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欧州評議会議員会議・第13回経済協力開発機構(OECD)活動拡大討議派遣報告

 本代表団は、2004年10月5日及び6日の2日間、フランス、ストラスブールで行われた欧州評議会議員会議・第13回経済協力開発機構(以下、「OECD」という。)活動拡大討議出席のため、同国を訪問した。

1.日本国会代表団の結成等

 参議院代表団は、9月27日、衆議院代表団(保利耕輔議員及び川内博史議員)とともに、日本国会代表団を結成し、東京において会議の議題に関し外務省及び内閣府から説明を受けた。また、日本国会代表団は、派遣地のパリ及びストラスブールにおいて、登OECD代表部大使及び庄司在ストラスブール総領事からそれぞれ全般的な説明を受けたほか、OECD活動に関する決議案に対し、7本の修正案を提出するなど鋭意準備を行った。

2.日本国会代表団の活動の概要

 日本国会代表団は、会議期間中、拡大経済・開発委員会及び本会議におけるOECD活動拡大討議への出席のほか、本会議での欧州評議会加盟国のテロ対策討議の傍聴、デイヴィス欧州評議会事務総長主催朝食会への出席、シーダー欧州評議会議員会議議長及びシュローグルOECD事務次長への表敬訪問、キリロフ経済・開発委員会委員長主催夕食会への出席、政治委員会非加盟国関係小委員会との昼食懇談会への出席等、多岐にわたる活動を行った。

