質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八八号

核シェルターの普及状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十二月四日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   核シェルターの普及状況に関する質問主意書

 戦略上のシェルターは、戦争時の各種攻撃を避けて生き延びるために人間が一時的に利用する空間であるとされる。収容人数が数千人規模のもの、一般家庭用の小型のものなど様々なものが存在している。多くは地下に設置され、第二次世界大戦後には、いわゆるNBC兵器による攻撃を想定したものが建設されるようになった。
 わが国で公開されている核シェルターに関する情報は、NPO法人「日本核シェルター協会」によるものしか見当たらない。同協会が二〇一四年に発表した資料によれば、各国の人口あたりの核シェルター普及率は、スイス、イスラエルが百%、ノルウェーが九十八%、アメリカが八十二%、ロシアが七十八%、イギリスが六十七%であるのに対して、日本は〇・〇二%とされる。スイスでは、一九六二年の米ソ冷戦下でのキューバ危機を受けて、一九六三年に全戸に核シェルターの設置を義務付ける連邦法が成立している。
 一方、日本では、二〇〇五年五月二十日の参議院予算委員会における、日本でも核シェルターを整備すべきとの指摘に対する「そこまで私は国民的な合意が得られるかどうか、なかなか難しい問題だと思っております」との小泉総理(当時)の答弁、二〇一七年九月五日の衆議院外務委員会における「シェルターあるいは防衛システムの導入といった国民保護の観点については、やはり関係省庁全体がまとまって検討していくというふうに思っています」との佐藤外務副大臣(当時)の答弁などからも分かるように、核シェルターに関する政府内の議論はほとんど進んでいない。
 万が一、わが国に核ミサイルが着弾した場合、一体どうやって国民はわが身を守ればいいのか。二〇一七年から運用が開始された全国瞬時警報システム(Jアラート)は、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がある場合に使用されるが、Jアラートは「屋外にいる場合は近くの建物(できれば頑丈な建物)の中又は地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)に避難してください。屋内にいる場合は、すぐに避難できるところに頑丈な建物や地下があれば直ちにそちらに避難して下さい。それができなければ、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動してください」と国民に促すにとどまる。
 世界各国では、核ミサイルの脅威への備えの重要性を認識し、いざという時の避難場所として、核シェルターの整備を政府主導で進めている。わが国は唯一の被爆国であり、周囲を中国、ロシア、北朝鮮などの核保有国に囲まれているにもかかわらず、核シェルターの普及が全く進んでおらず、議論すら行われていない。緊迫する北東アジア情勢に鑑みれば、有事には、どのような方策があれば国民を安全かつ確実に守れるか、政府・国民ともに真剣な議論が求められていると考える。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 わが国の核シェルターの普及状況について、政府の把握しているところを示されたい。また、アメリカ、ロシア、イスラエル、イギリス、フランスにおける普及状況についても、政府の把握しているところを示されたい。

二 核シェルターの整備については、右の小泉総理の答弁と同様、現時点でも国民的な合意を得られるかどうかは難しい問題であるとの認識が政府内で維持されているとの理解でよいか。

三 政府は、日本の領域内において弾道ミサイルの落下又は通過の可能性がある場合に、Jアラートで国民に待避を促すのであれば、核ミサイルの着弾にも耐えうるような核シェルターの普及を図るべきではないか。政府の見解如何。

四 政府は、日本の領域内において弾道ミサイルの落下又は通過の可能性がある場合に、Jアラートで「屋外にいる場合は近くの建物(できれば頑丈な建物)の中又は地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)に避難してください」と国民に促すが、これは、これらの場所が核ミサイルの着弾に対しても十分に有効な核シェルターとして機能すると考えているためか。政府の見解如何。

五 多くの有識者からもその必要性が指摘されているように、唯一の被爆国であるわが国は、これまでの政府の見解を修正し、政府主導で核シェルターの普及のための検討をはじめるべきではないか。そして、アメリカ、ロシア、イギリスのような水準の核シェルターの普及を実現すべきではないか。

六 前記五に関して、既に核シェルターの普及のための検討を政府内で開始しているのであれば、その検討状況の概略を示されたい。開始していないとすれば、検討の事実はいまだない旨を示されたい。

  右質問する。