質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第二四号

在日米海軍横瀬駐機場のエアクッション型揚陸艇による夜間航行訓練に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十二月一日

仁比 聡平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   在日米海軍横瀬駐機場のエアクッション型揚陸艇による夜間航行訓練に関する質問主意書

 在日米海軍は、二○一七(平成二十九)年十一月七日から九日にかけて、長崎県西海市にある横瀬駐機場のエアクッション型揚陸艇(以下「LCAC」という。)による夜間航行訓練を初めて実施した。
 本夜間航行訓練については、地元西海市が「夜間及び早朝のLCACの航行については行わないよう米軍と調整するという協定書の内容を反故にするもの」であるとして中止を強く要請し、また、瀬川漁協が「我々の組合員だけでなく、夜間操業等を行っている漁業者が安全に操業する為にも認めることはできません」と表明する中で強行されたものである。これは、米軍基地を抱える地元自治体、住民を愚弄し、海域の安全と安心を踏みにじる暴挙である。
 そこで、以下質問する。

一 LCACは、海上の揚陸艦から米海兵隊員や軍用車両を積載し敵地に強襲上陸するために使用する、言わば「殴り込み」のための揚陸艇である。約九十トンの船体を浮上させプロペラで進む構造で、水しぶきを巻き上げ、轟音とともに海上を航行するため、塩害や騒音被害が強く懸念されてきた。西海市及び報道によれば、本夜間航行訓練は七日にLCAC二隻、八日に同三隻、九日に同一隻で行われ、いずれも日没前に横瀬駐機場を出港し、日没の約一時間後に帰港したとされている。西海市によると、寄船地区においては、本夜間航行訓練により、騒々しい工場の中以上の騒音に相当する九十デシベルにのぼる騒音が測定されたとのことである。
 以上を踏まえ、本夜間航行訓練において、具体的に、いつ、どこで、何隻のLCACによって、どのような訓練が行われたのかそれぞれ明らかにされたい。また、本夜間航行訓練を含め、これまでのLCACの運用に伴い、地元自治体や住民にどのような被害があったと認識しているか明らかにされたい。

二 米海軍のLCAC施設をめぐっては、佐世保市で運用中止の声が広がり、移駐先とされた西海町(当時)が同施設を受け入れる大前提として、二○○○(平成十二)年一月二十六日、福岡防衛施設局(当時)と「横瀬貯油所内におけるLCAC施設の整備等に関する協定書」を結んだ経緯がある。また、同施設の運用にあたり、合併後の西海市が、二○一二(平成二十四)年十一月九日、九州防衛局と「横瀬LCAC施設の運用に関する協定書」を結び、前記二○○○年の協定書が「今後とも効力を有すること」を確認している。
 前記二○○○年の協定書に明記されている、LCACによる「夜間、早朝の航行については行わないよう米軍と調整する」ことは、従来防衛省が認めてきたとおり、前記協定書の当事者である防衛省の義務だと考えるが、認識を明らかにされたい。

三 二○一四(平成二十六)年に米海軍が九州防衛局を通じて西海市に対し、LCACの夜間航行訓練の実施を打診した際、西海市は「船舶の安全や住民の安心が脅かされる」として、これを拒否した。このとき政府は、前記二○○○年の協定書に基づき、LCACの夜間航行訓練を行わないよう米軍と調整したと承知しているが、その調整内容を明らかにされたい。

四 西海市によれば、本年十月三十日、米海軍が九州防衛局を通じて本夜間航行訓練の実施を一方的に通告した際、九州防衛局が「訓練実施は止むを得ないものと判断した」旨発言したとされているが、この旨の発言があったのは事実か明らかにされたい。この旨の発言があったとすれば、前記二○○○年の協定書に基づく防衛省の米軍との調整義務に背くものではないか。また、前記二○一二年の協定書の調印式で九州防衛局長が「今後も内容をしっかり守り、安全・安心の確保に万全を期したい」旨発言したことに反するのではないか。

五 在日米軍司令部は、本年十一月九日、自身の公式ツイッターで、「昨日の毎日新聞の記事に対する、在日米軍司令部からのコメント」として、「米国と日本の間では、米海軍が夜間にLCACの訓練をしないという合意は一度もなされていません。米国は、記事で書かれたような協定の当事者ではなく、その条件のいずれにも同意したことはなく、拘束されたこともありませんでした」と述べた。さらに、同月二十一日のNHKの報道によれば、米海軍佐世保基地の司令官ブラッド・ストーリングス大佐が取材に応じ、「今後、どの時間帯に訓練が行われるかは今回の訓練が目安になる」、「佐世保基地に配備されているLCAC部隊はこれまで夜間訓練を免除されてきたが、海軍上層部の決定で行われることになった」と述べたとしている。これらの見解は、我が国の主権も、地元自治体・住民の苦しみも、全く意に介さない植民地意識丸出しの暴言であり、従来防衛省が示してきた認識にも反するものである。政府はこのような米軍の見解を容認するのか。

六 十一月三十日の報道によれば、米海軍佐世保基地は、「制限なくLCACを運用することが長年の目標」、「横瀬にLCACを移転させる日米共同の計画にはこの(制限のない運用という)目標が当初から組み込まれていた」との認識を示しているが、言語道断である。政府は、米軍のこのような認識を承知していたか。また、米軍がこのような認識を示したことについて、米軍に抗議したか。

七 十一月二十一日に私及び赤嶺政賢、田村貴昭両衆議院議員、真島省三前衆議院議員、堀江ひとみ長崎県議、渕瀬栄子西海市議が本夜間航行訓練について防衛省の説明を求めた際、同省は、「二十四時間即応体制を維持するため、夜間訓練を行う必要があるとの米軍の考えは理解できる」、「日没後一時間以内に帰港するなど、一定の配慮を行った」との驚くべき認識を示した。これは、協定書という地元との重い約束を踏み破り、米軍の身勝手な訓練を容認し、訓練に伴う被害を一方的に地元に押しつけるものであり、撤回すべきではないか。

八 西海市議会は、十一月二十日に開かれた臨時議会で、「LCACの夜間航行の禁止を求める意見書」を全会一致で可決した。同月二十二日には、西海市長、同市議会議長らが防衛省と外務省を訪れ、「LCACの夜間訓練が常態化して、付近を航行する漁船が事故に遭えば大変なことになり、断じて認められない」と要請している。また、長崎県も、今回強行された夜間航行訓練について、「誠に遺憾であり、これまでの西海市と九州防衛局並びに基地と地域住民との信頼関係を損なうことが懸念されております。」とし、九州防衛局に対し、「協定書の内容を遵守」するよう求めている。ところが西海市によれば、米海軍は九州防衛局を通じて、本年十二月四日から六日、再びLCACの夜間航行訓練を強行する旨伝えてきたとのことである。政府が米軍のいいなりになって、この機に地元との重い約束である前記協定書をなし崩しにしてしまうことは断じて許されない。
 政府は、地元の総意を重く受け止め、前記協定書を遵守し、LCACの夜間、早朝における航行を禁止するための具体的な措置をとるべきであると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

  右質問する。