(1)拡大経済・開発委員会(10月5日午前)
 冒頭、キリロフ委員長より決議案を議題とする宣告が行われ、続いて報告委員であるアテシュ議員(トルコ)より、決議案の概要について説明がなされた。なお、事前に日本、ポーランド、議員会議文化・科学・教育委員会からそれぞれ修正案が提出され、委員会ではこれらの修正案を中心に、決議案の逐条審議が進められた。
 日本から提出された7件の修正案に関する審議は、おおむね次のとおりである。
(a)第4パラグラフ(米国・ユーロ圏の財政金融政策)
 大塚議員より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 決議案に、「日本に関しては、財政赤字の対GDP比がOECD地域において最悪の状況が続いているほか、現在の経済活動が、前例のない超金融緩和政策と、米国、中国等への輸出に過度に依存していることに対し、強い関心を抱いている。中国については、国内経済に極端な地域的不均衡や貧富の拡大傾向を抱えていることや、好調な輸出が実勢と乖離した自国通貨価値に依存していることに対し、今後の改善余地が大きいものと認識している。」との記述を追加することを提案する。日本は、2003年度末の長期債務残高が対GDP比1.4倍に拡大しており、プライマリーバランスの改善が急務である。また、堅調な経済活動が、前例のない超金融緩和政策と、中国等への輸出に過度に依存する外需に支えられていることに対し、日本代表団として強い関心を抱いている。一方、中国は最近高い経済成長を実現しているが、国内には地域的不均衡を抱え、貧富の差が拡大する傾向にある。また、中国の好調な輸出は実勢と乖離した中国元の為替レートに依存していることに注意する必要がある。過熱気味の中国経済が、今後、ソフトランディングを達成するため、同国の抱える課題の改善を期待する。
 これに対し、アテシュ報告委員より、日本案は一部字句の修正とともに決議案の後に追加するとの提案がなされ、本修正案は、報告委員の提案を反映した上で異議なく採択された。
(b)第7パラグラフ(原油価格の高騰)
 舛添団長より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 原油価格の高騰要因に、「サウジアラビア、ロシア及びナイジェリア」における困難な状況と「投機資金の急激な移動」を追加することを提案する。原油価格の高騰要因として、イラクにおける困難な状況に加え、テロ行為の攻撃の対象になっているサウジアラビアにも言及する必要がある。また、ユーコスの国営化問題を抱えるロシア、世界第7の石油生産国であるナイジェリアの政治的問題の発生も念頭に置く必要がある。さらに、石油に対する投機活動、投機資金の流れも懸念要因である。
 これに対し、アテシュ報告委員より、サウジアラビア、ロシア及びナイジェリアの状況については慎重な言及が必要であるので、決議案の一部を「投機相場、石油施設に対するテロ行為、イラク、サウジアラビア、ロシア及びナイジェリアにおける様々な問題」とするとの再修正案が提案され、本修正案は、報告委員の提案を反映した上で異議なく採択された。
(c)第10パラグラフ(環境問題への対応)
 舛添団長より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 決議案に、「また、拡大議員会議は、今後のエネルギー問題を考慮した場合において、持続可能な開発と環境保全を両立させるため、OECD加盟国が率先して、循環型社会への転換を一層促進させるとともに、核融合エネルギーに代表される新たなエネルギー源に関する技術開発を強化し、再生可能エネルギーが秘める可能性についても追求するよう奨励する。」との一文の追加を提案する。先進国によるエネルギーの節約と循環型社会への転換、そして技術開発による新たなエネルギー源の研究は重要である。この背景の下、核融合エネルギーも取り上げる必要がある。
 本修正案は異議なく採択された。
(d)パラグラフの新設(知的財産制度の改革)
 大塚議員より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 第11パラグラフの後に、「拡大議員会議が、特に留意しなければならないことは、世界経済の中の知的財産権の分野である。インターネットが高度に発達した21世紀は、『世界のすべての人々がクリエイター、すべての人々がユーザー』の時代であると言われている。急速に進展するデジタル化・ネットワーク化に対応する知的財産制度の改革は、権利者(アーティスト・クリエイター)と将来のアーティスト・クリエイターを含む消費者・利用者の立場を最優先にして行われることが、持続可能な成長へと世界経済を導くであろう。そのためには、制度改革が産業界による市場支配の口実として用いられる危険性に対して常に警戒を怠らず、文化的・技術的所産を提供する側の人々と享受する側の人々が、国家間の関係を含めて、相互に信頼しあえる関係を築くための制度改革実現に取り組むべきである。」とのパラグラフの追加を提案する。知的財産制度の改革は、その権利者と消費者・利用者の立場を最優先に行われることが世界経済の発展にとって重要である。
 本修正案は異議なく採択された。
(e)第11パラグラフ(グローバリゼーション)
 荒木議員より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 末尾に「かかる文脈において、拡大議員会議は、OECDにおける『拡大・アウトリーチ』戦略策定の重要性を認識し、開発部門の活動を歓迎するとともに、今後の更なる発展を奨励する。」を追加することを提案する。OECDが開発途上国の発展のために更なる貢献を行うことが重要であり、拡大議員会議としてOECDが開発部門の活動を積極的に推進するよう要請する必要がある。
 本修正案は異議なく採択された。
(f)第12パラグラフ(OECD拡大・アウトリーチ戦略)
 荒木議員より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 決議案に、「(拡大戦略)を含むOECD改革パッケージ」の文言を追加することを提案する。OECD閣僚理事会で、意思決定の迅速化に向けた加重投票制度の一部導入、予算の加盟国分担率算定方式の改訂等を含む改革パッケージが承認されており、拡大戦略を含むOECD改革について言及の必要がある。
 本修正案は異議なく採択された。
(g)パラグラフの新設(国際紛争とテロ拡散への対応)
 大塚議員より、次のとおり提案理由説明がなされた。
 第12パラグラフの後に、「拡大議員会議は、国際紛争とテロの拡散が国際社会や市民生活にとって深刻な脅威となり、同時に世界の経済発展のために大きな障害となっていることを、明確に認識する。世界経済の発展及び人類の幸福のためには、国際紛争やテロの根絶が不可欠である。拡大議員会議は、OECD加盟国を始めとする国際社会全体に対して、国際紛争やテロの背景に存在する複雑な諸問題を、平和的手段によって、できる限り早急に解決するために、その対策に邁進することを要請する。」とのパラグラフの追加を提案する。テロに関して包括的な姿勢を示し、国際紛争やテロの背景に存在する諸問題を平和的手段により解決する対策が必要である。
 本修正案は異議なく採択された。
 最後に、パパドプロス委員長代理からの「モナコの欧州評議会加盟により、決議案中の欧州評議会の加盟国数45か国は46か国になる」との発言も踏まえ、すべての修正部分を含む決議案全体について採決が行われ、決議案は全会一致で採択された。

