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参議院本会議決議本文

第2回国会

昭和23年5月26日 
参議院本会議 

引揚同胞対策に関する決議

 数百万の海外同胞が本国に帰還し得たことは連合国当局の絶大なる同情によつたものであることを日本国民は深く感謝し、更に七十余万の海外残留同胞を本年結氷期までに是非とも帰還完了せしめられるよう連合国当局に懇請してやまないのである。
 しかしてこれら引揚同胞が速かに正常なる国民生活に復帰することは、国内の現状からして決して容易なことではない。彼等は家も土地も職業も失い、殊に多年海外にあつたために本国に人的関係少く従つて信用もまた薄いために、就職することも企業を起すことも容易なことではない。これを本国にいた国民と同じように待遇したならば、それは非常に大きな差等がつけられる結果になることは明らかである。従つてこの差等を出来る限り少くし、速かに彼等を自立更生せしめることは絶対に必要であり、又連合国の好意に副う所以である。
 よつて参議院は引揚同胞更生のため次の如き対策を積極化すべきことを決意し、政府もまたこの決議に副い善処せられんことを要請してやまない。
 一、引揚同胞対策を合理的に処理するために強力なる審議機関を設置すべきである。
 二、今後の引揚者復員者に対しては帰還の日より一ヶ年間各種の税金を免除すべきである。
 三、引揚者復員者の智識と技術を活かし且つ彼等の希望を達せしめるために、機会を均等にし門戸開放の政策をとる必要がある。これがため勤労希望者には職業を、事業経営希望者には資金資材と企業権を、就農希望者には土地資金と農具を、計画的に配当する措置を講ずると共に、これら引揚者復員者に対する社会保障的制度を設けるべきである。
 四、引揚者の大部分は住宅を持たないから、これらに住宅を与うるために、余裕住宅並びに国有建物の解放等の処置を講ずべきである。少くとも二十万戸の住宅を緊急に建設する必要がある。
 五、引揚者が海外において喪失した財産については、戦争犠牲負担を公平化する原則に基き、国家は出来る限りの方途を講ずべきである。
 六、遺家族、留守家族に対してはその実状に即して、援護を積極的に行うべきである。
 右決議する。