国際関係

外国議会との交流

中華人民共和国全国人民代表大会常務委員会委員長の招待による
同国公式訪問参議院議長一行報告書

    団長 参議院議長 扇  千景
        参議院議員 松田 岩夫
          同     簗瀬  進
          同     山本  保
    同行 国際部長    貞岡 義幸
        秘書課長    藤川 哲史
        議長秘書    宮崎 一徳
        参事       小林 孝明
        警護官      日向  進

一、はじめに

 一九七二年の日中国交正常化以来、参議院と全国人民代表大会(以下「全人代」)は随時相互に議員団を派遣し、意見交換を行ってきた。
 二〇〇五年九月、ニューヨークの国連本部において開催された第二回世界議長会議に出席した扇参議院議長は、同じく出席していた呉邦国全人代常務委員会(以下「常務委」)委員長と今後の日中議会間交流の在り方について意見交換を行った。同年十一月に訪中した角田副議長一行は、呉委員長と会談し、日中間で定期的な議会間交流を行うことの重要性について意見の一致を見た。その後、事務レベルでの交渉を続けた結果、日中間でおおむね合意に達するに至り、今般、呉委員長からの正式な招待を受け、扇議長一行が参議院と全人代との定期交流メカニズムを創設するために、訪中することになったものである。

二、訪問日程

議長一行は、十月十五日に日本を出発し、同月十七日に帰国した。その日程は以下のとおりである。

  十月十五日(日)東京発
             北京着
             路甬祥全人代常務委副委員長との会談
             路甬祥全人代常務委副委員長主催夕食会
     十六日(月) 賈慶林全国政治協商会議主席との会談
             曾慶紅国家副主席との会談
             呉邦国全人代常務委委員長との会談
             「日本国国会参議院と中華人民共和国全国人民代表大会
             との定期交流メカニズム創設に関する覚書」への署名式
             呉邦国全人代常務委委員長主催晩餐会
             内外記者会見
    十七日(火) 北京オリンピック関連施設視察
             扇議長主催答礼昼食会
             胡錦濤国家主席との会談
             北京発
            東京着

