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第26回ASEAN議員機構(AIPO)総会派遣参議院代表団報告書

団長    参議院議員 小林 正夫
同行    参議院参事 中西  渉
会議要員 参議院参事 外川 裕之

 第26回AIPO総会は、平成17年9月18日から23日まで、ラオス・ビエンチャンのドンチャンパレスホテルにおいて、加盟国の8代表団、特別オブザーバー国の2代表団、我が国を含むオブザーバー国の8代表団、特別ゲスト(東ティモール)の国会議員等約280名が出席して開催された。

  会議の詳細については「第26回ASEAN議員機構(AIPO)総会概要」に譲ることとし、本報告書においては、参加参議院議員の活動を中心に会議等の概要を報告する。

1.会議の概要

 本代表団は、総会期間中に開催された会議のうち、開会式、全体会議、AIPOと日本との対話及び閉会式に出席した。

(1)開会式
 開会式は、9月19日午前9時から10時30分まで、本会議場(ホテル内のコンベンションホールAゾーン)において挙行された。式においては、サマーン・ヴィニャケート・ラオス国民議会議長より開会演説、ブンニャン・ヴォーラチット・ラオス首相による歓迎演説が行われた。

(2)第1回全体会議
 開会式に引き続き、午前11時から第1回全体会議が開かれた。冒頭ラオス以外の加盟国代表団団長を今次総会の副議長に指名し、続いて各国代表団団長が演説を行った。

 小林団長は、本代表団団長として以下のように演説を行った。

 サマーン・ヴィニャケート・議長閣下を始め、ラオス国民議会その他関係者の皆様方に心から感謝申し上げるとともに、第26回AIPO総会の開催に心よりお祝い申し上げる。

 本年は第二次世界大戦の終結60周年に当たる。これを機に、我が国がかつて植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた歴史を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのおわびの気持ちの下、世界の国々との信頼関係を大切に、世界の平和と繁栄に貢献していきたい。

 アジアは、過去半世紀で大きく発展し、世界の成長センターとして高成長を維持するとともに、域内での相互依存関係も大きく深化している。お互いの経済効率を高め合い、ASEANと我が国、中国、韓国等地域の国々で、経済構造を共に高度化していくための幅広い分野を包含する質の高い経済連携協定(EPA)の枠組みづくりを進展させることにより、地域は一層の飛躍的な発展を遂げることができるだろう。

 ASEANは、互いの知恵と努力により、多様性の中にも一体性を育み、地域の平和と安定に大きな役割を果たすとともに、「ASEANビジョン2020」というはっきりしたビジョンの下でASEAN共同体実現を目指す取組を着実に進め、地域全体の統合の原動力になってきたことを高く評価する。本年からのビエンチャン行動プログラムでは、ASEAN統合イニシアチブ(IAI)の更なる強化がうたわれており、人材育成、情報通信技術(ICT)基盤やインフラの整備、地域経済統合という目標に向けた地域格差是正への取組が更に重視されている。我々はこれを支持し、協力を続けていく。

 一方、今後、アジアが持続可能な成長を続けていくためには、エネルギーや資源の使用の効率化、環境への負荷の少ない社会の構築等の取組がとりわけ重要であると考える。本年2月、京都議定書がようやく発効し、我が国も温室効果ガスの排出削減の義務達成のための取組を開始している。人間の活動が地球の処理能力の限界を超えて大きくなってしまった今、我々の対処方法が問われている。我が国は、今週まで半年間にわたり、「自然の叡智」をテーマに愛知県で今世紀初の総合万国博覧会である愛・地球博を開催している。我が国は、3R、すなわち、ごみを減らし(リデュース)、使えるものは繰り返し使い(リユース)、ごみになったら資源として再利用する(リサイクル)ことを推し進めている。我が国には、これまでの取組の経験、技術があり、地域のために貢献できると考えている。科学技術の発展によって、環境と発展が両立する活気に満ちた力強い社会の構築は可能と考える。

 我々が、平和と繁栄を共有する開かれた地域を形成し、輝かしい未来に向け更に前進するには、お互いを必要とするパートナーであることを改めて確認し、ASEAN+日中韓その他関係するすべての地域の国々の協調した取組を進めることが必要である。今年の末には東アジアサミットがマレーシアで開催されることになっており、「東アジア共同体」に向けた一歩が始まる。困難を一つ一つ取り除き粘り強く取り組んでいく上で、国民にビジョンを提示し国民全体のレベルでの相互理解、友好と信頼に裏付けられた強いきずなが重要になる。国民の代表である国会議員に課された大きな責務を確認し、共にそれを果たしていこうではないか。

 各国代表団団長の演説が終了した後、会議日程、議題、委員会の構成等が決定された。

(3)AIPOと日本との対話
 AIPOと日本との対話は、20日午後4時から6時まで開催された。AIPO側からは、委員長を務めたカムシン・サヤコン議員(ラオス)以下、カンボジア4名、インドネシア2名、ラオス2名、マレーシア2名、フィリピン1名、シンガポール2名、タイ2名、ベトナム2名、ブルネイ2名、ミャンマー1名の計21名が出席した。

