質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第二五号

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例と憲法第九十四条との関係に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年三月九日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   香川県ネット・ゲーム依存症対策条例と憲法第九十四条との関係に関する質問主意書

 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(令和二年香川県条例第二十四号。以下「本件条例」という。)は、その前文に「世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病と認定された」という文言が存在するが、世界保健機関は「ゲーム障害」を正式に疾病として認定しておらず、政府も、「ゲーム障害を精神疾患に位置付けるか否かに関する質問主意書」(第二百七回国会質問第九号)に対する答弁(内閣参質二〇七第九号)においてそのことを認めたところである。ところが、政府は、私の知る限りにおいては、ゲーム依存症対策関係者連絡会議の資料を密かに修正した程度で、正式に「疾病」や「精神疾患」と認められた訳ではないことを積極的には周知していないように思える。疾病及び関連保健問題の国際統計分類第十一回改訂版(以下「ICD―11」という。)において、「Gaming disorder」として、「Mental, behavioural or neurodevelopmental disorders」の「Disorders due to substanceuse or addictive behaviours」に分類されたことをもって、世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病として認定されたと誤認する自治体が多数存在すると考えられるが、これでは、香川県が本件条例を制定してしまったように、「ゲーム障害」が「精神疾患」や「疾病」であるといった、前提からして間違った政策が地方自治体で推し進められることが避けられないように思える。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 政府は、「ゲーム障害」が未だ「疾病」や「精神疾患」と位置付けられていないことを、地方公共団体に対し十分に周知しているか。また、地方自治体が、「ゲーム障害」が「精神疾患」や「疾病」ではないことを知る手段は存在するか。あれば例示されたい。

二 香川県は、本件条例に従い、「世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病として認定された」という文言が入ったリーフレットを大々的に配布しているが、政府見解とは明らかに異なる文言が挿入されたリーフレットを香川県が配布することに対し、政府の見解如何。また、このような医学的な政府見解と真逆のリーフレットを地方自治体自ら頒布することが許されるなら、新型コロナウイルス対策として空間除菌を推奨したり、「免疫力を高めればマスクは不要」等と称してマスク着用をやめるよう勧奨したりするリーフレットの頒布も許されることとなるから、もはや、公衆衛生など保てないのではないか。政府の見解如何。

三 厚生労働省のホームページ「依存症についてもっと知りたい方へ」の中には、「依存症の診断には専門的な知識が必要」とあり、具体的には、医師の診断が必要であると思われるところ、「ゲーム障害」は疾病であるとか、精神疾患であるとは言えないのであるから、今の日本において、誰かを「ゲーム障害」であるなどと診断できる医師は誰一人存在しないのではないか。政府の見解如何。

四 本件条例は、「世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病として認定された」ことを立法事実としており、その認識が明らかに誤りである以上、憲法第九十四条違反との批判を免れないのではないか。政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。