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国際関係

国際会議

第111回IPU会議派遣報告

 第111回IPU会議は、2004年9月28日(火)から10月1日(金)までの4日間、ジュネーブ(スイス連邦)のジュネーブ国際会議センターにおいて、112か国、5準加盟国際議会、28国際機関等から989名(うち、議員453名)が参加して開催された。

 日本国会代表団(団長・瓦力衆議院議員、副団長・大野つや子参議院議員)は、参議院議員2名、衆議院議員5名、衆参事務局職員及び同時通訳員から成る25名をもって構成された。

 本報告書では、参加参議院議員の活動に重点を置きつつ、会議の開会、評議員会、本会議、参議院担当の「持続可能な開発、金融及び貿易委員会」等についてその概要を報告する。


1.会議の開会

 9月28日(火)午前9時30分から開催された本会議において、パエスIPU議長より第111回IPU会議の開会が宣言された。

2.第175回評議員会

 第175回評議員会は、9月28日(火)及び10月1日(金)に開催された。

イ IPU加盟資格の問題について、西アフリカ諸国経済共同体議会及び東アフリカ立法議会の準加盟申請が承認された。その結果、IPUの準加盟国際議会の数は7となった。

ロ 2005年度活動計画及び予算案について、執行委員会の勧告に基づき、予算総額10,306,910スイスフラン、各加盟国の分担金を前年度比3%増とすること等が承認された。また、今次会議より開始された分担金見直しに関するワーキンググループでの審議内容につき、報告が行われた。

ハ 国連との協力について、国連と市民社会との関係に関する国連の有識者パネル(カルドーゾ・パネル)の報告書をめぐる状況に関し、経過報告がなされた。また、第2回世界議長会議をニューヨークの国連本部においてIPUと国連との共催で行うこと、国連が同報告書に関する決定を来年の第60回国連総会まで延期することを主な内容とする国連とIPUとの協力に関する決議案が提示され、加盟国議会に対し、同決議案が第59回国連総会で採択されるよう自国の国連政府代表部へ働きかけることが要請された。

ニ 今後の会議予定について、第112回IPU会議を2005年4月3日(日)から8日(金)までマニラにおいて、第113回IPU会議を2005年10月にジュネーブにおいて会期を3日間に短縮して開催すること等が承認された。

ホ IPU規約及び規則の改正について、常設委員会規則及びIPU財政規則の改正が承認された。IPU改革後、常設委員会の審議においては、共同報告委員が報告書及び決議案を作成し、これをもとに各国より提出された修正案を委員会及び起草委員会の中で検討する形式がとられているが、現行の常設委員会規則において決議案に対する修正案の提出期限が会議開催1週間前とされていることにより、女性議員会議からの修正案提出が事実上不可能となっている。この現状を改めるため、関連規則の改正が前回メキシコシティでの評議員会にて提案され、その趣旨につき了承が得られていた。今次評議員会では、当該事項のほか、常設委員会議事概要の提出期限を次回の委員会開会時までに延長すること、及び常設委員会の起草作業に共同報告委員が関与することを定めた常設委員会規則改正案が正式に承認された。また、予算の執行・資産管理に係る事務総長の権限を強化すること及び調達に関する規定を追加すること等を内容とするIPU財政規則改正案が承認された。


3.本会議

 本会議は、9月28日(火)及び10月1日(金)に行われた。

 議題1 今次会議の議長の選挙

 パエスIPU議長が今次会議の議長に選任された。

 議題2 会議議事日程への緊急追加議題挿入要請の審議

 緊急追加議題挿入要請については、会議に先立ち、南アフリカより「アフリカ大陸が直面している安全保障上の課題、特にスーダンのダルフール地方における人道上及び安全保障上の危機に取り組むための議会の役割」、スーダンより「ダルフール問題に焦点を当てた、アフリカの平和及び紛争解決を支援する議会の役割」が提案されていた。

 しかし、9月27日(月)に行われたアフリカ諸国の地域会合での協議がまとまらず、両国とも提案議題を取り下げるに至った。一方、同日午後、アジア・太平洋グループからの支持を得て、イランから「イラクにおける憂慮すべき状況並びに同国における平和及び安全を取り戻すための議会の行動の必要性」が提出された。

 結局、28日午後の本会議の開会時における提出議題は、イラン提案議題の1件のみとなった。イランによる提案議題の発表の後、カナダ及びマリより、イラン提案の議題自体に異論はないが、スーダンにおける人道上の危機は深刻であり、この問題を緊急追加議題として取り上げないことに対し懸念が示された。イラン提案の議題を挿入すること自体に対する反対はなかったため、議長によって

 議題3 「安全保障を確立し、平和のための国際協力を行う多国間機関を支援するための議会の役割」

 平和及び安全保障委員会起草の決議案が1日午後の本会議に提出され、サリム報告委員(インド)からの報告を聴取した。決議は、コンセンサスで採択された(決議の全文は別添参照)。なお、採択決議に対し、イスラエル及びインドが留保を表明した。

 議題4 「生物多様性の保全における議会の役割」

 持続可能な開発、金融及び貿易委員会起草の決議案が1日の本会議に提出され、カヴィヤス報告委員(マレーシア)からの報告を聴取した。決議は全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。

 議題5 「北京+10:議会の視点からの評価」

 民主主義及び人権委員会起草の決議案が1日午後の本会議に提出され、サウリ・リアンチョ報告委員(メキシコ)の報告を聴取した。決議はコンセンサスで採択された(決議の全文は別添参照)。なお、採択決議に対し、インドが留保を表明した。)。

 議題6 IPU規約及び規則の改正

 共同報告委員作成決議案に対する修正案の提出期限は、IPU会議規則第17条第1項において、「IPU会議の開催される1週間前まで」と定められている。しかし、この規則を適用すると、女性議員会議から修正案を提出することが不可能となることから、関連規則の改正が前回メキシコシティでの評議員会において提案され、その趣旨につき了承が得られていた。1日の本会議では、各常設委員会の第1回会合の散会時まで、女性議員会議及び女性議員会議調整委員会からの修正案提出を可能にするIPU会議規則第17条第1項改正案が採択された。

 議題7 第112回IPU会議の議題の採択と報告委員の指名

 IPU会議の議題及び報告委員の決定について、報告書及び決議案の作成に十分な準備期間を与えるという観点から、今後、1年後に当たる次々回の会議で審議される議題及び共同報告委員を決定することが承認された。参議院が担当する持続可能な開発、金融及び貿易委員会の第112回会議の議題は「債務問題に取り組み、ミレニアム開発目標を達成するための革新的な国際的資金調達及び貿易メカニズムの確立と議会の役割」、共同報告委員はO・マルティネス議員(キューバ)、R・デル・ピッシャ議員(フランス)の2名とし、また、第113回会議の議題を「移住と開発」とすることが承認された。なお、移行期間に当たる今次会議では、第113回会議の共同報告委員については、IPU議長及び事務総長と各常設委員会の委員長との協議の上、後日決定することとされた。

 議題8 「イラクにおける憂慮すべき状況並びに同国における平和及び安全の回復に貢献するための議会の行動の必要性」

 緊急追加議題である本件に関する討議は29日午前に行われ、瓦衆議院議員は、イラク国民自らによる再建を支援する我が国の基本的立場を明らかにし、イラクにおいて多発しているテロ活動は断じて許されるべきでない旨発言した。右議題決議案の作成に際しては、起草委員会が設置され、同委員会において、議題を「イラクにおける憂慮すべき状況並びに同国における平和及び安全の回復に貢献するための議会の行動の必要性」に修正するよう本会議に勧告することが決定された。議題の修正及び決議は、1日の本会議において全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。


