質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第七〇号

ジェンダーアイデンティティに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年七月七日

ラサール石井


       参議院議長 関口 昌一 殿



   ジェンダーアイデンティティに関する質問主意書

 性的指向及びジェンダーアイデンティティは人生の初期に決定されるものである。また、性的マイノリティ当事者の性的指向及びジェンダーアイデンティティを精神的介入により変更しようと試みる行為(以下「転向療法」という。)は、効果がないだけでなく、当事者の心身にとって極めて有害であるとの医学的コンセンサスがある。

 二〇〇六年に採択された「性的指向と性同一性に関わる国際人権法の適用に関する原則(ジョグジャカルタ原則)」の第十八原則は、個人の性的指向及びジェンダーアイデンティティは、それ自体が医学的疾患ではなく、治療、治癒又は抑制されるべきものではない旨規定している。また、二〇一七年に採択された「ジョグジャカルタ原則プラス10」の第三十二原則は、全ての人は、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、ジェンダー表現又は性的特徴にかかわらず、身体的・精神的完全性、自律性及び自己決定の権利を有する旨規定している。

 欧州議会は二〇二六年五月、欧州委員会に対して転向療法を犯罪化する法律の制定を求める決議を可決した。これに対し欧州委員会は、加盟国に対する勧告の作成に着手すると回答した。このように、国際人権上も転向療法は人権侵害であるとの認識が強まっている。

 世界保健機関(WHO)の定める国際疾病分類(ICD)において、一九九三年発効の第十版(ICD―10)では、同性愛が病理から削除された。二〇二二年発効の第十一版(ICD―11)では、出生時に割り当てられた性別とジェンダーアイデンティティが一致しない者(以下「トランスジェンダー」という。)のカテゴリーが、「精神及び行動の障害」から「性の健康に関する状態」に変更された。つまり、国際的な医療基準において、トランスジェンダーが精神科領域の治療対象ではないことが明確化された。

 我が国ではICD―11を二〇二七年から適用することを予定している。また、二〇二四年八月に日本精神神経学会・性別不合に関する委員会と日本GI(性別不合)学会が共同で発表した「性別不合に関する診断と治療のガイドライン(第五版)」は、ICD―11に対応して改訂されている。同ガイドラインによれば、精神科領域の治療は転向療法ではなく、精神的ケアと実生活経験(RLE)のサポートが中心となると明記されている。

 一方、二〇二六年六月十六日に閣議決定された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という。)第二章一では、性的指向について「それ自体は治療の対象とはならないとされている。」と記載されている。しかし、ジェンダーアイデンティティについては同様の記載がない。また、「なお、性的指向やジェンダーアイデンティティを自らの意思によって変えることはできない。」との記載があるため、「ジェンダーアイデンティティは自らの意思により変えることはできないが、治療により変えることは可能である」との誤った認識を国民に与えかねない。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 基本計画におけるジェンダーアイデンティティの説明について、性的指向の説明と異なり、「それ自体は治療の対象とはならないとされている。」との記載がない理由を示されたい。

二 政府は、ジェンダーアイデンティティについて、性的指向と同様に「それ自体は治療の対象とはならないとされている。」と認識しているか示されたい。

三 政府は、転向療法について、科学的根拠がなく不適切な医療であり、人権侵害に該当すると認識しているか示されたい。

四 我が国における転向療法の実施状況について、調査を行う予定はあるか示されたい。

五 我が国において転向療法を法的に禁止する予定はあるか示されたい。

  右質問する。