三、中華人民共和国訪問概要

 扇議長一行は、参議院と全人代との定期交流メカニズムを正式に創設するために訪中した。具体的には、扇参議院議長と呉邦国全人代常務委委員長とによって覚書への署名が行われたが、その前後には、胡錦濤国家主席をはじめ中国共産党内の序列上位に位置する要人と、相次いで会談することとなった。扇議長一行の本訪中は、中国国内においても、安倍総理の訪中をフォローし、今後の日中関係の発展に大きく寄与するものとして受け止められており、新聞、テレビ等を通じて大きく報じられた。以下、覚書の署名式を含め、各要人との会談の内容を中心に報告する。
(一)呉邦国全人代常務委委員長との会談
 まず、呉委員長より、「今回の扇議長一行の訪中は、安倍総理訪中直後という重要な時期に行われたものとして、中国側としても大変重視しており、心から歓迎したい。」との発言があった。
 扇議長からは、まず、「昨年九月、国連本部で開催された世界議長会議における呉委員長との意見交換を受け、参議院と全人代との定期交流メカニズムを創設し、二十一世紀の両国議会間交流の新たな一頁を開きたいとの思いで、各党代表と共に訪中した。スピード感をもって交流メカニズムを作動させたく、第一回の会議は年内にも開催したい。」との発言があり、続いて、松田議員、瀬議員及び山本議員が順にあいさつを行った。さらに、扇議長より、「先般、安倍総理と胡錦濤主席との間で友好的なトップ会談が実現したことは意義深い。北朝鮮を孤立させず、その非核化を実現することが、北東アジアのみならず、世界の平和と安定にとって不可欠である。そのためには、日中両国のきずなを強め、あらゆる分野で協力関係を発展させていくことが必要である。」との発言があった。
これに対して、呉委員長は、「中国としても安倍総理の訪中を積極的に評価するとともに、日中共に関心を有する諸問題について、広範な認識の一致を達成したことを喜んでいる。新しい世紀の日中関係をより高い次元へと進めていくために、幾つかの点を強調したい。第一に、二国間関係を超えた戦略的かつ全局的視点の必要性。第二に、両国間で交換された三つの政治文書において確立された原則に基づく、歴史問題及び台湾問題の適切な処理。第三に、経済、環境、文化、観光等各分野における実務的な交流及び協力の一層の推進。第四に、朝鮮半島の平和と安定といった地域的な問題や国際問題についての両国間の対話と協力の促進。第五に、議会間交流の強化、特に若手議員の交流の必要性。第六に、戦後日本の平和発展への積極的評価を踏まえた上での周辺諸国を含めた善隣友好関係の進展、である。なお、第一回会議を早急に開催したいとの要望については、積極的に検討したい。」と述べた。
これを受け、扇議長から、「参議院議員の任期は六年であり、解散もないことから、長期的ビジョンを必要とする政策課題、特に外交問題に取り組むことを重視している。経済的相互依存関係が深まっている中で、いつまでも『政冷』では困ることから、様々な課題について議員交流の場で取り上げていきたい。」との発言があった。
最後に、経済成長と環境問題との関係、都市部と地方との格差の問題等について意見交換がなされた後、和やかな雰囲気の中で会談は終了した。
(二)「日本国国会参議院と中華人民共和国全国人民代表大会との定期交流メカニズム創設に関する覚書」の署名
 扇議長と呉委員長との会談後、直ちに席を移して標記覚書の署名式が執り行われた。扇議長と呉委員長は日中両言語で書かれた覚書に署名し、日本側議員一行及び全人代の主要委員が立ち合い、本署名を見守った。引き続き参加者全員で乾杯し、署名式は無事終了した。なお、本覚書全文を報告書の末尾に添付する。
(三)胡錦濤国家主席との会談
 冒頭、胡主席より、「今回の扇議長一行の訪中は参議院と全人代との間の理解と友好増進、ひいては日中両国関係の改善と発展に寄与するものと信ずる。」との発言があり、これを受けて扇議長から、「中国は二〇〇八年に北京オリンピック、二〇一〇年には上海万博の開催を控えている。今朝、オリンピック会場を視察したが、環境重視の調和のとれた工事計画に敬意を表するとともに、日本としてもできるだけの協力を行いたい。日中関係は『政冷経熱』と称されてきたが、自分は少なくとも『政暖経熱』にすべきと考えていたところ、安倍総理と胡主席とのトップ会談の後、『政経』が共に『熱』になる状況が出てきたと信じたい。また、北朝鮮の核実験実施の発表の前に日中両首脳の会談が行われ、国連安保理等の場で日中の緊密な連携がなされたことを高く評価する。特に、北朝鮮が無条件に六者会合の場に戻るよう、中国の指導力の発揮をお願いしたい。中国では調和のとれた社会の構築を今後の目標とされたと聞いているが、日中間においても真に調和のとれた友好関係が構築されることを願っている。」との発言があった。
 これに対し、胡主席からは、「国交正常化以降、双方の共同努力により、日中関係は長足の発展を遂げてきた。安倍総理との間では率直で誠意のこもった対話を行い、戦略的な高い観点と長期的な視点から日中関係をとらえ、平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という大きな目標を堅持し、二十一世紀における日中の戦略的互恵関係の構築のために努力することで意見が一致した。その際、日中間の政治的相互信頼関係の強化、環境保護等の分野を取り込んだ経済的互恵協力の深化、政府、議会、民間、地方等広範なレベルでの人的往来の拡大、国際問題特にアジア地域の問題における意思疎通の進展と協力枠組みの構築、という四点の提案を行った。議会間交流は、日中関係の改善と発展にとって、独自の役割を果たしてきた。参議院と全人代との間で定期交流メカニズム創設に関する覚書が署名され、新たなプラットフォームが構築されたことに祝意を表する。双方の努力によって、雨が上がって晴れ間が広がり、『政経両熱』の状況が生ずることを希望する。北朝鮮の核実験については、中国政府は断固たる反対を表明し、国連安保理の決議採択も支持した。北朝鮮に対しては、国際社会の強烈な反応を感じさせる必要があると同時に、各国は協力して冷静に対応し、六者会合の早期再開を実現させるとともに、朝鮮半島の非核化という目標を実現させるべきである。」との発言があった。