4.持続可能な開発、金融及び貿易委員会

  持続可能な開発、金融及び貿易委員会は、9月29日(水)及び30日(木)に開催され、本会議議題4の審議を行った。委員会審議に当たっては、前回のメキシコシティ会議の際に選任された2名の報告委員(ウガンダ及びスイス)が作成した報告書案及び決議案について、各加盟国より、報告書案に対しては提案や批評を、決議案に対しては修正案を会議に先立ち提出することとされており、これらを反映した最終報告書及び各国提出修正案に基づく討議が進められた。日本は、報告委員作成決議案に対する修正案を事前に提出し、審議に臨んだ。
 29日午前の委員会では、共同報告委員より報告書及び決議案についての説明を聴取した後、討議に入り、42か国、3国際機関から計47名の代表が演説を行った。参議院代表団より、大野議員及び高橋議員が出席し、高橋議員が発言を行った。高橋議員は、地球環境の悪化が進む中、経済発展と環境保全を両立させる「持続可能な開発」を進める必要性を訴え、また、生物多様性の保全と持続可能な利用のための国家戦略の推進、生物多様性の履行を確保する法律の制定及び発展途上国を支援するための資金拠出等の国際協力といった我が国の取組を紹介し、さらに、国家レベルの取組だけでなく、地方自治体や個人レベルでの身近な取組を促進することの重要性を主張した。委員会の中で、議長より、各国修正案が多く提出されていることから、起草委員会を設置し、少人数での審議を行うことが提案され、日本、アルジェリア、マレーシア、ナイジェリア、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、スーダン、スイス、英国及びウルグアイの11か国の代表からなる起草委員会が設置されることが決定された。
 29日の午後に行われた起草委員会には、参議院代表団から高橋議員が出席した。審議を始めるに当たり、ミール議員(英国)が委員長に、カヴィヤス議員(マレーシア)が委員会への報告者に任命された。続いて各国から提出された共同報告委員提出決議案に対する修正案について、逐条審議の形で検討が行われた。日本は2件の修正案を提出しており、前文のうち関連条約等が列挙されている箇所に「環境と開発に関するリオ宣言」を追加する提案については、他国からの提案と併せて時系列に整理し、これを挿入することが了承された。次に、高橋議員はもう1件の修正案として、「全加盟国に対し、国境横断的な資源を共有する地域間で、当該資源に関する情報・知識を共有及び交換することによって、地域の特性を考慮した生物多様性の保全に向けて地域間の協力を強化するよう勧告する」との新たなパラグラフを挿入することを提案し、その重要性を訴えたところ、了承された。この起草委員会会合において、すべての提出修正案について検討が行われた。修正案の中には、他の条項と重複する多数の条項の追加を要求するものが多くあったことから、これらの条項をまとめたものを決議案に盛り込んだ形で、翌日の起草委員会で再度検討されることとなった。30日午前の起草委員会では、前日の検討結果を踏まえ、委員会への報告者及び生物多様性条約事務局からのアドバイザーとの間で作成された案が提示されたところ、起草委員会提出決議案として異議なく承認された。その結果、全115本の提出修正案のうち、57本が案文どおり、若しくはその一部が採用されることとなった。
 30日午後の委員会全体会合では、起草委員会で作成された決議案が提出され、前文については一括審議、本文については逐条審議が行われた。同決議案には、若干の修正が加えられたものの、決議案全体としての反対はなく、本会議への提出決議案としてコンセンサスで採択された。


5.「国際人道法の遵守」に関するパネル討議

 9月28日(火)に「国際人道法の遵守」に関するパネル討議が開催され、参議院代表団から大野議員が出席し、演説を行った。4名のパネリストからの演説を聴取した後、討議に入り、参加者からの意見聴取及びパネリストに対する質疑応答を行った。討議の中で大野議員は、冷戦終結後に多くの内戦が破綻国家型の紛争に移行し、国際人道法の適切な履行が確保されない中で、国際社会が、被災者に対し積極的な人道的援助活動を行い、また人権の分野における国際法との協力を強化することの必要性について訴えた。


6.ASEAN+3会合

 同会合は、9月27日(月)にフィリピンを議長国として開催され、アジア・太平洋地域における信頼醸成討議、「ASEAN+3」会合東京会議の開催時期の提案等が行われた。このうち「ASEAN+3」会合東京会議について、瓦議員より、開催時期を2005年4月18日(月)から23日(土)とすることを提案し、各国からの合意を得た。なお、同会議は、ASEAN+3地域に共通する諸問題について意見交換を行う機会を設けることを目的に瓦議員が提唱したものであり、前回メキシコシティ会合でその開催について基本的了承が得られていた。また、議題については、インドネシアより自国の選挙後に改めて検討したいとの発言があったことから、決定を見送ることとした。


7.アジア・太平洋地域グループ会合

 同会合は、シンガポールを議長国として開催され、執行委員会の議事経過の報告、執行委員候補の選出、アジア・太平洋地域グループ会合規則の改正、各議題決議案起草委員候補の選出、緊急追加議題挿入要請への地域グループとしての対応等について協議が行われた。この中で、各議題決議案起草委員候補の選出に関し、持続可能な開発、金融及び貿易に関する委員会の起草委員候補者に高橋議員及びマレーシアの代表の計2名が選出された。


8.女子差別撤廃条約に関するセミナー

 IPU会議終了翌日である10月2日(土)に行われた同セミナーには、参議院代表団から大野議員が討議に参加し、発言を行った。大野議員は、女子差別撤廃条約の履行における我が国議会の取組事例として、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の概要とその制定に至る経緯を紹介し、女性の権利擁護に向けた議会の行動の重要性を訴えた。


9.その他

 参議院代表団は、会議期間中に、ASEAN諸国代表団、英国代表団及び韓国代表団との懇談、さらに大野議員はASEAN+3女性議員との懇談の機会を設け、活発な意見交換を行った。




【別添】第111回IPU会議採択決議

新たな安全保障の観点から、兵器の拡散防止及び軍備縮小のための
多国間の体制を強化する上での議会の役割

(2004年10月1日(金)、本会議にてコンセンサス1で採択)

第111回IPU会議は、

(1)  軍備、特に大量破壊兵器及びその運搬手段の規制のない増強と拡散によってもたらされる国際的平和、安定及び安全へのリスクを認識し、

(2)  兵器、戦争及びテロ活動の致命的な影響によって人類が被っている苦痛及び破壊に深く心を痛め、

(3)  現在行われている兵器の貯蔵が世界経済、地球環境、世界の持続可能な開発に及ぼしている影響を深く憂慮し、

(4)  紛争地域にあるすべての国に対し、安全保障及び安定、平和的関係、並びに善隣関係の促進を目的とした信頼醸成の地域努力を強化するよう求め、

(5)  国連憲章、特にその第2条及び第26条に留意し、

(6)  世界人権宣言及び人権と人間の尊厳の尊重に関連するその他すべての規約、条約、協定などを意識し、

(7)  国連総会及び経済社会理事会の女性の地位向上及びジェンダー平等推進における主要かつ不可欠な役割を認識し、また、「女性、平和及び安全保障」に関する国連安全保障理事会決議1325を想起し、

(8)  IPUが平和、安全保障及び軍縮に関して1994年以降採択してきた決議(特に第91回、第93回、第94回、第96回、第98回、第101回、第102回、第108回、第109回の各会議及び1995年のIPU特別評議員会で採択された決議)の重要性を再度強調し、