 委員長からのあいさつ、出席者自己紹介の後、以下のように議論を行った。

〈地域及び国際の安全保障〉 
 まず、小林団長が次のように発言した。

 アジアは政治、経済、文化等で多様かつ急速に変化する地域であるとともに紛争の危険も比較的高いと認識している。最大の懸案である北朝鮮問題に関しては、第4回六者会合において、昨日、北朝鮮がすべての核兵器及び核計画を廃棄し、核不拡散防止条約に復帰することやIAEAの保障措置に戻ることを約束する内容の共同声明が採択された。これを歓迎するものの、核放棄の時期等は不明であり、引き続き注視する必要がある。唯一の被爆国の我が国では、今なお多くの人々が被爆の後遺症で苦しんでおり、核兵器廃絶の重要性を強く訴える。さらに、北朝鮮との間には非常に重要な拉致問題が残されており、拉致被害者が速やかに返還され、その上で国交正常化が果たされることを期待する。マラッカ海峡通過船舶の共同監視システム構築の合意成立や合同パトロール等海賊問題への沿岸国の協力体制の強化・進展に感謝する。我が国はまた、人権問題でありテロの資金源とも指摘される人身取引に対して人身売買罪を新設する等の取組を行っている。

 AIPO側の主な発言は以下のとおりである。

 シンガポール代表からは、沿岸諸国として海上輸送の安全確保に取り組み、今後とも貿易や観光等様々な分野で日本との協力を望んでおり、また六者会合の進展も歓迎するとの発言があった。

 インドネシア代表からは、朝鮮半島の平和と安定の構築についてはASEAN地域フォーラム(ARF)等でも働きかけているが、すべての当事者が受け入れ可能な解決策を見出すよう希望するとともに、第4回六者会合の成果が確実に実施されるよう期待するとの発言があった。インドネシア代表は、さらに、アチェ和平問題に関し支援を求めるとともに、国連改革については安保理常任理事国の拡大問題が優先され、ミレニアム開発目標等重要問題が置き去りにされているとの懸念を表明した。

 その他、国連改革に関しタイ及びベトナムの代表から、日本の常任理事国入りを支持する旨の発言があった。

〈経済協力と貿易自由化〉
 まず、小林団長が次のように発言した。

 我が国にとり貿易は重要であり、最近の景気回復はアジアの成長によるところも大きい。シンガポールに続き、フィリピン、マレーシア、タイとも経済連携の大枠合意ができたことを歓迎している。インドネシア、ASEAN全体、韓国と交渉を開始しており、さらに中国にも広げていきたい。

 AIPO側の主な発言は以下のとおりである。

 マレーシア代表からは、日本からの投資が近年減少傾向にあり、ハイテク関連の投資を誘致できるよう環境整備を行い、両国間の貿易を更に伸ばしていきたいとの意欲が示された。

 カンボジア代表からは、投資を誘致するための法整備を進めていることの紹介とともに、先進国及び富裕国の農産物への助成金や関税障壁の問題を日本も検討してほしいとの発言があった。

 タイ代表からは、日本の農産物市場の開放の要請とともに、両国間のFTAについては、困難はあるが成功裏にまとめられるだろうとの見通しが述べられる一方、多角的な貿易交渉をより重視してほしいとの要請があった。

 インドネシア代表からは、国連ミレニアム開発目標は貧困脱却、社会開発のために必ず達成すべきであること、貿易は持続可能な開発に重要でありWTO等においては発展途上国のニーズを重視するとともに、FTAにはASEAN全加盟国が含まれるようにしてほしいとの発言があった。

 これらを受けて小林団長は、日本からの投資の現状については原油の高騰等により世界経済の先行きが不透明な中で各企業とも新しい事業の展開に足踏みをしている段階ではないかと認識しており、要望は聞いたが投資が各企業の判断に基づくことは理解願いたいと発言した。

〈環境問題、自然災害予防策〉
 まず、小林団長が次のように発言した。

 台風の大型化、熱中症患者の増加、干ばつ、海面上昇等温暖化の影響と見られる変化も現れ、協力した取組が必要である。特に2030年頃までにアジアでエネルギーや資源の消費が大幅に増え、温暖化、大気汚染や水質汚染等の影響が地域、さらには全世界に及ぶことが懸念される。石炭火力発電も可能な限り減らす必要があり、例えば最近ラオスに建設した太陽光発電と揚水式水力発電とを組み合わせたハイブリッド発電所等我が国には様々な技術があるので、各国のニーズに沿った協力ができるだろう。

