質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第二一号

復興資金流用問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十一月二十七日

又市 征治   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   復興資金流用問題に関する質問主意書

 山本太郎参議院議員が第百九十二回国会に提出した「環境省による復興資金流用に関する質問主意書」(第百九十二回国会質問第四三号)に対する答弁(内閣参質一九二第四三号。以下「答弁第四三号」という。)及び私が第百九十三回国会に提出した「復興資金流用問題に関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第五一号)に対する答弁(内閣参質一九三第五一号。以下「答弁第五一号」という。)等を踏まえ、以下の通り質問する。

一 「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」(平成二十四年三月十五日環廃対発第一二〇三一五〇〇一号。以下「交付方針」という。)と交付方針に基づき交付された循環型社会形成推進交付金(以下「交付金」という。)及び交付金の交付に伴う震災復興特別交付税(以下交付金と震災復興特別交付税を併せて「交付金等」という。)について質問する。

1 交付方針に対する会計検査院からの指摘について
 会計検査院の「平成二十四年度決算検査報告」第四章第三節「第7 東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」の「4 本院の所見」における「(3)広域処理の状況及び広域処理に係る循環型社会形成推進交付金の交付状況」では、交付金について、「事業主体において広域処理に係る検討が十分に行われていなかったり、同交付金の交付対象施設において災害廃棄物を受け入れていなかったり、復旧・復興予算からの交付を自ら要望していない事業主体が含まれていたりなどしていて、広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのかについては、客観的に確認できない状況となっていた。」と問題点を指摘した上で、「環境省においては、同交付金の交付が広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのか交付方針の内容も含めて検証する(中略)必要があると認められる。」と指摘している。
 この指摘について答弁第五一号の十一についてでは、「一都三県において実施されていた広域処理の受入れが(中略)一都一府十六県にまで拡大したことから(中略)災害廃棄物の処理や広域処理の拡大に関し一定程度の寄与があったものと考えている。」としている。また、「環境省としては、会計検査院からの指摘を踏まえ、引き続き、同交付金をはじめとした予算の執行の適正化に努めていく考えである。」としているが、これでは会計検査院からの指摘に応じて、どのように問題点を検証し、その結果どのようであったかが明らかではない。会計検査院から指摘された問題点への見解と、指摘を受けて交付方針の内容をどのように検証したのかを明らかにされたい。
2 交付方針について
 東日本大震災により発生した災害廃棄物等(以下「がれき」という。)の広域処理を受け入れた地方公共団体のがれきの処理費は、処理を依頼した被災地方公共団体から支払われる仕組みであった。しかしながら、交付金(復旧・復興枠)が設けられ、交付金等が廃棄物処理施設の整備費や建設費等に充てる費用として支払われる形になった。
(1) がれきの広域処理を受け入れ、交付金等を受け取った地方公共団体名と交付金等を充てた事業名、事業ごとの交付金等の金額とその交付金等の合計金額を明らかにされたい。
(2) 前記一の2の(1)の地方公共団体ごとにがれきの受け入れ量を明らかにされたい。
(3) がれきの広域処理を受け入れることなく、交付金等を受け取った地方公共団体名を明らかにされたい。
(4) 前記一の2の(1)の地方公共団体は、がれきの受け入れによって、復興資金から、答弁第四三号の一についてにいう「事業費補助金等」と交付金等を二重に受け取る形になっているが、妥当であるのか。
(5) 前記一の2の(3)の地方公共団体は、がれきの受け入れに対しては何も寄与していないが、このような地方公共団体に交付金等を交付することは復興資金の無駄遣いではないか。
(6) 交付方針に従った結果、前記一の2の(4)及び(5)のような復興資金の無駄遣いが生じたのであれば、交付方針を作成した者の責任をどのように考えるか。
3 交付方針とコスト意識について
 復興資金は、国民が期待していた育児のための手当の増額や高速道路の無料化などの政策を棚上げにし、なおかつ所得税等の増税によって捻出したものであり、被災者の支援や被災地の復興を効率よく進めるために、一円の無駄もなく使うことが求められている。
 しかしながら、当初四百一万トンと推計された、宮城・岩手両県発のがれきの広域処理量は、実際には約六十万トンであり、約六分の一でしかない。これに通常言われているがれき一トン当たりの処理の平均コスト約四万円から約五万円をかけると、がれき約六十万トンの広域処理に必要なコストは約二百四十億円から約三百億円となるが、交付方針によって、それ以上の金額の交付金等が交付されている。
 通常、実際のコストを著しく上まわるような過大な予算は適切な政策とは言えないのではないか。
 そこで以下のことを明らかにされたい。
(1) このようにコスト意識を欠く交付方針に基づく交付金でも、政策的効果はあったと考えているのか。
(2) 交付方針では「交付方針を立てることによる広域処理の促進」という趣旨のことが言われているが、それはどのようなものであったのか。
(3) 交付方針はその目的を達成したと考えるのか。
(4) 目的が十分に達成できなかったとしたら、責任は、誰にあるのか。