(9)  大量破壊兵器の拡散は依然として現実の脅威であり、国際法及び条約上の義務に対する違反国及び無責任な非国家主体、テロリストの手に渡った場合には特に脅威であることを懸念する一方で、これに関連した、テロによる国際平和及び安全保障への脅威に関する国連安全保障理事会決議1373及び大量破壊兵器の不拡散に関する安全保障理事会決議1540を歓迎し、

(10)  軍縮に対する責務及び信頼醸成の分野における前向きな成果を脅かすような対テロリズム戦争を防止することの重要性に留意し、

(11)  小型武器から迫撃砲・地雷、並びに民間航空に大いなる脅威をもたらす携帯式地対空防衛システム(MANPADS)に至るまで膨大な量の軽武器・対人兵器が広く拡散していることに強い不安の念を抱く一方で、小型武器については、その適切な管理が行われることの重要性を確認するとともに、国際組織犯罪及びテロ組織による小型武器の非合法取引やそのような組織、グループに対する違法な資金提供行為を取り締まる必要性を指摘し、

(12)  軍備及びその運用、監視の更なる強化を支援するに際しての開放性及び透明性を高める上での国連軍備登録制度の重要性を強調し、

(13)  戦略兵器削減条約(START)、戦略攻撃力削減条約(SORT)、欧州通常戦力条約(CFE)、核不拡散条約(NPT)、化学兵器禁止条約(CWC)及び生物兵器禁止条約(BTWC)など既に締結されている軍備管理条約の利点を高く評価するとともに、これらの条約に続いてさらに特に超大国間で相互軍縮条約が締結されることを期待し、

(14)  武力紛争の最中においても国際法の重要性及びこれを尊重する必要性に留意し、

(15)  核不拡散条約(NPT)の下での進展及び保障措置協定による成果を認識するとともに、核兵器国及びその他条約締約国に対し1995年及び2000年に国連により開催されたNPT再検討・拡大会議において採択されたコミットメントを達成することを要望し、

(16)  特に、化学兵器禁止条約(CWC)、生物兵器禁止条約(BTWC)のような多国間軍縮条約の持つ重要な役割を認識し、核不拡散条約(NPT)への支援、強化の継続的な必要性を強調し、またこれから脱退を決定している国があることを懸念し、

(17)  包括的核実験禁止条約(CTBT)が、NPTに基づく国際的核軍縮と核不拡散体制の維持について中心的役割を果たすものであり、その発効が核廃絶を実現するための有効かつ具体的な方策であると確信し、

(18)  核兵器国やNPT非締約国の核兵器製造能力を凍結する兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期締結を期待し、

(19)  南太平洋、アフリカ、東南アジア、中南米などに設置されているような地域的な非核地帯によって相互信頼が醸成されていることに留意し、

(20)  地球生態系の敏感な地域を保護するものとして、南極及び海底を非武装化するために締結された諸条約を高く評価し、

(21)  テロリスト、国際犯罪人、攻撃的野心を抱いている無責任な政府による兵器入手の阻止で積極的役割を果たしていくことを決意し、

(22)  過去30年間における不拡散、軍備管理及び軍縮分野における成果はおろそかにされるべきでないことを意識し、

(23)  一部の削減条約、軍縮条約及び非拡散条約は完全な履行が先送りされているとともにその解釈について争われている結果、実効性が薄れていることを憂慮し、

(24)  軍縮及び不拡散に対しては多角的アプローチが最善であり、信頼の持続化と地域的及び国際的安定の強化につながると確信し、

(25)  化学、生物及び核兵器分野並びにミサイル関係分野における主要技術の移転を抑制する多角的交渉に基づく無差別的な検証体制は、大量破壊兵器及びその配備手段の拡散防止に寄与していることを信じ、

(26)  二重使用は大量破壊兵器及びその配備手段の製造へ使用され得るため、二重使用を含めた、物質、設備及び技術貿易の責任ある管理に言明し、また、平和利用目的のために核エネルギー、化学及び生物薬剤及び毒を使用する際の国の権利及び責任を認識し、

(27)  政府への圧力及び軍事予算・調達プログラムの綿密な監視によって、特に核、化学及び生物大量破壊兵器に関し、議会の軍縮プロセスへのより完全な関与を実現することを誓約し、

(28)  国際議会間組織、特にIPUが、軍備管理、軍縮及び不拡散プロセスを推進する場として積極的に活動していくのを支援することを熱望し、

(29)  各国政府が相互信頼に基づいてすべての関連情報をより十分に国会議員に提供することを希求し、

1.  各国議会に対し、これまでIPU会議によって採択された平和、軍縮及び安全保障に関する全決議及び勧告を強力かつ効果的に支持するよう求める。

2.  各国議会に対し、自国政府が不拡散、軍備管理、軍縮、及び安全保障の強化を目的とするすべての約定、条約、国際協定などに適宜署名し、完全に履行するように圧力をかけるよう促す。

3.  各国政府及び議会、国際社会に対し、人々を個人的、国家的、国際的レベルで暴力に訴えるようにさせる環境を作り出す根本原因の解消に努めるよう求める。

4.  会議に対し、テロ撲滅のための国際会議が属する国連の後援のもとで、とりわけこの深刻な問題についてのはっきりとした定義を行うよう要請する。

5.  すべての国に対し、これまでの成果を礎に、軍縮、軍備管理及び不拡散が将来に向け持続的なプロセスとなるよう要請する。

6.  国連に対し、緊張緩和、紛争解決及びテロとの闘いでIPUとの連携を強化するよう求める。

7.  各国議会に対し、特に国際的緊張が高まっている地域に注目するよう促す。

8.  さらに、アラブ・イスラエル紛争、イラク、アフガニスタン、ダルフール、アフリカ大湖地域等、紛争予防のための緊急の政治的行動を必要とするその他の重大な問題に見舞われかねない地域など、国際的な秩序と安定にとって最も危険なリスクを孕んでいる地域を大胆に特定するよう促す。

9.  武力紛争、テロ、無法状態の新たな勃発を防止するため、良き統治(グッド・ガバナンス)及び法の支配の確立に関する持続的な集中的取組によって戦後復興への持続的努力を積極化するよう求める。

10.  すべての政府及び多国間機関に対し、あらゆる形態による占領の即時停止への努力を支援するとともに、占領によって生じたあらゆる災難を救済する責任及び国際法に則って行動する責任が全占領軍にあることを正式に認めるよう求める。

11.  IPU事務局及び国連事務局に対し、両組織及びその加盟国間の情報、協力、企画立案の交換を強化するよう働きかける。

12.  すべての国に対し、国連安保理決議を伴わない兵力の単独使用を慎むよう要請する。

13.  各国議会に対し、すべての軍備管理、不拡散及び軍縮に関する条約、国連決議等の国内における履行を綿密に監視し、履行監視への最善の措置に関する情報交換を行い、その進捗状況についてIPU会議に報告するよう求める。

14.  国連軍備登録制度へより多くの国家が参加するよう要請する。

15.  各国議会に対し、それぞれの執行機関の戦略政策決定の能力、兵力及び武器調査、開発又は生産の増強を、国連憲章、一般的に受け入れられている規範、国際法原理、有効な国際協定に照らし合わせて綿密に監視するよう勧告する。

16.  各国議会に対し、特に構成要素や前駆物質など大量破壊兵器に関連する品目に関して、あらゆる種類の軍備の輸出を規制する国内法に適切な行動規範を取り入れるよう働きかける。