 AIPO側の主な発言は以下のとおりである。

 ベトナム代表からは、3Rは非常に良いイニシアチブであるとの発言があった。

 タイ代表からは、「自然の叡智」という愛・地球博のテーマに感銘を受け、日本の様々なアイディアや進んだ考えを学ぶためにより多くの留学生を迎え入れてほしいとの要請があった。

 カンボジア代表からは、生活環境の改善に努力しており、リサイクル、公害対策、廃棄物管理に関する技術支援をお願いするとの要請があった。

 これらに対し、小林団長は次のように発言した。

 日本も一定の経済成長を遂げた後に公害問題、環境問題に気付き、様々な法整備を行い、苦労してリサイクルの技術を開発してきた。技術面での協力とともに、環境教育、人材育成も非常に重要である。環境問題は国際協力の必要性が高い課題であり各国と連携し取り組みたい。自然災害予防対策については、昨年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波災害の際に指摘された津波早期警戒システムの構築等において貢献できるだろう。

〈教育、文化協力〉
 まず、小林団長が次のように発言した。

 核家族化、少子化、都市化等により家庭生活の中での教育が難しくなってきた。しっかりした教育が必要との認識に立ち国会でも論議している。また、子供の学力低下を示す数字も出てきており、勉強の環境づくりの方策等について検討している。また、文化協力は、人々が国を超え相互に理解し発展するために重要である。この会議でもすばらしい文化に触れその思いを強くした。

 AIPO側の主な発言は以下のとおりである。

 フィリピン代表からは、子供の学力低下が指摘される中、研修や奨学金等、教育の人材育成制度の充実を図るための更なる支援の要請があった。

 マレーシア代表からは、「マレーシア日本国際工科大学」の設立に対する日本の一層のコミットメントの要請があった。

 シンガポール代表からは、高等教育の発展や留学生の増加等今後両国間で一層教育や文化面での結び付きが深まることへの期待が示された。

 最後に、小林団長は、様々なプロジェクトが機能し発展するよう支援していきたいと発言した。

〈技術移転〉

 まず、小林団長が次のように発言した。

 これまで主にODAにより人づくりや技術面の協力を行ってきたが、現在NGOやボランティアを通じアジアの発展に貢献したいと考える我が国国民が増えている。是非日本の優れた面を伝える努力をしたい。ASEANで日本語教育が進めば円滑化し相互理解も深まろう。一方で海賊版対策、模造品対策の強化をお願いしたい。

 AIPO側の主な発言は以下のとおりである。

 ラオス代表からは、技術移転は様々なレベルでの交流を推進する手助けになるとして、特にカンボジア、ラオス、ミャンマー及びベトナムの情報コミュニケーション技術能力向上のため重点的な支援の要請があった。

 シンガポール代表からは、政府にとどまらず技術者や学生等様々なレベルで日本との人事交流を進め、ASEAN内でこうした人材が技術協力や技術移転等で活躍するようになれば、ASEAN、日本双方に有益であるとの発言があった。

 最後に、小林団長は、様々な人との交流を深め、人間全体が発展する環境を作りたい。優れた技術を出し合い、良い世界にしていきたいと発言した。

(4)第2回全体会議
 第2回全体会議は、22日午後2時から午後3時30分まで開催された。各委員会から報告書及び決議案が提出され、いずれも採択された。また、次回総会を2006年9月10日から15日までフィリピンで開催することが合意された。最後に、共同コミュニケを採択し、加盟国及び特別オブザーバー国代表団団長による署名が行われた。

(5)閉会式
 第2回全体会議に引き続き、午後4時から4時30分まで閉会式が挙行された。サマーン・ヴィニャケートAIPO議長による閉会演説の後、AIPO議長職及び事務総長職の引継ぎが行われ、新議長の代理としてフィリピン下院議員による受諾演説が行われた。

2.交流行事等

 小林団長は、本代表団団長として、総会期間中、カムタイ・シーパンドーン・ラオス大統領、サマーン・ヴィニャケート・ラオス国民議会議長・AIPO議長への表敬訪問を行った。また、8カ国から約50名の参加を得て本代表団でレセプションを主催したほか、韓国代表団主催レセプションにも出席する等、各国議会議員との交流を積極的に行った。

 さらに、会議の合間等を活用し、矢崎総業の現地工場やナムグムダムを視察し、ポンサワット筆頭外務副大臣、トンルン副首相兼計画投資委員会委員長への訪問等を行った。これらの活動を通じ、ラオスの現状、発展のための戦略及び我が国に対する要望や期待等についての認識を深めた。

3.終わりに、

 以上が会議の概要であるが、本代表団は、帰途タイにおいて、インド洋津波災害で大きな被害を受けたプーケット島周辺の被災地域を訪れ、被害や復興の状況等を視察し、犠牲者、不明者の御冥福と御無事をお祈りした。

 本報告を終えるに当たり、今次総会の議長国を務めたラオス国民議会、AIPO関係者の方々の御厚情並びに関係在外公館の方々や視察先関係者等の多大なる御協力に対し、ここに改めて感謝の意を表する。