(2)OECD活動拡大討議(本会議:10月6日午後)
 冒頭、議長より議事についての説明と、日本等の欧州域外のOECD加盟国の参加を歓迎する旨の発言がなされた。次に、アテシュ報告委員から報告書「OECDと世界経済」について説明が行われ、社会・保健・家族委員会、文化・科学・教育委員会、環境・農業・地域問題委員会から意見が述べられた。
 続いて、シュローグルOECD事務次長が演説し、グローバル化した世界においてOECDがアジア、欧州との間で橋渡し役を担うことが重要であるとの認識を示した。また、中国の成長が減速したとしてもソフトランディングを期待していること、原油価格は予測よりも高騰しているが永遠にこのような高水準にとどまるとは思われないとの発言を行った。さらに、サービス部門の雇用のアウトソーシング化による失業問題が政治的不安要因となっていること等について言及された。
 続いて、23人の各国代表議員による演説が行われた。日本代表団を代表して、保利衆議院議員が、世界経済の現状、日本経済の現状と課題及び今後の世界経済と日本等について演説を行った。これらの演説を受けて、シュローグルOECD事務次長から、多くの発言に対する謝意が示されるとともにコメントが述べられた。
 続いて、アテシュ報告委員とキリロフ経済・開発委員長より、それぞれこれまでの討議に対するコメントとOECD活動拡大討議を通じた欧州評議会による取組みについて見解が述べられた。
 最後に、委員会から上程された決議案が採択に付され、日本代表団の各議員も採決に加わった。採決の結果、決議案は全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。

(3)表敬訪問等
(a)デイヴィス欧州評議会事務総長主催朝食会(10月5日午前)
 冒頭、日本国会代表団を代表して、保利衆議院議員より、朝食会への招待に対し謝意が示されるとともに、欧州評議会の民主主義、法の支配及び人権問題に関する活動に心から敬意を表し、この度の事務総長就任に当たり、今後の活躍を期待し、成功を祈っている旨の発言があった。
 これに対し、デイヴィス事務総長より、日本国会代表団の訪問を歓迎するとともに、欧州評議会に対する財政面での日本の貢献を高く評価し、テロ対策での日本と欧州評議会との協力、日本の積極的な貢献を期待する旨の発言があった。
その後、欧州復興開発銀行に関する討議への日本の参加、死刑廃止問題等が話し合われた。
(b)シーダー欧州評議会議員会議議長表敬(10月5日午後)
 冒頭、シーダー議長より、日本国会代表団の参加を歓迎するとともに、昨年の訪日に際しての歓迎に対する謝意と訪日による交友関係の深まりの意義について発言があった。
 これに対し、保利衆議院議員より、経済・開発委員会の討議では日本の修正案7件を採択していただきうれしく思う、欧州評議会と日本との関係が更に深まるよう努力する旨の発言があった。
(c)シュローグルOECD事務次長表敬(10月6日午前)
 冒頭、保利衆議院議員より、経済・開発委員会における日本の修正案7件が採択されたことへの謝意が示された。また、日本経済はまだ本格的な回復基調とは言えないが、今後、日本が世界経済の発展のために貢献できる努力を行いたい旨の発言があった。
 シュローグル事務次長より、OECDも日本の政府、経済界、国会議員との交流を光栄に思う、産業構造の製造部門からサービス部門への移行等について日本と協力して研究を進めたい旨の発言とともに、日本経済の現状に関する認識について質問がなされた。これに対し、大塚議員より、日本の景気回復は好調な輸出と設備投資に支えられているが、個人消費は将来不安等から力強さに欠けているとの発言があった。
 舛添団長からは、中国及びインドのOECD加盟についての見解と中国の加盟による日本や加盟国との関係について質問がなされた。これに対し、シュローグル事務次長より、OECDの拡大戦略について一般的に慎重に取り組むべき課題であるとの認識が示され、中国のOECD加盟は日本のほか欧米諸国に影響を及ぼすことが考えられるとの発言があった。
 荒木議員からは、日本のOECDへの拠出金に対してOECD専門職員に占める邦人数が少なく、積極的な邦人登用を望む旨の発言があった。これに対し、シュローグル事務次長より、その現状は認識しており改善すべく真剣に取り組んでいる旨の発言があった。
 続いて、大塚議員より、日本経済を始め世界経済において長期的な構造変化が起こっている可能性があり、この観点から加盟国の経済政策に対する提言をOECDには希望するとの発言があった。これに対し、シュローグル事務次長より、これまで情報技術革新の進展など構造変化が結果的に価格の安定化につながる幸運な要素もあったが、原油価格の高騰など、今後はその恩恵が失われる可能性もあるとの発言があった。

