質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第八六号

PFI手法による国立劇場の建て替えに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年七月十六日

ラサール石井


       参議院議長 関口 昌一 殿



   PFI手法による国立劇場の建て替えに関する質問主意書

 国立劇場の再整備について、二〇一四年一月三十一日付け東京新聞及び同年二月六日付け産経新聞は、二〇一七年から約三年かけて大規模改修し、二〇二〇年に完成予定と報じた。半年後の二〇一四年七月二十五日付け読売新聞は、東京オリンピック後の二〇二一年度から三年間の解体改修工事に入ることになったと報じた。

 二〇一九年十月に設置された「国立劇場再整備に関するプロジェクトチーム」(以下「PT」という。)は、二〇二〇年三月三十日に「国立劇場の再整備に係る整備計画策定に向けた基本方針」を公表した。同方針には、「国立劇場の再整備については、PFI手法による建替えを念頭に、今後関係者との調整を進めることとする。」と記載されている。

 当初は改修工事が行われる予定だったところ、PFIによる建て替えに変更された理由については明らかにされていると言い難い。また、政府の計画に従って建て替えが行われた場合、従前の国立劇場の文化的・建築史的価値を保持したまま継承できるか疑問が残る。

 森鴎外は「文芸の主義」において、「学問の自由研究と芸術の自由発展とを妨げる国は栄えるはずがない。」と述べている。文化芸術を市場経済の論理に従属させてはならず、従前の国立劇場が担ってきた役割を後代まで引き継ぐべきとの問題意識に基づき、以下質問する。

一 文化庁の「国立劇場の再整備の方向性について(中間報告)」によると、PTは、上野通子文部科学副大臣(当時)の下、文部科学省、文化庁、内閣官房、国土交通省、独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「振興会」という。)により発足したとされている。しかし、PTの経過、議論の具体的内容等は全く明らかにされていない。PTが従前の改修工事計画をPFIによる建て替えに変更した時期及び議論の内容を示されたい。また、市民が議論の経過を確認・検証できるよう、PTの議事録を公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 二〇二三年の国立劇場閉場以降、歌舞伎、文楽、舞踊、邦楽、民俗芸能、琉球芸能、雅楽、声明等がそれぞれの芸能に適していない外部の施設(以下「代替劇場」という。)で公演せざるを得ない状況となっている。こうした現状についての政府の見解を示されたい。

三 「歌舞伎」、「文楽」、「舞踊・邦楽」、「民俗芸能・琉球芸能他」、「雅楽・声明他」の分野別に、国立劇場における二〇一六年以降の各年の公演数及び観客数を示されたい。また、鑑賞教室の公演数及び観客数も同様に示されたい。

四 国立劇場閉場後、代替劇場において公演が行われているが、その公演数及び観客数を、前記三の分野別に示されたい。また、代替劇場における公演について、実演者、スタッフ、観客から寄せられた意見がある場合、特に不便を訴える意見について概要を示されたい。

五 国立劇場閉場に伴う公演数の減少に起因する伝統芸能関係者の収入の変動について、政府は調査を行っているか示されたい。行っている場合、その結果を示されたい。また、著しく収入が減少しているとの結果が得られている場合、伝統芸能関係者に対する生活保障を行う必要性に係る政府の見解を示されたい。調査を行っていない場合、その理由を示されたい。

六 振興会は、国立劇場の閉場に当たり、代替劇場における伝統芸能公演の実施を考えている芸術家に向けた相談窓口を設けている。振興会は、どのような芸術家から、どのような相談を受け、どのような対応を行ったか示されたい。

七 今枝宗一郎文部科学副大臣(当時)は、二〇二三年十一月三十日の参議院外交防衛委員会において、演者を支える大道具等のスタッフへの支援について、「様々な形で支援がしていける」と答弁した。国立劇場閉場の影響を受けたスタッフに対し政府が講じた支援策を具体的に示されたい。

八 振興会が二〇二五年九月二十六日に公表した「国立劇場再整備等事業の実施に関する方針の概略」の添付資料二―六では、建て替え後の国立劇場の普及発信施設として「舞台付きレストラン(仮称)」を設けるとしている。また、二〇二六年三月三十一日に公表した国立劇場再整備等事業入札公告及び入札説明書等の参考資料―二では、「舞台付きレストラン(仮称)」の考え方として、「大劇場・小劇場・演芸場(略)に訪れる観客への飲食提供を行うとともに、観劇チケットを持たない一般の来場者等でも飲食とともに伝統芸能を含む様々なジャンルの日本文化に触れて楽しむことができる施設とする。」、「当該施設では、伝統芸能を基調としながら、伝統芸能以外の音楽、演劇、舞踊、映像など様々なジャンルの日本文化を柔軟に取り扱う予定である。」等の記述がある。

 国立劇場に「舞台付きレストラン(仮称)」を設置することが必要であると判断した根拠を示されたい。あわせて、国立劇場として、伝統芸能以外の日本文化も柔軟に取り扱うことが必要であると判断した根拠を示されたい。

九 国立劇場の建て替えの理由は老朽化であるが、国立劇場、国立演芸場及び国立劇場伝統芸能情報館のコンクリート躯体の劣化診断の結果を示されたい。また、専門家から建築史的価値を評価されている建物をスクラップ・アンド・ビルドすることは、建築文化の軽視であると考えるが、政府の認識を示されたい。

十 振興会は、国立劇場の老朽化の現状として、「廻り舞台や迫りに事故につながりかねない動作不良がときおり発生し、廻り舞台を支えるレールにはひびが入っており、いつ動かなくなっても不思議ではない状態」であると説明している。

 廻り舞台や迫りの現状を調査した事業者を示されたい。また、複数の事業者の意見を聞いた上で、建て替えが必要と判断したのか示されたい。

十一 国立劇場の建て替えは、多量のCO2を排出すると考えるが、政府の認識を示されたい。

十二 振興会は二〇二三年二月、国立劇場再整備等事業の事業者公募に係る入札公告及び入札説明書等を公表したが、同年八月、落札に至らなかったことを発表した。それにもかかわらず、同年十月に国立劇場を閉場した理由を示されたい。また、同事業の実施が確実となった後に閉場すべきであったと考えるが、政府の見解を示されたい。

十三 振興会は、国立劇場再整備等事業の事業者公募に係る入札公告及び入札説明書等を公表するたびに質問を受け付け、それに対する回答を公開している。二〇二二年の第一回入札に対する計三回の質問、二〇二三年の第二回入札に対する計二回の質問及び二〇二六年の第三回入札に対する質問を行った事業者数をそれぞれ示されたい。

十四 振興会が二〇二六年三月に公表した第三回入札説明書では、同年四月から六月頃に現地確認①を予定していたが、申込みがあった事業者数を示されたい。

  右質問する。