質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第八一号

六ヶ所再処理工場や東海再処理工場に貯蔵されている高レベル廃液の重大事故評価が旧西ドイツ政府の大事故評価と異なること等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年六月二十六日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   六ヶ所再処理工場や東海再処理工場に貯蔵されている高レベル廃液の重大事故評価が旧西ドイツ政府の大事故評価と異なること等に関する質問主意書

 日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場(以下「六ヶ所再処理工場」という。)や日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所の再処理技術開発センター(以下「東海再処理工場」という。)に貯蔵されている高レベル放射性廃液(以下「高レベル廃液」という。)の冷却が止まると、旧ソ連キシュテム再処理施設の事故(以下「ウラルの核惨事」という。)のような事態や、旧西ドイツ原子炉安全研究所が作成した核燃料再処理工場の大事故評価に係る報告書(以下「IRS-290報告」という。)に記載のある「国民の半数死亡」が現実になる可能性がある。
 我が国の原子力施設において、国民を不幸に陥れる重大事故を二度と起こさせないため、高レベル廃液の危険性の評価について以下質問する。

一 IRS-290報告では、「高レベル廃液貯槽事故時に放出される放射性物質の割合」として代表的な二十四の元素について蒸発乾固後の溶融揮発による環境放出割合が示されている。
 しかるに、本年一月二十八日に行われた第二百五十七回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合の資料二-二「蒸発乾固に係る評価の再整理」では、六ヶ所再処理工場の高レベル廃液に含まれる多種多様な放射性核種のうち環境放出評価がなされているものはルテニウムだけである。IRS-290報告と異なり、ストロンチウムやセシウム、アメリシウム等の重要危険放射性元素(核種)の環境放出評価が全く行われていないのはなぜか。

二 IRS-290報告では、再処理工場の大事故時に住民の受ける推定被ばく線量(放出点からの距離における決定臓器毎の被ばく線量)を評価しているが、六ヶ所再処理工場及び東海再処理工場について、重大事故時に住民の受ける推定被ばく線量を評価、公開しないのはなぜか。

三 ウラルの核惨事について原子力百科事典「ATOMICA」には、「高レベル廃液の貯槽が爆発を起こした。主な放射性物質はストロンチウム90であり、幅三十から五十キロメートル、長さ三百キロメートルにわたり汚染された」旨記述されている。ウラルの核惨事は、のちに国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル六とされた。このような事故が、六ヶ所再処理工場や東海再処理工場で絶対に起きないとは断言できないのではないかと考えるが、両再処理工場において現に貯蔵されている高レベル廃液中の有機物の混入割合を示されたい。また、両再処理工場ではこうした大惨事が起きないと政府が考える場合は、その根拠を示されたい。

四 本年三月二十日に開催された第六十七回原子力規制委員会の資料四「日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可申請書に関する審査書」や前記一の「蒸発乾固に係る評価の再整理」では、高レベル廃液の冷却が止まり蒸発乾固した後の水分の存在しない領域において出現する放射性物質の揮発、爆発、貯槽損傷といった危険の種類が挙げられているだけであり、いずれどの貯槽も蒸発乾固後にあたかも自然に収束するかのような記述がなされており、日本原燃株式会社の申請書の文言をそのまま引用したような資料を基に新規制基準適合性審査が終了させられようとしている。これは、使用済燃料の再処理の事業に関する規則(以下「再処理規則」という。)第一条の三第二号が「液体状の放射性廃棄物を冷却する機能が喪失した場合にセル内において発生する蒸発乾固」を重大事故の一類型と定義していることを根拠に、新規制基準適合性審査においては蒸発乾固に係る評価さえ行えば足りると政府が考えているためと思われる。しかし、蒸発乾固に引き続いて起きる放射性物質の揮発、爆発、貯槽損傷こそが真の重大事故につながるものではないのか。新規制基準適合性審査において、高レベル廃液の危険性の判断に当たり、蒸発乾固に係る評価のみで済ませ、揮発、爆発、貯槽損傷といった放射性物質の真の危険性の評価を要しないとすることは、国民を重大事故から守るために設けられたはずの再処理規則の看過できない不備と思われるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。