17.  包括的核実験禁止条約(CTBT)に未だ署名又は批准していない各国議会及び政府に対し、その早期加盟を達成するためにあらゆるすべての手段を講じることを強く要請する。

18.  生物兵器禁止条約(BTWC)の更なる強化及び特にその検証のための法的に拘束されたメカニズムを設立する必要性を強調する。

19.  欧州議会及び政府に対し、欧州における安全と安定の維持のために欧州通常戦力条約(CFE)がもつ重要性を考慮し、遅滞なくCFE条約に関係する協定を採択するよう要請する。

20.  非核地帯をさらに広げるとともに、特に中東を大量破壊兵器及びその運搬手段のない地帯にすべきであるとした国連安全保障理事会決議687を完全に履行するよう促す。

21.  すべての国に対し、対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲の禁止及びその廃棄に関するオタワ条約並びに過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約(特定通常兵器使用禁止制限条約)改定議定書Ⅱに加盟するよう求める。

22.  すべての「対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲の禁止及びその廃棄に関するオタワ条約」締約国に対し、2004年11月から12月にナイロビで開催される第1回ハイレベル検討会議へ参加し、その会議において地雷除去及び犠牲者支援活動のための国家計画の準備を進めるよう要請する。

23.  国家が国連組織犯罪防止条約を補足する銃器議定書へ同意し、その発効を可能にするよう要請する。

24.  各国政府に対し、国際原子力機関(IAEA)への支持を強化し、必要とされる包括的な保障措置協定並びに追加議定書、強化された原子力安全協定に関して交渉を行い、実施するよう求める。

25.  国連安全保障理事会及び国際原子力機関(IAEA)に対し、大量破壊兵器、特に核兵器を取得するための闇プログラムがあるとの疑いが持たれているすべての国への徹底的な監視体制を整備するよう働きかける。

26.  さらに、すべての国に対し、安保理決議1540及び国連総会決議58/48の履行への努力を強化し、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止及び、大量破壊兵器の拡散に利用される恐れのある機器、物質、技術の、特にテロリストへの移転を防止するための政策強化に向けた取組を強化するよう求める。

27.  各国議会に対し、兵器がテロリストや組織犯罪グループに横流しされた場合には政府の責任を問えるようにし、またそのような横流しを禁止する法律を整備するよう促す。

28.  各国に対し、奇襲攻撃に備えるとともに相互信頼を醸成するため、オープン・スカイ条約を完全に適用するよう促す。

29.  各国議会に対し、南極条約、「核兵器及び他の大量破壊兵器の海底における設置の禁止に関する条約」(海底核兵器禁止条約)、及び「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」を常に完全に履行するよう求める。

30.  各国政府に対し、宇宙空間における兵器配備を禁じることによって、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」の締結に向けた多角的交渉を進めるよう求める。

31.  国連に対し、「あらゆる観点における小型武器非合法取引の防止、撲滅、根絶に向けた行動計画」を実施するための取組で、特に2005年7月のベニン会議の視点においてIPUと緊密に協力するよう要請する。

32.  すべての地域機関に対し、小型武器取引の削減及び規制に向けて積極的な運動を展開するよう働きかける。

33.  女性及び女性組織は、紛争の平和的解決及び人道的な価値に基づく平和的、調和的、非攻撃的な社会及び家族の確立で極めて重要な役割を果たすと主張する。

34.  草の根及び地域社会レベルでの紛争防止という代替的な観点を持つよう働きかけるとともに、各国に対し、社会の全域にわたりこのような観点を強化し、女性組織及び非政府組織に資金助成し、国際人道基金を設立するよう求める。

35.  国連、特にその軍縮局に対し、将来の軍縮活動を強化し、強固にし、情報提供し、指針を提供するための「ジェンダー主流化への行動計画」の実施面で、IPUとの協力を強化するよう勧告する。

36.  また、IPUに対し、加盟国議会を通して、1995年の北京行動綱領に盛り込まれている女性と戦争に関する勧告を考慮し、「女性、平和及び安全保障」に関する国連安全保障理事会決議1325とともに、女性の地位向上とジェンダー平等の促進に関する国連総会及び経済社会理事会決議の実施を積極的に支持するよう勧告する。

37.  各国議会に対し、特に対女性犯罪防止規定を盛り込むなどして、国際刑事裁判所規程と両立するような法整備を行うよう求める。

38.  紛争に反対する女性のメッセージを広く伝えることができるよう、女性のメディア及び通信施設へのアクセスを強化するよう促す。

39.  女性が紛争の防止・解決に完全に関与できるようにする多文化的、超国家的、グローバル、地域的なイニシアティブを確立し、IPUがこの極めて重要な役割に積極的に参加するよう勧告する。

 1イスラエル及びインドは留保を表明した。



生物多様性の保全における議会の役割

(2004年10月1日(金)、本会議にて全会一致で採択)

第111回IPU会議は、

(1) ・ 国際植物防疫条約(1951年)

・ 特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約、1971年)
・ 国連人間環境会議宣言(1972年)
・ 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(1972年)
・ 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(1973年)
・ 移動性野生動物種の保全に関する条約(1979年)
・ 国連先住民作業部会の創設(1982年)
・ 世界自然憲章(1982年)
・ 国連海洋法条約(1982年)
・ 植物遺伝資源に関する国際的申合せ(1983年)(植物遺伝資源に関する国際協定(2001年)にとって代わられた)
・ 環境と開発に関する世界委員会の報告「我ら共有の未来」(1987年)
・ 生物多様性条約(1992年)
・ 環境と開発に関するリオ宣言(1992)
・ 生物多様性条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(2000年)
・ 持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画(ヨハネスブルク実施計画、2002年)
を想起し、


(1) また、

・ 欧州の野生生物及び生息環境の保全に関する欧州評議会条約(1979年)
・ 越境環境影響評価に関する国連欧州経済委員会条約(1991年)及び戦略的環境評価に関する議定書(2003年)
・ 環境問題における、情報へのアクセス、意思決定における市民参画及び司法へのアクセスに関する国連欧州経済委員会条約(1998年)
についても想起し、


(3)  生物多様性(生物内・生物間の変異性及び生物の生息システム)が、地球及び地球に生息する既知の種の存続にとって重要であることを認識し、

(4)  生物多様性条約に使用されている「生物多様性」という用語に対する更なる国民の理解が、一部の国家・地域の保全戦略においてその実用性を高めることを確信し、

(5)  グローバル(世界的規模)な生物多様性の社会的地位を確立するという難題を目的とした、国際自然保護連合(IUCN)の取組を認識し、

(6)  生物多様性の保全は、その取組が貧困軽減・食料安全保障・淡水供給・バイオマスエネルギー・土壌保全・人間の健康に不可欠である限りにおいて、持続可能な開発に必要な条件であることを認識し、

(7)  生物多様性条約の目標を達成するに当たり、国境を越える生物圏保護区を含む生物圏保護区のような保護地域の重要性を強調し、

(8)  この点に関し、生物多様性の保全及び持続可能な利用を促進するに当たっての、国連教育科学文化機関の人類と生物圏計画及び生物圏保護区のためのセビリア戦略の役割を認識し、

