行為はいわゆる象徴的表現行為であり、国旗を損壊する行為そのものが表現内容に当たると考えるが、政府の見解を示されたい。また、こうした象徴的表現行為を罰することは、法律案提出者の主張する本法は表現中立規制であるとの見解に相違して、表現内容規制となり得ると考えるが、政府の見解を示されたい。 七 令和八年七月八日に、法律案提出者から衆議院内閣委員会理事懇談会に提出された資料(以下「衆理事懇資料」という。)では、本法における構成要件該当性の判断例などが示されているが、政府は衆理事懇資料の内容を把握しているのか。 八 衆理事懇資料では、構成要件該当性判断の考え方・具体例について、「方法規制であって、表現やメッセージの内容に着目した内容規制ではない」として、「「日本がんばれ」あるいは「国旗損壊罪反対」という文言によって、構成要件該当性の判断が左右されることはない」とされていると承知しているが、政府は同様の認識をもって本法を運用するのか、政府の見解を示されたい。 九 衆理事懇資料では、本法で定める構成要件に基本的に該当すると考えられる事例・基本的に該当しないと考えられる事例について、基本的に構成要件に該当すると考えられる事例として「あえて、悪天候の日に公道上に国旗を置き、泥や雨でひどく汚す場合」などが挙げられている。また、基本的に構成要件に該当しないと考えられる事例のうち、「社会通念上、国旗国歌法に定める国旗とはおよそ認められないと考えられる事例」として「日の丸の大きさ、位置、彩色から、およそ日章旗とは認識できない旗を損壊等する場合」、「社会通念上、国旗の用に供しているものと認められないと考えられる事例」として「フェイスペイントした日の丸を消す等する場合」、「有体物でないと考えられる事例」として「国旗を全てアバター化して、それが損壊される状況を配信する場合」、「「損壊した」に該当しないと考えられる事例」として「国旗をくしゃくしゃにし、何ら物質的な破壊を伴わない場合」、「「除去した」に該当しないと考えられる事例」として「掲揚されている国旗を何らかの遮蔽物によって瞬間的に遮蔽する場合」、「「汚損した」に該当しないと考えられる事例」として「国旗を新品の靴で踏み、何ら不潔にすることがない場合」、「特定かつ少数の者が認識できるにすぎないと考えられる事例」として「密室の中で配偶者を前にして国旗を損壊等する場合」、「公然性が行為の時に存在しないと考えられる事例」として「非公然空間で撮影された国旗損壊シーンを実写映画の一部として放映する場合」、「「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」に該当しないと考えられる事例」として「日の丸に文字を墨汁で書く場合」等が挙げられていると承知しているが、政府は同様の認識をもって本法を運用するのか、見解を示されたい。 十 衆理事懇資料では、違法性阻却事由の考え方・事例等について、「刑法三十五条に基づき、違法性阻却事由の有無が判断される」とした上で、違法性が阻却される可能性がある場合として「政治デモにおいて、国旗を損壊等する以外の手段では主義主張を伝えることができない状況で行われた行為である場合」、「舞台演劇の中で、国旗を損壊等する情景が欠かせない場面でその情景に相応しい態様で行われた行為である場合」、「映画の公開ロケ等で、撮影現場であることが明らかな状況において、国旗を損壊等するシーンを撮影する場合」が挙げられ、違法性が阻却されない可能性がある場合として「政治的表現や芸術的表現に名を借りて社会的に相当でない態様で行われた行為である場合」が挙げられていると承知しているが、政府は同様の認識をもって本法を運用するのか、見解を示されたい。 十一 本法第二条第二項の「その他の客観的な事情」とは、具体的にどのようなことを指すと政府は認識しているのか、見解を示されたい。 十二 本法の審議において、警察庁は、成立した場合、「通達や執務資料などによりまして第一線の警察官等への周知、徹底を図ることを検討」すると答弁し、七月二十一日の記者会見においては、あかま国家公安委員会委員長が「同法の施行に向けては、国会の御審議を踏まえ、法律の趣旨や内容のほか、適用の検討を組織的に行うことなど、運用上の留意事項について、第一線の警察官等への周知・徹底が図られるよう、警察を指導してまいりたいというふうに考えております。」と述べたと承知している。