請願

 

第190回国会 請願の要旨

新件番号 1265 件名 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願
要旨  現在、私立大学・短期大学(以下「私立大学」という。)には、大学生・大学院生全体の約七五%に当たる約二百二十五万人が学んでいる。私立大学は、我が国の大学進学率の向上を支え、全国各地で多様な教育・研究を担い、様々な分野で活躍する数多くの人材を輩出するなど、非常に大きな役割を果たしている。しかし、政府は、三十年以上にわたり私立大学に対する補助金(以下「私大助成」という。)を削減し続け、非常に低い水準に抑え込んできた。私大助成総額を学生一人当たりに換算した金額は、僅か十五万円で、国立大学運営費交付金の学生一人当たり金額が百八十三万円であるのに対し、圧倒的に少ない額である。そのため、私立大学の学費は、国立大学の一・六倍と高額であり、初年度納付金は平均百三十二万円にも上る。その上、公的な奨学金制度は全て貸与制であるため、卒業後の返済困難者を大量に生み出す要因となっている。学生と保護者にとって学費負担は非常に重く、学生の多くが学費や生活費を捻出するためのアルバイトに追われている。また、私立大学の教員一人当たりの学生数は国立大学の三倍近くに上るなど、教育環境にも大きな格差が生じている。さらに、地方・中小規模の私立大学を中心に経営状況の悪化が広がっており、教育・研究を支える基盤そのものが揺らぎ始めている。政府が私立大学の経費負担を学生と家庭に押し付け、国立大学の予算も削減してきたために、我が国の高等教育費支出は国際的に見ても極端に低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低の水準である。OECD加盟三十四か国のうち三十二か国が給付型奨学金制度を有しており、十七か国は授業料が無償である。授業料が高額な上に公的奨学金が貸与制という国は日本のみである。日本は世界で学費負担が最も重い国である。その結果、憲法で教育を受ける権利、教育の機会均等が保障されているにもかかわらず、家庭の経済的事情により大学で学びたくとも学べない若者が後を絶たない。学費負担の軽減を求める世論の高まりの中で、政府は、二〇一二年、国際人権規約の高等教育の漸進的無償化条項を受け入れる決定を下した。これにより、政府は、大学の学費無償化に向けて段階的に学費負担を軽減する施策を実施する責務を負うことになった。政府は、今こそ具体的・総合的な政策を立案・実施すべきである。過重な学費負担が一刻も早く軽減されること、私立大学の教育・研究条件が改善・充実され質の高い学びが保障されることを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、私立高校生への学費助成と同様に、私立大学生への学費助成制度を新設すること。
二、大学生を対象とした給付型奨学金制度を新設すること。
三、無利子奨学金を希望者全員が受給できるようにするとともに、奨学金の返済額を卒業後の所得額に応じて決定する制度を実施すること。
四、全ての私立大学で、経済的な理由で修学が困難な学生に対し、授業料減免などの支援を実施できるよう補助を拡充すること。
五、私大助成は、私立学校振興助成法制定時の参議院附帯決議に従って、私立大学の教育・研究の充実や学費負担の軽減を行う上で必要不可欠な経常的経費の二分の一を補助するよう速やかに増額すること。

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