(9)  生物多様性の喪失の現在の割合が、地球の歴史上、人間活動による最も深刻な絶滅現象を象徴していることを想起し、

(10)  生物多様性条約が、生物多様性の保全・持続可能な利用を取り上げた主要な国際文書であることを認識し、

(11)  生物多様性条約が、生物多様性の喪失の中心的原因、とりわけ人口増加、持続可能でない生産と消費のパターンに明確には言及していないことに留意し、

(12)  また、人間活動による生物多様性への最大の脅威は、生息地の喪失及び荒廃、気候変動、外来侵入種、過剰搾取並びに汚染であることについても留意し、

(13)  各国が生物多様性条約の下で、自国の生物資源に対し主権的権利を有することを認識し、

(14)  国境を越える状況においては、天然資源の適切な管理並びに生物多様性及び生態学的均衡の保全のために、国際的、地域的及び二国間で適用可能な法的枠組みにおける近隣諸国間での取組に関する協議並びに全面的な協力及び調整が必要であることを強調し、

(15)  持続可能な開発に関する世界首脳会議、及び2010年までに生物多様性の喪失の現在の割合を顕著に逓減させることを目指した第6回生物多様性条約締約国会議の公約を想起し、

(16)  また、特に、第7回生物多様性条約締約国会議の際に採択された保護地域に関する作業計画についても想起し、

(17)  さらに、生物多様性の保全については、保護地域における生息地内の保全努力自体では、生物多様性の喪失を食い止めるには不十分であり、当該努力を超えた取組を行う必要があることを想起し、

(18)  生態系により提供される財・サービスが、従来の計量経済学的方法によっては考慮に入れられていないことに留意し、

(19)  特に生物多様性条約と世界貿易機関の政策や国際貿易協定との相乗作用・相互支援の強化を目的とした、持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画パラグラフ44(r)を想起し、

(20)  開発のための協力活動の中に、リオ条約を組み込む必要性と関連して、2002年5月16日、経済協力開発機構の開発援助委員会のハイレベル会合において採択された政策声明を考慮し、

(21)  生物多様性条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の発効を想起し、

(22)  遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分が、生物多様性条約の中核をなす目的の一つであることを再確認し、

(23)  生物多様性の商業化が、先進国と途上国(熱帯林を有する国も含む)相互間の歴史的に不公平な関係を恒久化するおそれがあることを憂慮し、生物多様性条約締約国会議がこれらの問題について検討し、実行可能かつ公平な解決方法を発見に努めるフォーラムであることを認識し、

(24)  遺伝資源及び伝統的知識の提供国は、多国籍企業によるそれらの不正使用を防止するための手段が制限されてきたこと、また、国内立法、遺伝資源へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分に関するボン・ガイドライン(生物多様性条約締約国会議で採択)、並びに食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際協定を含む既存のメカニズムが、これらの短所を解決するために実施され、さらに展開させられなければならないことに留意し、

(25)  数多くの加盟国が、例えば種子銀行の維持のように生息場所以外での対策を通じた、生物多様性の要素の保護のための援助を必要としているのに対し、これまでに国際植物遺伝資源研究所のサービスを要請したのは、ごく少数の国(10か国)にとどまっていることに注目し、

(26)  人間活動が単一の政府の管轄権が及ばない陸水及び海洋のシステムの多様性に与えてきた多大な影響に懸念をもって留意し、

(27)  生物多様性に影響する可能性のあるプロジェクトの着手前に実施される包括的かつ正確な環境影響評価の必要性を強調し、

(28)  現在及び将来の世代の健康的な生活を確保するために、環境の多様性と持続可能な開発の問題との間の密接な関係を認識し、

(29)  世界の指導者が、生物多様性を適切な政治的優先課題とすることもなく、国連環境計画(UNEP)など関連の国際機関に十分な資金を供与することもなかったことを憂慮し、

(30)  また、一般の人々、特に開発途上国の人々に対する、生物多様性の減少の影響に関しての国際的世論における意識の欠如についても憂慮し、

1.  生物多様性条約及びバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書を未だ批准していない国々に対し、それらとともに、国際レベル及び地域レベルで採択されたその他の生物多様性関連の条約や協定も批准あるいは加入するよう要求する。

2.  各国政府に対し、2010年までに生物多様性の喪失の現在の割合を顕著に逓減させる旨の持続可能な開発に関する世界首脳会議で設定された目標を達成するために、生物多様性条約の履行に当たり、より効果的な行動をとるよう要求する。

3.  各国政府に対し、生物多様性に関する国際及び地域協定を効果的に履行し、また生物多様性条約の目的をよりよく達成するために連携を強化するよう奨励する。

4.  すべての国が、生物多様性の保全のために、当該資源の保全・保持に関する情報や知識を共有及び交換することによって、国境横断的な資源を共有する地域の国々の間の協力を強化するよう勧告する。

5.  自らが締結している多国間及び二国間の合意、並びに法的拘束力のある文書に従い、国境地帯、特に国境横断的な生物圏保護区における自然の生息環境を保護するため、関連する国々が協調的行動をとることを要求する。

6.  これらの国々に対し、共有する自然資源に悪影響をもたらすかもしれない事業について互いに通知、協議するとともに、そのような事業を実施する前に、国際基準に従い、適切な公の協議及び国境を越える影響の評価を含む包括的な環境影響評価が行われることを保証するよう、強く要求する。

7.  各国政府に対し、2010年までに陸上部分、2012年までに海洋部分において、効果的に管理され、生態学的に代表された国内・地域の保護地域の総合的なシステムを構築することを目指した、保護地域に関する作業計画の早期履行に重点的に取り組むよう強く要求する。

8.  各国政府が、とりわけ人口増加及び持続可能でない生産と消費のパターンを、生物多様性の喪失の中心的な原因として認識するよう勧告する。

9.  各国政府が、とりわけ、生息地の喪失及び荒廃を減少させるための方策の調査・調整、外来侵入種の監視・除去、並びに生物多様性条約、国連気候変動枠組条約とその京都議定書及びその他の国際協定の十分かつ効果的な履行による気候変動への取組によって、生物多様性の喪失のメカニズムに対処するよう強く要求する。

10.  全加盟国に対し、適宜、生息域内又は域外における手段を用いて、生物多様性の保全に最善を尽くすとともに、国際植物遺伝資源研究所に援助を申請するよう勧告する。

11.  各国政府に対し、既存の機能するテーマ別の計画及び部門横断的な活動を通じて生物多様性条約を履行するに当たり、以下の事項によって全般的により効果的な行動をとるよう要求する。


・ 公平な方法で保全と持続可能な利用を促進する土壌、水及び生物資源の総合的管理のための基幹的な構想として、生物多様性条約により打ち出されたエコシステム・アプローチの奨励
・ 農業、水産業、森林管理、水管理、観光業及び運輸などあらゆる分野における生物多様性保全目標の組み込み


12.  各国政府に対し、遺伝資源へのアクセス及び公正で公平な利益配分に関する国際的な制度の構築に積極的に努めるよう奨励する。

13.  また各国政府に対し、生物多様性の保全における協力を行うよう奨励するとともに、国際機関及び先進国に対し、この点において資金援助、技術移転及び能力構築を通じて開発途上国を支援する具体的行動をとるよう要請する。

14.  各国政府に対し、持続可能な開発の実現のための貿易及び環境保護の諸協定における相互協力の目的を認識し、生物多様性条約及びバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の目的を、貿易政策において十分考慮するよう強く要求する。

15.  生物多様性条約の締約国及び各国政府に対し、特に先進国・途上国の双方において必要とされる人的・財政的・技術的資源の割当ての拡大により、生物多様性条約及びバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の全面的履行に向けて、あらゆるレベルでの取組を強化するよう要求する。