最後に、扇議長が「明年は日中国交正常化三十五周年という記念すべき年であり、胡主席に訪日していただきたい。」と述べたのに対し、胡主席も、「中国人民の友好的な感情を日本国民に伝える機会を心待ちにしている。」と述べ、会談は終了した。
(四)賈慶林全国政治協商会議主席との会談
 冒頭、賈主席より、二〇〇二年の日中国交正常化三十周年の折、当時国土交通大臣であった扇議長が一万三千人規模の日中交流事業を組織して訪中したことに言及しつつ、今回の訪中を心から歓迎する旨述べたのに対し、扇議長から、「日中間で四百万人を超える人々が往来する時代となっているにもかかわらず、政治が冷めきっていると評されていたことに、残念な思いを抱いていた。安倍総理の訪中によるトップ会談の成功を後押しし、根を広げ、関係を推し進めたいとの気持ちで今回訪中した。お互いの間に問題を抱えている時にこそ対話を進める関係を構築すべきであり、今回の訪中団が両国関係の発展に一役買うことができれば幸いである。今回の訪中は、結果的に北朝鮮に対する国連安保理決議の採択と一致したタイミングで実施されることになったが、重要なのは、むしろ決議採択後のこれからの我々の行動である。制裁ばかりではなく、北朝鮮が可及的速やかに六者会合に復帰するよう働きかけを強めることが必要である。中国はこうした行動の先頭を走っており、六者会合プロセスを推進し、東アジアの安定と世界の平和を実現させていくために、我々は中国に期待と希望を有している。」との発言があった。
 これを受けて、賈主席より、「安倍総理の訪中は、各分野における日中間の交流と協力に好機を提供した。今後はこれをより高い次元へと引き上げていくことが必要である。政治的には、日中間でのハイレベルの相互訪問を継続させることによって相互信頼のきずなを強め、また、経済的には、ハイテク、省エネ、環境保護等の分野に重点的に取り組むべきである。さらに、文化交流や人的往来の領域においても、相互理解や友好的感情の増進に努めるべきである。東シナ海の問題については、共同開発という目標を目指して、協力と対話を通じて解決すべきであり、両国の政治関係に影響を及ぼすようなことがあってはならない。朝鮮半島の核問題については、中国の立場は一貫して明確である。すなわち、対話を通じて朝鮮半島及び北東アジアの平和と安定を実現することであり、北朝鮮への制裁は、目的ではなく、手段である。」との発言があった。
 以上を踏まえ、最後に扇議長より、「日中両国は極めて近い距離に位置する隣国であり、政治家同士が頻繁に会い、相互の信頼関係を強化すべきである。戦後、日本は経済大国として発展してきたが、同時に様々な問題を派生させてきた。中国も現在同様な状況に直面しており、日本の経験を活用してもらうためにも、日中両国間で交流、協力すべきである。いずれにせよ、問題があるときにこそ、両国の政治家が率直に話し合える関係を構築しておくことが必要である。」との発言がなされ、会談は終了した。
(五)曾慶紅国家副主席との会談
 冒頭、曾副主席より、議長一行の訪中を歓迎するとともに、扇議長との四年振りの再会をうれしく思う旨の発言があったことを受け、扇議長は、「日中国交正常化三十周年記念の訪中時と同じく、この人民大会堂で再会できてうれしく思う。日中関係は近年『政冷経熱』と呼ばれてきたが、政治家にとって『政冷』と言われることは、極めて残念なことである。二十一世紀を見据え、子々孫々まで日中友好関係が続くことを心から願い、『政経』共に『熱』とするために努力したい。安倍総理は就任後最初の訪問国として中国を選んだが、これは日本がいかに中国との関係を重視しているかを示すものである。日中のトップ同士の会談は、二十一世紀における日中関係の重要な第一歩となるものであり、自分はこの熱が冷めないうちに、そしてこの熱を確認するために訪中した。日中間で毎年多数の人の往来があるにもかかわらず、政治が熱くならないのはうそである。そのためにも、参議院と全人代との定期交流メカニズムを創設し、両者の関係強化を一層推進するつもりである。」と述べた。
これに対して、曾副主席より、「日中両国は一衣帯水の隣国であり、また、長い交流の歴史を有する。特に、国交正常化以降、両国の多方面にわたる関係は大きく進展した。中国は今回の安倍総理の訪中を極めて重視し、『共同プレス発表』では多くの共通認識が確認され、日中間の政治面でのこう着した局面を打開し、両国関係を正常な発展の軌道に乗せることに成功した。両国の友好関係を一層発展させるため、『一つの大局と三つの基礎』ということを言いたい。『一つの大局』とは、日中間において子々孫々に至るまでの友好を図るという大局である。『第一の基礎』とは、三つの政治文書に基づく政治的基礎を強化することである。『第二の基礎』とは、両国国民間の感情の基礎を発展させ、相互理解を増進させることである。『第三の基礎』とは、相互の共通利益の基礎を拡大し、Win―Winの結果をもたらすことである。中国は平和発展の道を選択しており、世界各国との間で友好協力関係を強化したいと考えている。特に、日中両国は相互補完性が強いことから、互いに良き隣人、良きパートナーとなることができる。北朝鮮問題については、中国は北朝鮮の核実験に反対であり、国連安保理決議を誠実に履行する一方、あくまでも冷静な対応を行い、状況をエスカレートさせないようにすべきと考えている。この面において、日中両国間における協議と協力が不可欠である。」との発言があった。
