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(3)エンリケ・ムヒカ護民官
(Enrique Mugica)
9月10日(月)16:10〜17:00
(同席者)
マリア・ルイサ カバ・デ・ジャノ第一副護民官
マヌエル アギラール第二副護民官
マヌエル アスナール事務局長
田中克之在スペイン日本国大使
[略歴]
1.生年月日 1932年 サンセバスチャン生まれ
2.学歴 法学士
3.職歴
1956年 青年作家のための学生大会実行委員長(反フランコ運動家として逮捕)
1977年 下院議員に当選(社会労働党 国防委員長、憲法副委員長などを歴任)
1988年 司法大臣
2000年 護民官
[質疑応答]
(ムヒカ護民官)
護民官の役割については、憲法第54条に定められている。すなわち、市民の基本的人権の擁護及び行政権の監視で、公権力を対象にして行う。ただし、司法の独立との関係から、司法権は別である。
(調査の端緒として)市民から人権を侵害されたという訴えの書面を受け取ることもあるし、我々自身が調べることもある。人権が侵害されたと思われる場合、その場所、例えば、病院、刑務所等を訪問しながら調査する。
また、行政省庁が調査に協力しない場合には、護民官に従わないということで罰則を科すことができる。
護民官の一つの役割として、憲法裁判所に提訴することができる。ちなみに、憲法裁判所に提訴することができるのは、(1)内閣総理大臣、(2)50人の下院議員又は上院議員、(3)自治州政府及び議会、(4)護民官の四つの公的機関のみである。
護民官はあらゆる政党から独立しており、任期は5年である。これに対し、議会の議員の任期は両院とも4年である。護民官の選出に当たっては、両院の5分の3以上の賛成票が必要である。したがって、与党と主な野党の合意がないと任命できない。
「護民官」は、護民官1名と副護民官2名で構成されている。副護民官の任命も両院の5分の3以上の支持がなければならない。なお、事務局長の任命に議会の承認は不要である。
護民官の制度・組織は、具体的には、組織法で定められている。
なお、議会には、上院議員と下院議員で構成された委員会があり、必要に応じて出席し、また報告書を提出している。
(野沢団長)
スペイン憲法は、特に人権に配慮した憲法で、護民官の立場は特に重要であると思われる。憲法の人権を具体的に監視する重要な役割を有しているそうだが、その実績、提訴件数等から伺いたい。
(ムヒカ護民官)
先ほどの説明を少し補足する。護民官は政党色を持っていてはならない。ただ私は、社会労働党出身で23年議員をやっていたし、司法大臣を務めたこともある。
カバ・デ・ジャノ副護民官は民主党の議員、アギラール副護民官は社会労働党の議員であった。
(カバ・デ・ジャノ副護民官)
護民官は、憲法第162条に従い、違憲の提訴をすることができる。創設以来19件の提訴をした。うち6件はまだ判決が出ていない。
また、人権保護に関する訴訟は10件であった。9件は認められ、1件は判決前に護民官が取り下げた。
(ムヒカ護民官)
私たちは、司法権に関して訴えることはできないが、裁判が遅すぎるとの市民からの苦情が多い。私たちは訴えることはできないが、その旨を検察側に伝えている。
(高野議員)
対象は公権力だけか。マスコミ等も含まれるのか。
(ムヒカ護民官)
公権力が対象である。マスコミ等は民間なので含まれない。
(小泉議員)
二点伺いたい。まず、護民官制度が憲法で規定された背景、理由が知りたい。
(ムヒカ護民官)
ヨーロッパ各国にはオンブズマン制度があるが、スペインの護民官ほどの権限を持っていない。ただ、ポルトガルの護民官は同じような権限を持っている。両国は兄弟のようなものだが、共に専制政治の苦い経験を持っている。その経験から、人権に対する強い保障を憲法で定めた。すべての国民が人権侵害されたと思うときは訴えることができるように、護民官を創設したのである。
ラテン・アメリカ諸国でも、民主化を進めるに当たって、スペインをモデルにして護民官を設置した。そしてその結果として、ラテン・アメリカ諸国のそれは似たものとなっている。護民官の選出には議会の賛成が必要であり、護民官に関する組織法も似たものとなっている。
ポルトガル、ラテン・アメリカ諸国と共に護民官の連合組織を作っており、年に一回集まっている。
(小泉議員)
もう一点だが、公権力による違憲行為や公権力による人権侵害行為を監視しているというが、公権力がサボタージュしている場合についてもできるのか。
スペイン憲法の場合、教育を受ける権利、労働組合の権利、障害者の権利等、社会権を重視しているが、それらについて公権力がサボタージュして守らない場合に勧告を出すことがあるのか。
(アギラール副護民官)
教育、医療などの社会保障等において行政が行うべき義務を果たしていない、あるいは市民に満足すべき回答を出していない公権力に対する調査を、市民の訴えをもとに又は自分たちのイニシアティブによって取り上げることができる。
例えば、ここができて間もない時に、医療にアクセスできないあるグループの人たちがおり、その人たちもアクセスできるように勧告した。今は、医療は国民すべてに対して保障されているので、その質が問題となっている。
(ムヒカ護民官)