16.  また各国政府に対し、管轄権を超える海洋地域における生物多様性の喪失を顕著に逓減させるための取組を強化・調整するよう要求する。

17.  各国議会に対し、下記項目を目的とした行動をとるよう要求する。


・ 生物多様性によって生み出される財・サービスの経済的・社会的価値を公的な財政・政策・計画立案・自然資源の管理に関する決定に組み込むため、生態系の健全な管理に関連する経済的及び社会的利益を評価すること。
・ 生物多様性に影響を与える地域の要因を考慮しつつ、生物多様性の保全・持続可能な利用を促進するため、適切な各国別の経済的・社会的な誘導策を策定すること。
・ 生物多様性の喪失又は荒廃につながるような動機を生み出す政策・慣行を排除又は削減すること。
・ 生物多様性条約の目的が、国家の、部門別の、また部門間の計画及び政策に組み込まれることを確実にすること。
・ 必要な場合には、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関連する法的枠組みを更新し、整備すること。
・ 生物多様性に関連する意思決定プロセスにおいて、市民社会組織及び特別な利益団体からのインプットを可能にするために必要なメカニズムを推進すること。
・ 市民社会と意思決定者の間で、生物多様性の保全及び持続可能な利用、並びに経済成長及び社会福祉の関係についての知見、理解及び認識を深めること。


18.  世界中における生物多様性の効果的な保全及び持続可能な利用を支援する国際的パートナーシップを促進する手段として、議会間協力を進展させることに着手する。

19.  環境問題のための特別委員会が未だ設置されていない議会において、そうした委員会が創設され、生物多様性の保全及び持続可能な利用に対処するよう勧告する。

20.  各国政府に対し、地球環境ファシリティを強化するよう要求する。

21.  各国政府に対し、生物多様性喪失の減少のための2010年目標の達成に向けた進捗状況を監視・報告するよう勧告する。

22.  各国政府に対し、重複を避けて相互作用を得るため、関連の機関、計画及び条約間の一層の協力及び調和を含む、首尾一貫した国際的環境管理を促進するよう要求する。



北京+10:議会の視点からの評価

(2004年10月1日(金)、本会議にてコンセンサス2で採択)

第111回IPU会議は、

(1)  女性差別撤廃条約(CEDAW)及びその選択議定書、女性に対する暴力撤廃宣言、並びに、女性に対する暴力の防止・処罰・根絶に関する米州条約を含むその他の地域条約の基本的重要性を認識し、

(2)  1995年9月北京で開催された第4回世界女性会議で採択された宣言及び行動綱領並びに国連特別総会「女性2000:21世紀に向けた男女平等、開発及び平和」(北京+5)で採択された成果文書に留意し、

(3)  北京宣言及び行動綱領並びに行動綱領で強調されている世界各国の女性の社会的、文化的、経済的、政治的地位に関連した12の重大な問題分野の包括的性格を確認し、

(4)  加盟119か国が北京会議で公表されたコミットメントの政府による実施状況の概略を示した国内行動計画を策定していることを認識し、

(5)  国連ミレニアム宣言及び同宣言に盛り込まれているミレニアム開発目標、特にそれがなければ開発を持続できない男女平等及び女性のエンパワーメントという目標を再確認するとともに、北京行動綱領の実施はすべてのミレニアム開発目標を達成するための基本的な前提条件であることにも留意し、

(6)  「民主主義の達成は、男女が公平かつ相互補完的に活動する社会における様々な事柄の管理における男女間の真のパートナーシップを前提とする。これは、男女間の差異がお互いに豊かさをもたらし合うものである。」と述べたIPU世界民主主義宣言(1997年)第4パラグラフを想起し、

(7)  IPU評議員会(パリ、1994年3月)で採択された、政治活動における男女間の現在の不均衡を是正するためのIPU行動計画及び第4回世界女性会議で「議会人デー」への参加者によって採択された北京議員宣言を想起し、

(8)  関連のIPU決議、特に以下を再確認し、

-  政治への男女の参加促進のために不可欠の要素及び人類の発展の必要条件としての教育及び文化(ハバナ、2001年4月)

-  人権一般、特に女性及び子供の人権の尊重と擁護の大いなる促進(北京、1996年9月)

-  女性の真の平等の達成を目的とする女性による意思決定機関へのアクセスと参加のための議会の行動(マドリード、1995年4月)

-  児童及び女性への虐待をなくす政策(平壌、1991年5月)

(9)  女性が社会のあらゆる部門で基本的役割を果たすことを強調し、

(10)  北京会議から10年を経ても女性は引き続き政府、行政、司法制度、経済の意思決定への参加が少ないこと、及び、権力構造への男女の平等なアクセスが人権、正義、民主主義の正統性並びに公共政策の有効性から緊急に必要とされていることに留意し、

(11)  北京会議から10年を経ても実質的な男女平等は今なお現実から程遠いこと(女性は引き続き男性と同じ仕事をしても賃金は男性より少なく、男性より貧困や失業になりやすく、男性より暴力にさらされやすい)に落胆するとともに、女児が教育、健康、個人的な能力開発の面で差別されていることに驚愕し、

(12)  家庭内暴力を含め女性に対する暴力が激しいことを深く憂慮するとともに、これは女性保護、男女平等、女性のエンパワーメント、人権を獲得・強化するための闘いにおける主要な問題であると捉え、

(13)  明年開催される第49回国連婦人の地位委員会が北京会議以降の10年の見直しと評価を行う重要な会議となることに注目し、

(14)  立法・予算・行政監視上の職責及び世論・支援の動員により男女平等を推進する議会の重要な役割を強調し、

これらの分野における議会活動強化のための方策

1.  北京行動綱領で述べられている目標へのコミットメントを再確認するとともに、男性議員、女性議員の双方に対し、国際的にも国内的にも男女平等を達成し、北京会議でなされたコミットメントの進捗状況を監視する議会活動の強化に取り組むよう要求する。

2.  北京行動綱領及び2000年国連特別総会の成果文書の実施状況を検討・評価するため2005年2月28日~3月11日にニューヨークで開かれる第49回国連婦人の地位委員会に派遣する議員を適切な男女構成にするよう勧告する。

3.  各国議会に対し、男女平等の推進と女性のエンパワーメントの実現及び妊産婦死亡率の改善等を含むミレニアム開発目標の達成に向けた努力を促進するよう要請する。

4.  各国議会に対し、2005年に開催される第49回国連婦人の地位委員会(UNCSW)の前に北京行動綱領の国内実施状況について論議し、女性団体及び非政府組織から十分なインプットを得るよう強く要請するとともに、「北京行動綱領(1995年)・第23回国連特別総会(2000年)成果文書の実施状況に関する質問状」への回答を未だ提出していない国の議員に対しては、自国政府に遅延の理由をただし、政府が可及的速やかに回答を提出できるよう手はずを整えることを強く求める。さらに、議会が十分にフォローアップできるよう、各国議会に対しては、第49回UNCSWの結果について議論をするよう強く要請する。

5.  各国議会及び議会間フォーラムの意思決定機関における女性のプレゼンスを強化するとともに、二国間、多国間双方の議会外交関係にける国家代表の男女比をバランスのとれたものにするよう勧告する。

6.  各国議会に対し、男女平等の推進で積極的かつ前向きの役割を果たすとともに、男女双方で構成される男女平等に関する議会委員会の設置、ジェンダー予算分析ツールの導入、あらゆる決定及び立法のジェンダー主流化、これらの活動への十分な資源配分などにより、男女が平等に代表されるための措置を実施するよう奨励する。