3.終わりに

 本代表団は、ストラスブールの欧州評議会議員会議でのOECD活動拡大討議参加の途次、ドイツ・フランクフルトにおいて、トゥンペル・グッゲレル欧州中央銀行理事と会見し、また、帰路のパリではOECD本部で行われたコーポレート・ガバナンスに関するハイレベル議会セミナーに出席するなど、積極的な活動を行った。最後に、本代表団のために種々の便宜を図っていただいた関係各在外公館や欧州評議会議員会議事務局の関係各位に対し、心より御礼申し上げ、本報告を終える。

【別添】

決議第1401号「OECDと世界経済」
(2004年10月6日採択)

1.OECD(経済協力開発機構)及び欧州評議会の加盟国議会代表団から構成される拡大議員会議は、同経済・開発委員会が作成した報告書及びその他の各種委員会からの意見書に基づき、世界経済に関連する最近のOECD活動について検討した。

2.拡大議員会議は、米国、日本、中国、東南アジア、及びロシアを含む中東欧の幾つかの国々による堅調な経済活動に支えられながら、OECD加盟国の大部分、さらには世界全般に健全な経済成長の回復が広がっていることを歓迎する。

3.この回復は、ユーロ圏内の主要経済にとっても、より高い経済成長の助けになっているが、ユーロ圏では、依然として消費者や投資家のためらいが確固たる景気回復の妨げとなり、経済の自由化及び競争増大へと導く構造改革が不十分であることが、潜在的経済成長を制限し続けている。欧州連合(EU)域内、また拡大欧州にとっては、例えば、新興企業のために官僚主義を徹底的に取り除くこと、欧州特許庁を現在よりも所管を広くし、手続を合理化し、真に汎欧州的な機構に変えることなど、2000年のEUリスボン戦略に沿って、イノベーションと起業家精神を支持するため更なる努力をすることが不可欠である。

4.しかしながら、拡大議員会議は、米国経済が過熱感を帯びつつあり、その結果として米国が財政赤字を縮減し、現時点で歴史的低水準にある政策金利を引き上げる必要性が生じるとの見通しに対し、懸念を抱いている。逆に、金利引下げで成長を加速できるユーロ圏においては、一層の金利引下げの必要性が考慮されるべきである。米国が極めて多額の経常赤字を徐々に削減し、また、米国社会において貯蓄を高めることにより、経済、特に対外投資に関してより力強い方向に軌道修正することに成功するならば、世界経済にとっても非常に重要な意味を持つであろう。

5.日本に関しては、拡大議員会議は、財政赤字の対GDP比がOECD地域において最も高い状況が続いているほか、現在の経済活動が、前例のない超金融緩和政策と、米国、中国等への輸出に過度に依存していることに対し、強い関心を抱いている。中国については、拡大議員会議は、国内経済に極端な地域的不均衡や貧富の拡大傾向を抱えていることや、好調な輸出が実勢と乖離した自国通貨価値に依存していることに対し、改善余地が大きいものと認識している。

