質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一一一号

「BEPS防止措置実施条約」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月十八日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   「BEPS防止措置実施条約」に関する質問主意書

 第百九十六回国会で承認された「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」、いわゆる「BEPS防止措置実施条約」について、以下の通り質問する。

一 OECDによると、BEPSにより失われた法人税収の逸失規模は、世界全体で年間約十二兆円から約二十八兆円、割合でみると約四%から約十%に上ると推計されている。本条約を締結するだけでは、税収の逸失を全て防止できるわけではない。それゆえ、平成二十七年十月に公表されたBEPSプロジェクトの最終報告書においては、BEPS対策として様々な行動が求められているが、我が国におけるこれまでの対応と今後の取組方針を明らかにされたい。

二 前記最終報告書では、多国籍企業などによる国際的な租税回避行為に対応するための様々な措置を勧告している。同最終報告書の公表から約二年半が経過しているが、同最終報告書の公表後に新しく認識された国際的な租税回避行為と、これに対応するための措置等をそれぞれ示されたい。

三 本条約は、本条約第2条1(a)に規定する全ての対象租税協定を修正する旨規定している。我が国は、締結している二国間の租税条約のうち、原則として相手国との間で本条約の適用対象とすることについて認識の一致をみた二国間租税条約を対象租税協定とすることを予定している。本条約の対象租税協定となる可能性のある二国間租税条約を我が国と締結している国・地域の数を明らかにされたい。

四 前記三の本条約の対象租税協定とするための交渉は、いつ頃までに終えることを想定しているのか明らかにされたい。

五 前記最終報告書に示された勧告内容ではIT多国籍企業への課税が十分になされないとして、一層の取組を求める声がある。この指摘に対して、我が国はどのような対応を行う方針か。
 特に、現在の税制は、外国法人の事業所得について、当該外国法人が消費国(源泉地国)に物理的拠点を有する場合に課税する取扱いとされている。しかし、電子商取引等が活発に行われる近時の「デジタル経済」では、外国法人は消費国で物理的拠点を有することなく、事業を展開することが可能である。この現在の税制が経済活動の実態に必ずしも対応していない問題について、今後どのように対応していこうと考えているか明らかにされたい。

  右質問する。