7.  各国議会に対し、男女が平等に議会に代表され、その活動に参加できるよう努めるとともに、女性が議題へのアプローチや作成する法律を変更したり、その多様な視点や懸念を盛り込んだりできるよう(ただし、これらに限られない)、あらゆる議会委員会の女性議員数を国連特別総会「女性2000年会議:21世紀に向けての男女平等、開発、平和(北京+5)」に沿って50%を目標に、あるいは少なくとも30%を目標に、増やすよう勧告する。

8.  ジェンダーに関する専門知識を強化し、議員及び議会機関が実質的かつ持続可能な男女平等イニシアティブを策定するのを支援・助言していく必要があることを強調する。

9.  議会人に対し、生活のあらゆる領域におけるジェンダー主流化プロセスでより積極的な役割を果たすよう要請する。

10.  さらに、各国議会及び議会を通じて政府に対し、体系的なジェンダー主流化努力の枠組みの中で、すべての政府の政策及びプログラムを、例えば立法案のジェンダー・インパクト評価を行うなど、ジェンダーの視点から分析するようさらに奨励するとともに、立法府に対しては、予算を含めたすべての法律をジェンダーの視点から検討する慣行を採用し、このために意思決定及び立法問題の参照事項として男女別のデータを収集・分析・利用するよう要請する。

11.  各国議員に対し、自国政府の監督者として、特に女子差別撤廃条約(CEDAW)の下での国際的コミットメントを支持・実施するよう要請する。

12.  男女を問わずすべての議員に対し、男女不平等の問題に画期的な解決策を見出す上で、女性の人権のために活動する既存の制度的メカニズムやNGO(女性組織を含む)と強力な連携を構築するよう要望する。

特定の問題分野への取組

政策分野

13.  国家元首及び政府首脳並びに政党指導者に対し、男女平等への力強いコミットメントを行うとともに、ジェンダー問題を恒久的な優先課題とするよう要請する。

14.  さらに、指導者に対し、すべての国の民主的発展を確保するためあらゆるレベルの意思決定的地位の女性構成比を高めるよう要請する。

15.  各国議員に対し、男女政策の改善に向けて、ジェンダー特有の役割の社会的構築に取り組むよう要請する。

16.  各国議員に対し、クオータ(割当て)制あるいは積極的是正措置(アファーマティブアクション)などによって政党及びあらゆる意思決定レベルで女性のプレゼンス強化を推進するよう強く要請するとともに、議会委員会に対しては、選挙政治で女性議員が少ない理由を突き止めるための公開聴聞会を開き、政府への勧告を行うよう要請する。

17.  女性が投票者及び候補者として市民教育、情報、訓練に完全かつ平等に参加できるようにするとともに、女性の政治参加意欲をくじく否定的な社会的受け止め方と闘う必要があることを強調する。

18.  各国政府に対し、政府内の女性の地位向上及び研修並びに政策及びプログラムにおけるジェンダー的な含意に関連して、大臣及び長官に女性を登用する具体的な年次目標を設定・公表し、これらの目標の達成状況について年に1回報告を行うとともに、公表するよう要請する。

19.  議会における女性をサポートするために、調査を通じて、また必要な場合には議事規則及び審議規則の改定、ジェンダーに配慮した行動規範の確立によって、より充実した環境を整備する必要性を強調するとともに、開会時間をより家庭に優しいものにするよう奨励する。

20.  各国議会に対し、男女双方の政治的責任及び家庭への責務という問題を考慮し、両方の役割を調和させるのに必要な便宜及び支援を提供するよう要請する。

21.  男性、女性、男児、女児をステレオタイプ化せずに描き出すことの重要性に関するジャーナリストその他のメディア関係者向け研修プログラムを整備するよう奨励する。

経済分野

22.  各国議会に対し、国内法によって、不動産の自由な売買、企業の所有・経営、融資への自由なアクセスなどによる女性の経済への参画が可能になるよう要請する。

23.  2015年までに貧困を半減するという国連ミレニアム開発目標を支持するとともに、各国政府が貧困削減戦略の策定に際しては可能な限り女性の特別なニーズを勘案するよう勧告する。

24.  各国政府及び国際機関(特に国際通貨基金及び世界銀行)に対し、小額融資の供与によって中小企業における女性起業家の独立を推進するよう奨励する。

25.  各国議会に対し、労働と家庭のバランス改善に向けた適切な立法・予算・財政措置を講じるとともに、十分な託児施設を整備するよう要請する。

26.  各国議会及び政府に対し、以下の補完的措置により女性の平等を推進するよう強く要請する。

・ 包括的な差別防止法を成立させ、その効果的な実施を確保する。
・ 教育・訓練機会に対する女性及び女児の平等なアクセスを確保する。
・ 女性の起業を支援する。
・ 労働市場への男女の平等なアクセスを保証する。
・ 同一労働同一賃金を保証する。
・ 学校及びメディアにおける関連の公的な情報取組に基づいて男女のパートナーシップを推進する。
・ 特に民間部門の経営陣レベル及び取締役会における男女平等及び男女の平等な参加を確保するために、ジェンダー問題を処理する法律を整備する。
・ 農村部の女性のエンパワーメント及びその特殊なニーズを処理・支援する。

人間の安全保障

27.  各国議会及び政府は万人(特に女性及び子供)を特に貧困、飢餓、感染症(HIV/エイズを含む)、教育の欠如という形による生存、尊厳、生計へのいかなる脅威からも保護する必要があることを強調する。

28.  教育及びリテラシー(読み書き能力)プログラムへの女性及び女児のアクセスを拡充し、リプロダクティブヘルス(生殖の健康)サービスを受ける権利及びそうしたサービスへのアクセスを確保し、貧困を削減し、女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力(売春及び人身売買を含む)と闘うための国内改革を強く支持し、その一層の実施を奨励する。

29.  各国議会に対し、女性に対するあらゆる形態の暴力(家庭内暴力、性的虐待・嫌がらせ、近親相姦、性的搾取、強制売春、殺人、組織的レイプ、女性器切除、名誉の名の下で行われる女性への犯罪などを含む)を禁止する法律を成立させ、その法律が確実に犠牲者を保護するとともに女性に暴力を振るった者を処罰するものとし、その法律の実施及び執行を監視し、女性に対する暴力を根絶するためのプログラムに資源を配分するよう要求する。

30.  武力紛争中の政府及び当事者に対し、国際人道法の規範を完全に遵守し、女性及び子供を保護するために必要とされるあらゆる措置(特に女性及び女児に対する性的暴力を根絶するための措置)を講じ、こうした暴力を振るった者を訴追するよう促す。

31.  各国政府・議会、国際機関、地域機関に対し、戦争及び民族浄化の意図的な手段として行われるレイプその他の形態による女性への非人道的で人間としての尊厳を傷つける取扱いの組織的慣行を特定・非難するとともに、このような虐待の犠牲者にその肉体的・精神的回復のための完全な支援を提供するための措置を講じるよう要求する。

32.  すべての国は女性及び少女に対する性的暴力を含むジェノサイド、人道に対する罪、並びに戦争犯罪が罰せられない状況を終わらせ、その責任者を訴追するための責任があることを強調する。

33.  各国政府に対し、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、特に女性及び児童の取引を防止し、抑止し及び処罰するための2000年議定書」をはじめとする人身売買に関する国際規約の批准及び施行の検討、女性の人身売買を助長する要因への対応、人身売買ネットワーク根絶のための法執行機関間の連携の強化、並びに人身売買の被害者の社会復帰のための資源の配分を行うよう要請する。