6.OECD地域においてますます格差が広がり、貿易不均衡、異なる通貨間の緊張、及び保護主義的な措置の要求へと導く可能性があり、新たな懸念となっている。OECDは、より均等かつ持続的な経済発展の速度が世界規模で生じるように、加盟国内外での経験を恒常的に交換することを保障する上で重大な役割を担っている。

7.拡大議員会議は、現在の経済の回復が、主として「政策誘導」によるものだということに留意する。「政策誘導」とは、低金利、減税及び公債発行による財政支出に示されるような例外的といえる拡張的なマクロ経済政策のことである。OECD加盟国のうち数か国の厳しい債務状況、高齢人口に対する来るべき年金支払の増大を考えると、財政の均衡、可能であれば黒字への回帰が喫緊の課題となりつつある。このことはとりわけ、経済通貨同盟(EMU)の安定成長協定の規則に違反する恐れがあるユーロ圏の多くの国々に当てはまる。というのも、違反を続けることはEMU加盟国間の結合力を弱めるだけでなく、通貨自体の信用に影響を及ぼすからである。

8.現在の原油高が続けば、経済は、現下の回復軌道から簡単に外れてしまうかもしれない。拡大議員会議は、OPEC及び他の産油国が、こうした事態を回避するために必要な水準まで増産するよう希望する。同時に、拡大議員会議は、世界的に急激な需要の拡大、石油の浪費、投資の停滞による精製能力の不足、投機相場、石油施設に対するテロ行為、イラク、サウジアラビア、ロシア及びナイジェリアにおける様々な問題など、昨今の状況を招いている種々の理由を認識している。この状況においては、「OECDと世界経済」に関する拡大議員会議決議第1350号(2003年)で詳しく述べられている、持続可能な開発のために必要な政策が、新たに重視されるべきである。これに関連して、拡大議員会議は、OECDが、持続可能な開発の分野において、3か年プロジェクトの完遂に成功し、更にこの分野の作業を継続する決定を行ったことを歓迎する。

9.回復の継続はまた、進行中のドーハ開発アジェンダに関するWTO交渉の成功に大きくかかっている。拡大議員会議は、物別れに終わった2003年のカンクン閣僚会議から得た経験に立脚し、各方面に対し、譲歩の精神をもって、取り組むよう求め、特にOECD加盟国に対しては、農業部門での国内補助金の削減、輸出補助金その他貿易を歪曲する補助金の最終的撤廃に関して、必要な寛容さを示すよう要請する。

10.拡大議員会議は、とりわけ昨今の企業の不祥事の見地から、OECDが、最近、コーポレート・ガバナンス原則(注:企業の意思決定の仕組みのこと)の改訂版について合意に達したことを歓迎する。同原則の遵守は、持続的及び社会的責任を果たしうるような経済発展のために不可欠なものである。拡大議員会議は、すべてのOECD加盟国に対し、国内において、また国際会議等の場において、同原則を最大限広報するとともに、必要な場合には、同原則を遵守するための法整備を行うよう強く求める。

11.拡大議員会議は、OECD加盟諸国が、たとえ未発効とはいえ京都議定書の規定、及びOECDの2001年環境戦略の一部として生じた公約の履行に失敗したことに対し、失望を表明する。漁業から林業、自動車交通から汚染に至るまで、大抵のOECD加盟国が、持続不可能な道を進んでいる。拡大議員会議は、OECD加盟国に対し、環境目標の達成のため、実利的及び財政的な措置をより大胆に用いることを求める。更に、京都議定書が気候変動を阻止できないことが次第に明らかとなることで必要となる「ポスト京都プロセス」への準備を、今すぐに開始することを求める。また、拡大議員会議は、今後のエネルギー問題を考慮した場合において、持続可能な開発と環境保全を両立させるため、OECD加盟国が率先して、循環型社会への転換を一層促進させるとともに、核融合エネルギーに代表される新たなエネルギー源に関する技術開発を強化し、再生可能エネルギーが秘める可能性についても追求するよう奨励する。このようにして、OECD加盟国は、世界共同体において相対的に豊かな国々の行動によって影響を受けやすい、OECD非加盟国に対し、模範を示すことにもなろう。

