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参議院本会議決議本文

第5回(特別)国会

昭和24年5月11日 
参議院本会議 

観光事業の振興に関する決議

 経済九原則に基づき自立経済を確立することは、日本経済に与えられた至上命令である。
 然るに、戦後貿易の実績は日本経済の実情を如実に反映して極めて悪化しており、これが改善は輸出貿易の現状に鑑み、にわかに期待することができない。ここにおいてこの貿易収支の不均衡を貿易外収入の増強によつて調整し、以て日本経済の再建自立を促進することは、経済九原則の要請に応える最も基本的な方途でなければならない。
 由来、観光事業は国際文化の交流に寄与する文化的使命を担うと共に、貿易外外貨収得事業として極めて重要なる地位と役割とをもつている。幸にもわが国は、戦後なお風光明眉な観光資源に恵まれている。経済的資源の乏しいわが国として、この豊かな観光資源を最高度に活用し、以て外貨の収得を積極的に図ることは、実にわが国戦後の国策でなければならず、さきに内閣に観光事業審議会の設置を見たるもその具現に外ならない。
 然るに、本年度国家予算案をみれば観光事業関係予算は致命的に削減せられ既に現実に外客の来訪を迎えつつあるとき、これを受入れるべき体制のなお整備せられないことを深く遺憾とする。かかる状況において推移するならば、ただに来訪外客に失望と不満とを与えるのみならず観光立国の前途に一大暗影を投ずることは極めて明らかである。
 よつて本院は政府に対し、次のように措置するよう要求する。
 政府は経済九原則に基づく自立経済を確立するため国際収支の改善を図る見地に立ち、万難を排しても外客受入上必要なる施設並びに接遇斡旋の充実のため適当なる施策を講じ速かに本院に報告すること。
 右決議する。