34.  メディアに対し、男女平等のカルチャーを支援するとともに差別及び暴力を根絶するため、女性の人権及び持続可能な開発に関する一般の知識及び情報を広めるよう奨励する。

紛争解決、和解及び紛争後の復興

35.  女性、平和、安全に関する国連安全保障理事会決議1325を強く支持し、すべての関係者がその勧告を完全に実施するよう奨励する。

36.  女性は、平和の教育者及び家族と地域社会の世話人として、紛争解決及び和解で主要な役割を果たすことを認識するとともに、互恵、文化の多様性、男女平等に基づいて持続可能な平和を構築できるよう、女性が紛争終結後及びその後の復興プロセスでの民主主義制度の確立に完全かつ平等に参加するよう要求する。

女児

37.  すべての議員に対し、子供及びその権利を保護する厳格な法律がまだ適用されていない場合にはかかる法律を制定するよう強く要請し、特に各国政府及び議会に対し、法整備を含めて、女児への暴行を終わらせるためのあらゆる適切な措置を講じるよう促す。

38.  プログラム・法律・法案の影響の検討、データ・方法・研究の男女別化推進及びジェンダーへの配慮強化、女児の教育・健康・雇用及び文化的コミュニティ・移住のモニタリング、子供を擁護するあらゆる取組における女児への一層の気遣い及び配慮などを行う際には特に女児の問題に焦点を当て、問題を処理する枠組みをより女児に配慮したものとするよう要求する。

39.  刑法制度は、女児の刑事犯罪者に対し、適切な保護を行うとともに、かかる女児の権利(人格や個人の能力に関する権利を含む)を保障するものであるよう勧告する。

40.  IPUに対し、女性器切除その他の有害な伝統及び慣行を禁止するための活動をさらに強力に継続していくよう奨励する。

41.  女児を保護する運動や組織が存在しない場合には、かかる機関が設立されるよう勧告する。情報共有のネットワークとして機能し、女児を差別する慣習や慣行に疑問を呈することができるからである。

全般

42.  ジェンダー問題に関する国際条約や公約(CEDAWを含む)を、すべてのコミュニティに周知させ、国・民族・先住民それぞれの言語に翻訳されるよう勧告する。

43.  「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」及びその選択議定書を未だ批准していない国の議会に対しては、確実に批准が行われるよう要請するとともに、IPUに対し、その周知のためのキャンペーン及びセミナーを通じてCEDAWプロセスにおける議会の役割を引き続き推進するよう奨励する。

44.  各国政府及び国際機関(IPUを含む)に対し、(量的及び質的な)男女別の権力分布状況の分析を可能にするだけの統計データを収集・配付するとともに、すべての統計データを男女別に分ける(男女別内訳を示す)よう要請する。

45.  議員に対し、立法府においてジェンダーの視点を主流化するため、ローカル/国内的・地域的・国際的レベルで、指導力の育成を働きかけるとともに男女平等への戦略的連携を強化するよう要請する。

46.  IPU女性議員会議を通じて、各国議会による北京行動綱領の実施状況を定期的にモニターすることを約束する。

 2インドは留保を表明した。



イラクにおける憂慮すべき状況並びに同国における平和及び安全の
回復に貢献するための議会の行動の必要性

(2004年10月1日(金)、本会議にて全会一致で採択)

第111回IPU会議は、

(1)  イラクの悪化する情勢を大いに懸念するとともに、すべての犠牲者、とりわけ一般国民の犠牲者に対して深い哀悼の意を表し、

(2)  自らの国家の将来を決定し、また自国の天然資源を管理するというイラク人の権利を再確認し、

(3)  イラクの主権、領土の保全及び安全を維持するという原則の堅持を確認し、

(4)  IPUの関連決議、特に第108回IPU会議(サンティアゴ、2003年)において採択された決議及びイラク周辺諸国議長会議(アンマン、2004年)により発表された声明を想起し、

(5)  関連する国連決議、特に国連安全保障理事会決議1546(2004年)及び1557(2004年)を想起し、

(6)  対話の強化及び代表機関の統合によって、平和、民主主義及び協力の促進に際してイラクにおいてIPUが担うべき役割を自覚し、

(7)  イラク人が正常化及び民主化の過程に関与し、また自由選挙の実施を進めることを可能にするための国際会議を開催することについて、現在コンセンサスがあることに留意し、

1.  国家間の紛争解決における多国間外交と国際協力、及び国連憲章の下で武力を行使する権限を付与された唯一の機関としての国連の基本的な重要性を再確認する。

2.  罪のないイラク人及び他国の人々の殺りく、並びに人道支援活動者を含む、相次ぐ人質事件を非難する。

3.  イラクの文化的及び宗教的な場所に与えられる被害に対し、深い懸念を表明する。

4.  国連が、イラクにおける復興プロセスを含む政治的プロセスにおいて、主導的な役割を担わなければならないことを再確認し、また復興プロセスの実施のために、イラクの富・財産が利用されるべきでも、その天然資源を枯渇させるべきでもないことを強調する。

5.  イラクにおける民主主義及び法秩序の回復に向けた自由で公正な選挙の実施並びに新たな正規の議会の設立を要求する。

6.  イラクの人々が、そのすべての天然資源及び文化的資源の単独での所有権を維持しなければならないことを再確認し、また国連、その専門機関及び広く国際社会に対し、同国の盗まれた文化遺産が確実に返還されるようにするため、イラク暫定政府と緊密に協力するよう要求する。

7.  すべての当事国に対し、宗教的、民族的及び文化的権利を含む人権の十分な尊重を確保することを強く要求するとともに、復興の全段階及びイラクの新たな政治的機関の設立における女性の十分な参加を特に強調し、同国の再建におけるすべてのイラク人の十分かつ平等な参加を要求する。

8.  よく調整された支援提供の計画を通じた国際的な専門家及び必要な資源の供給によるものを含む、イラク経済の再建及び発展に向けてイラクの人々を支援するための現在の取組に対する、すべての国家による一層の参加を要求する。

9.  すべての当事国に対し、平和合意の交渉においてすべての段階に女性が十分に組み込まれ、その後の復興計画に、女性の特別なニーズ及びインプットを反映するジェンダーの視点を取り入れることを確実にするよう要求する。

10.  当該地域の安全強化によって、とりわけそのすべてが当該地域の安全保障に直接結び付く、緊張の緩和並びに、イラク国民の苦難の緩和・終焉に向けた人道支援及び復興支援の提供によって、イラクの現状に前向きな変化をもたらすために周辺諸国が担うべき基本的役割を強調する。

11.  2004年5月12日及び13日にアンマンにおいてIPUによって開催されたイラク周辺諸国議長会議により発表された声明に含まれている勧告の実施を要求する。

12.  国連に対し、民主的なイラクの構築に寄与する国際会議を開催する際、IPUの専門的知識を利用するよう奨励する。

13.  国連及びイラクの機関に対し、以下の目的からIPUとのパートナーシップを構築するよう提案する。


(i) 議会制度の構築及び強化を支援するため
(ii) 憲法草案を議論する間、新イラク議会を支援するため
(iii) 民主化と地域の安定という利益のために議会外交を利用するため


14.  前述した勧告が遅滞なく実施されることを確保するため、進捗状況を綿密にフォローしていくことを決定するとともに、IPU議長と事務総長に対し、それに関する報告書を第112回IPU会議に提出するよう要請する。