 これを受けて、扇議長より、「隣国による核実験は、サッカーにおけるフーリガンのようなものであり、北京オリンピックと上海万博という大きな祭典の実施が危険視されるような状況は絶対に避けなければならない。そのためにも、六者会合を早期に再開し、北朝鮮の非核化と北東アジアの安全を確立する必要がある。」との発言があったところ、曾副主席からも両祭典を経験している日本の指導と協力を願う旨の発言があり、会談は終了した。
(六)路甬祥全人代常務委副委員長との会談
 まず、路副委員長より、全人代として議長一行の訪中を歓迎し、今次訪問を通じて日中両国の立法府間の友好協力関係が強化されることを希望するとの発言があったのに対して、扇議長より、「昨年の九月、国連本部において開催された世界議長会議の際に呉委員長と意見交換を行い、日中両国の友好協力関係の強化、参議院と全人代との交流の促進について意見が一致したことが、今回の訪中につながった。日中のトップ同士の会談を受け、それに輪をかけ、小さな玉が転がり始めるとどんどん大きくなるように、自分たちの役割を果たしたいとの思いで訪中した。北朝鮮による核実験実施の発表後一週間以内に国連安保理が全会一致で決議を採択したことは、日中首脳会談の成果の現れである。その上で、決議採択後の行動こそが重要であるとの認識の下に、今後とも日中間での連絡と協力を密にし、東アジアの平和維持のために共に努力していきたい。」との発言があった。
 これを受けて、路副委員長より、「日中両国は、地理的にも近接していると同時に、長い交流の歴史を有している。胡主席も繰り返し述べているように、両国は互いに不可欠の存在であり、和すれば双方に利益をもたらし、闘えば双方が傷つく。安倍総理訪中の際の各会談においては、両国のハイレベルの指導者間での頻繁な対話が必要であること、両国間の健全な友好協力関係の進展は、東アジアひいては世界の平和と安定に寄与するものであることについて、意見の一致を見た。両国立法府間の交流は、日中友好協力構築のための重要な要素である。全人代としては、参議院との交流を大変重視しており、専門分野や年代を考慮した多チャンネルの人的交流を促進すべきと考えている。」との発言があった。
 これに対して、扇議長より、「参議院は任期六年で解散はなく、国の長期ビジョンを策定していく上でふさわしい立場にある。特に外交問題には力を入れており、今回は全人代との交流を深める目的で訪中した。中国の経済発展は日本経済にも好影響を与えているが、さらに北京オリンピックや上海万博という大きな行事が控えている。それらが成功裏に実施されることを隣国として祈っている。そのためにも、日中両国で北朝鮮の動きを注視し、緊密に協力していきたい。」との発言があった。
 最後に、路副委員長より、「中国の平和発展は世界の経済発展の原動力を提供することができる。その際、様々な分野での法的整備の問題が重要である。したがって、立法府の果たす役割は大きく、当然、立法府間の交流の意義も大きい。」との発言があり、会談を終了した。
(七)内外記者会見
 扇議長一行は、今回の訪中の目的を踏まえ、各会談の成果等を発表すべく、内外記者との会見を行った。
 冒頭、扇議長より、参議院と全人代との定期交流メカニズム創設に至る経緯の説明がなされた後、「安倍総理は就任後最初の外国訪問先に中国を選び、胡錦濤国家主席との会談を行った。参議院と全人代との定期交流メカニズム創設のための我々の訪問は、このトップ会談の駄目押しをするという意味があるとともに、中国が進めようとする『調和のとれた社会』の建設という課題に対応して、日中関係を調和のとれた友好関係に発展させていくという点で、重要な意義があると考える。」との発言があった。
 引き続いて質疑応答に移り、日本及び中国の各記者より、議会間交流の役割と今回の訪中の意義、北朝鮮情勢と核問題への取組方、歴史問題への言及と議論の内容等についての質問がなされたところ、扇議長からの回答に加えて、松田議員、瀬議員及び山本議員それぞれより追加説明が行われ、会見は終了した。
(八)北京オリンピック関連施設視察
 北京オリンピックのメイン会場となる、建設中の国立競技場の視察を行った。まず、劉敬民北京市副市長兼オリンピック実行委員会常務副主席から概要説明がなされ、続いて展示された模型に基づいて各関連施設の説明が行われた。特に、今回のオリンピック施設の建設においては、環境への十分な配慮がなされると同時に、北京市の中心線上の北に広大な五輪緑地公園を置くほか、大会後の施設有効利用の推進など、都市政策にも十分意を払った上で進められていることが強調された。続いて、同競技場の建設現場を視察したところ、別名「鳥の巣」と呼ばれるユニークな外観を持つ競技場は、工程が順調に進んで七~八割方の完成水準に達しており、総面積二十五万八千平方メートル、収容人員九万一千席にも上る巨大な姿を見せつつあることから、現場においても活発な質疑応答が行われた。