警察庁が第一線の警察官等への周知のために作成する通達等は、衆理事懇資料の内容を踏まえるという理解でよいか、政府の見解を示されたい。 十三 警察庁が第一線の警察官等への周知のために作成する通達等に示されることとなる、政府における本法の運用に係る解釈を整理した上で、網羅的に示されたい。 十四 政治的表現や芸術表現における国旗損壊行為については、本法の構成要件に該当し得るのか、政府の見解を示されたい。 十五 参議院内閣委員会の「国旗の損壊等の処罰に関する法律案に対する附帯決議」第三項では、「政治的意見表現や芸術表現など「表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利」として正当に保障される国旗への表現やメッセージの記載は第二条第一項の構成要件のうち「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」によるものに該当しないことを遵守して運用すること」とされており、衆議院内閣委員会でも同様の附帯決議が付されている。同項の内容を踏まえると、法律案提出者による「著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法に当たるかどうかの判断というのは、あくまでも行為それ自体の客観的な態様やこれを取り巻く客観的な状況などを考慮して行うものでありまして、芸術活動や政治的デモの一環として行われたという場合であっても、行為の目的は構成要件、該当性を判断する際にこれは考慮されません」などとしてきた国会答弁や、表現の内容によって処罰対象を判断しない内容中立規制であるという国会答弁は矛盾していると考えるが、政府の見解を示されたい。また、政府は同項を踏まえて、本法をどのように運用していくのか、見解を示されたい。 十六 政治的意見の表明については、令和八年七月九日の参議院内閣委員会において、法律案提出者から、仮に本法第二条第一項の構成要件に該当したとしても刑法第三十五条の正当行為等の違法性阻却事由に該当する場合があり得る旨の答弁がされているところである。一般論として、「正当行為」とは具体的にどのようなものを指すのか、また、政治的意見の表明が「正当行為」に当たるのはどのような場合か、見解を示されたい。加えて、国旗損壊罪の適用除外の根拠が刑法第三十五条の正当行為であるとすることが法的な正当性を有するものであるかについて、政府の見解を示されたい。 十七 政治的意見の表明が違法性阻却事由に該当するか否かの判断基準について、令和八年七月九日の参議院内閣委員会において、法律案提出者から、社会通念上相当かどうか、つまり、社会一般に通用している常識や見解に照らして、個別具体的な事案ごとに行為の目的、態様、行われた状況、一連の経過等を踏まえて判断される旨の答弁がなされている。違法性阻却事由の有無を判断するに当たり、社会通念上相当かどうかを基準とするならば、本法第二条第一項の罰則が適用されるかどうかは不明確となり、政治的表現を行おうとする者に不当な萎縮効果を及ぼすのではないかと考えられるが、政府の見解を示されたい。 十八 これまでの質問に述べたように、本法第二条第一項の罰則は構成要件が曖昧であり、日本国憲法第三十一条等が求める罪刑法定主義に反するのではないか、見解を示されたい。 十九 国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、国旗の損壊等の処罰に関する法律の運用において、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときには、国家賠償法の規定により、国又は地方公共団体が損害を賠償する責任があり、この公務員が故意又は重過失であったときは、国又は地方公共団体が公務員個人に対して求償権を有することになると思われるが、その理解でよいか、見解を示されたい。 二十 衆議院内閣委員会では、法律案提出者から「本法案の成立を契機に、国民が自国についての帰属意識、一体感等を抱くことによりまして、国民の気持ちの上での結合、統合の役割を果たすという国旗の意義がますます向上し、今後一層、国旗を大切にするという気持ちが醸成されていく、そして愛国心、国を愛する心も醸成されていくのではないか」との答弁があったが、政府は愛国心の醸成を目的として本法の周知、適用等をする考えはないという理解でよいか、見解を示されたい。 右質問する。 |