12.例えば、ニュー・エコノミーの台頭及び多くの人々の収入が着実に増加していることに明白に示されているように、グローバリゼーションは、世界に多くの利益をもたらしているが、一方で、現在、国内及び国家間で、受け入れ難い所得格差を徐々に生んでいる。社会的連帯及び環境保護を伴いつつ、持続的な世界規模の発展を続けるためには、現在、貿易自由化を阻んでいる多くの障壁を撤廃しなければならない。拡大議員会議は、OECDに対し、OECDと協力関係にある多数の非加盟国を含む会合において、国際社会の平和、安定及び連帯のために、グローバリゼーションがますます多くの国々及び世界市民に利益をもたらすことを確たるものとする政策及び計画を整備するよう強く求める。かかる文脈において、拡大議員会議は、OECDにおける「拡大・アウトリーチ」戦略策定の重要性を認識し、開発部門の活動を歓迎するとともに、今後の更なる発展を奨励する。

13.拡大議員会議が、特に留意しなければならないことは、世界経済の中の知的財産権の分野である。インターネットが高度に発達した21世紀は、「世界の全ての人々がクリエイター、全ての人々がユーザー」の時代であると言われている。急速に進展するデジタル化・ネットワーク化に対応する知的財産制度の改革は、権利者(アーティスト・クリエイター)と将来のアーティスト・クリエイターを含む消費者・利用者の立場を最優先にして行われることが、持続可能な成長へと、世界経済を導くであろう。そのためには、制度改革が産業界による市場支配の口実として用いられる危険性に対して常に警戒を怠らず、文化的・技術的所産を提供する側の人々と亨受する側の人々が、国家間の関係を含めて、相互に信頼しあえる関係を築くための制度改革実現に取り組むべきである。

14.拡大議員会議は、持続可能な開発にとって、特に文化の重要性を明確にするよう希望する。文化部門及び文化活動の秘める経済上の重要性及び雇用は、着実に大きくなっている。何よりも、文化は、正に社会の特徴を形成する価値を具現化している。それゆえ、OECDは、文化部門が秘める経済上の可能性と、文化の特定の役割並びに個人及び社会の貢献による文化の内容及び芸術表現の多様性を保持する配慮とを調和させる議論に加わる義務を有している。そうした議論は、文化の多様性を支えることにおいて、世界貿易の自由化に関する議論と、欧州連合、欧州評議会及びUNESCO(国際連合教育科学文化機関)の作業を必然的に結びつけることになるであろう。

15.拡大議員会議は、1962年以降、OECDの議会人会合の役目を果たしてきており、その間OECDの構成国は着実に増加し現在、30か国に達している。拡大議員会議は、2004年のOECD閣僚理事会による、拡大戦略を含むOECD改革パッケージの承認を歓迎するに当たり、OECDが、46の加盟国を有する欧州評議会を含む、多くの加盟国を有する国際機関の経験を大いに研究することにより、規模と効率性を調和させるような画期的な方法を見出すよう奨励する。

16.拡大議員会議は、国際紛争とテロの拡散が国際社会や市民生活にとって深刻な脅威となり、同時に世界の経済発展のために大きな障害となっていることを、明確に認識する。世界経済の発展及び人類の幸福のためには、国際紛争やテロの根絶が不可欠である。拡大議員会議は、OECD加盟国をはじめとする国際社会全体に対して、国際紛争やテロの背景に存在する複雑な諸問題を、平和的手段によって、できる限り早急に解決するために、その対策に邁進することを要請する。