四、おわりに

今回の扇議長一行の訪中は、日中間の政治関係が冷え込んでいると言われ続ける中、安倍総理と胡錦濤国家主席とのトップ会談が実現した直後に行われたものであるが、その実、昨年九月の世界議長会議における扇議長と呉邦国全人代常務委委員長との意見交換、同年十一月の角田副議長の訪中を受け、周到な準備の下に実施されたものである。
 既述したように、参議院と全人代との定期交流メカニズムの創設に関する覚書が署名されたことに加え、短い滞在期間であったにもかかわらず、中国側の全面的な協力により、胡主席をはじめとするハイレベルの要人との会談が相次いで実現し、実り多い訪問となった。今回の訪中によって、日中間の「政冷」と言われた関係が、「政暖」さらには「政熱」へと発展していくものと確信している。
 御尽力いただいた関係各位に心より感謝申し上げるとともに、今後の日中関係の一層の発展を祈念して結びとしたい。

(参考)

日本国国会参議院と中華人民共和国全国人民代表大会
との定期交流メカニズム創設に関する覚書
二〇〇六年十月十六日、扇千景日本国国会参議院議長と呉邦国中華人民共和国全国人民代表大会常務委員会委員長は、北京において会談を行い、日本国国会参議院と中華人民共和国全国人民代表大会(以下「全人代」という。)との間で定期交流メカニズムを創設することで意見の一致をみた。
 両者は、あらゆる分野における一層の交流と協力が日中両国国民にとり基本的利益をもたらすことを確信する。中でも、議会間交流は、両国間関係の重要な部分を構成するものであり、議会間交流の強化が相互理解と信頼の増進に役立ち、かつ、両国間の協力を拡大すると考える。双方間の定期交流メカニズムの創設は、この目的を実現するための有効な基盤を提供するものである。
 日本国国会参議院と全人代(以下「双方」という。)は、以下の項目につき一致した。
一、定期会合
1.双方は、二国間関係、国際問題や地域問題、国際社会における両国の役割と協力等に関して意見交換を行う定期議員会議を実施する。
2.上記会合は、一年に一回、両国交互に開催する。また、必要に応じて、双方の協議を経て会議回数を増やすことができるものとする。
3.定期議員会議に参加する議員団の団長は、参議院側は参議院が設置する日中交流議員団の団長とし、全人代側は全人代常務委員会副委員長とする。代表団の規模は、それぞれの議会が決定する。
4.会議の議題は、会議開催一か月前までに外交経路を通じる等の方法により決定する。
5.会議の内容についての議事録は、自由な意見交換を行うため、作成しないこととする。ただし、会議の内容について、双方で調整した上で、それぞれが記者発表することを妨げない。
二、双方は、両議会が委員会、友好議員グループ及び事務機構の間の相互訪問と交流を行うことを支持、奨励する。
三、相互訪問に必要な費用は、予算の範囲内で相互主義に基づいて協議決定する。
四、両議会間の定期的な連絡を維持し、会議の円滑かつ効果的な運営を行うため、両議会に事務担当を置く。
五、相互理解と協力強化のため、立法その他に関する資料及び刊行物を互いに提供する。

      日本国国会参議院議長 扇  千景
      中華人民共和国全国人民代表大会
        常務委員会委員長 呉邦国