スペインでは、アメリカ等とは違い医療サービスは万人に保障されている。
(松村議員)
まず、護民官の数を尋ねたい。次に、護民官がいることによって国民に絶対に役立っていて、この制度は是非、日本の憲法に入れた方が良いと評価しているか尋ねたい。
(ムヒカ護民官)
最初の質問について。「護民官」は機関の名前である。その名義人は私自身だが、最初の護民官はヒメネス氏で、元教育相であり、教授、弁護士でもあった。フランコ時代の護民官だったが、非常に民主的な人だった。二人目は、憲法制定後の最初の下院議長であった。三人目は私である。
スタッフ数は、約150人である。この中には、24時間の受付を行っている人もいるし、警備員もいる。地方によっては、地方護民官がいる。ただし、我々と同じ権限はないので、憲法裁判所への提訴などはできない。
我々は、全スペインを管轄している。そして年一回、地方の護民官と打合せの会合を行っている。
次の質問について。スペインの公権力は、護民官を大変尊重してくれる。スペイン国民の人気も高く、広く受け入れられている。ちなみに、一番高いのは王室で、次は護民官である。
日本国憲法への導入の是非であるが、それは各国によって事情は違うから、日本についての意見は控える。
(松村議員)
公務員の腐敗に対する調査は行うか。
(カバ・デ・ジャノ副護民官)
公務員の場合、法規違反は護民官の監査の対象となる。したがって、行政省庁は、私たちが要求する書類はすべて提出しなければならない。国の安全保障などの理由により提出できない場合は、内閣の合意がないと拒否できない。
(野沢団長)
調査に要する経費はどうか。
(ムヒカ護民官)
すべて護民官の負担である。護民官の予算は、国会の予算に入っている。
(松岡議員)
議会への報告はどのようにするのか。
(ムヒカ護民官)
二つある。議会には、25人〜30人の委員から成る護民官委員会がある。なお、この定数は国会回次によって変動する。護民官は、この委員会に必要な回数だけ、また、委員会からの要請があればその都度、出席する。
それとは別に、上下両院各々で活動報告をしなければならない。
(松岡議員)
スペインは、国−州−県−市町村の四層組織だが、護民官組織も四層あるのか。地方の実態はどうか。
(ムヒカ護民官)
護民官は、末端に至るまで、国、地方政府すべての活動が対象である。また、自治州によって、護民官を設けているところもある。地方の護民官は、その地方だけを管轄する。
(松岡議員)
地方から直接マドリードに訴えが来ることもあるのか。
(ムヒカ護民官)
直接訴えが来る。例えば、刑務所できちんとした扱いを受けていないとの訴えの場合には、担当官を派遣することができる。しかし、地方の護民官は、国の管轄の組織に対しては、調査できない。
また、議会で法律が制定され、それが違憲と思われるときは、護民官はそれを憲法裁判所に訴えることができるが、地方の護民官はできない。
それから、市町村や県の行政機関が護民官に従わないとき、刑法の不服従罪に問われることがある。これは国の護民官についてのみ対象となる。
(田中大使)
護民官に地方支所のような組織はあるのか。
(ムヒカ護民官)
マドリードのみである。当初から支所は設置されていない。マドリードからスペインのどこへでも出向いていく。
(小泉議員)
19件の違憲訴訟はどのような事例か。
(ムヒカ護民官)
このメンバーになってからは1件もない。ただ、50人の議員の賛成がないと訴えられないにもかかわらず、8人の議員から成る政党が外国人法に関して訴えてくれと言ってきたことがある。
(カバ・デ・ジャノ副護民官)
「データ法」が違憲であると訴えたことがある。この外、兵役につき良心的兵役拒否が認められているがこれに代わるシビル・サービスについての訴訟、また、「労働組合自由法」が労働組合活動の自由を十分に保障していないとした訴訟等がある。
(ムヒカ護民官)
その「データ法」は、国の扱うデータの中に個人のプライバシーが含まれているという場合に問題があるというものであった。
ただ、スペインは法治国であるから、議会で法律が定められる。(その法律を覆すには、)しっかりした正当化の理由が必要である。護民官が行うのは個人の保護が中心で、公権力に対抗するバリケードを作っているわけではない。
護民官は、国及び地方の政府が相手であり、公権力行使に対する勧告を通して、ある意味で、議会の審査を深めていくことに貢献している。ただ、これらの機関が自分のやり方に固執しているときに(最後の手段として)訴訟を起こすのである。
(野沢団長)
これらの活動はすべて公表するのか。
(ムヒカ護民官)
すべての活動について文書による厚い報告書を作成している。便宜のためにCD版も作成している。
(野沢団長)
マスコミはこれらの活動内容を報道するか。
(ムヒカ護民官)
この報告書は、国会議員全員に配付される。マスコミは報道することも、しないこともある。外国人法について憲法裁判所に提訴すべきことを左派政党が要請した際には、マスコミは1か月くらい報道した。
それから「年間報告」のほかに、特別報告書を出すこともある。例えば、刑務所の処遇や女性に対する暴力などについてのものなどである。
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