二 宮城県石巻ブロックでのがれきの発生量と広域処理量について

1 以下のアからウに事実関係の誤りはないか認識を明らかにされたい。
ア 宮城県石巻ブロック(石巻市、女川町、東松島市)でのがれきの発生量は、八百二十六万トンに上り、各市町での処理などを経た結果、県が受託したがれきの処理量は六百八十五万トンであると宮城県が発表した。
イ 宮城県は、受託した六百八十五万トンの処理について、競争入札で落札した鹿島JVと二〇一一年九月十六日に処理業務を委託する契約をした。当該契約により宮城県から鹿島JVに支払われる金額は総額千九百二十三億六千万円であった。したがって、宮城県石巻ブロックからは、広域処理するがれきは一トンも出なかった。
ウ ところが環境省は、宮城県石巻ブロック発の広域処理するがれきは二百九十四万トンが予定されていると発表した。広域処理する予定のがれきは、宮城県三百四十四万トン、岩手県五十七万トン、合計四百一万トンと発表されていたが、宮城県の三百四十四万トンのうち、二百九十四万トン、約八十五%ものがれきが何の根拠もなく架空計上されていた。宮城県での処理計画と合わせて考えると、宮城県ががれきの処理を委託した鹿島JVへの支払いと広域処理により宮城県発の広域処理するがれきを受け入れる地方公共団体への支払いとが重複し、二重に支払うことになっていた。
2 前記二の1のウの問題は、二〇一二年九月の宮城県議会において鹿島JVとの処理業務委託契約を変更する議案が可決され、鹿島JVに処理を委託するがれきの量が六百八十五万トンから三百十万トンに減ったことにより修正されたが、修正されるまでに宮城県石巻ブロックからがれきが持ち込まれた地方公共団体はあったのか。あったとしたら二重の支払いとなるのではないか。二重の支払いとなったとしたら、どのように会計処理したのか。
3 宮城県発の広域処理するがれきは、実際には三百四十四万トンから二百九十四万トンを引いた約五十万トンしかなく、岩手県発の広域処理するがれき五十七万トンと合わせても約百七万トンである。環境省が発表した両県発の広域処理予定のがれき四百一万トンは、実際には約百七万トンであり、事実と違っている。この点について、環境省は公式に発表しているか。発表しているとしたら、発表した年月日及び文書名を教えていただきたい。また、会計検査院に対してこの事実を報告しているか、明らかにされたい。
4 広域処理するがれきの量は、当初発表された四百一万トンの約四分の一である約百七万トンしかなかった。なぜこのような間違いを犯したのか。これは過失だったのか、それとも環境省の意図的なものなのか、明らかにされたい。
 実際に広域処理がれきは約百七万トンであるにもかかわらず四百一万トンとして計上することによって、過大な予算編成になったのではないか。

三 高岡地区広域圏事務組合について

1 高岡地区広域圏事務組合は交付金等を受け取っており、会計検査院の「平成二十四年度決算検査報告」では、がれきの「受入れを行っていた5事業主体」に分類されている。
 しかしながら、同事務組合が建設していた焼却炉が完成したのは二〇一四年九月であり、がれきの広域処理は同年三月三十一日に終了していたため、同事務組合ががれきの広域処理を受け入れることは論理的に不可能である。高岡地区広域圏事務組合は、「平成二十四年度決算検査報告」の作成にあたり会計検査院が行った会計実地検査の対象には含まれておらず、会計検査院は高岡地区広域圏事務組合から提出された調書等及び環境省への聞き取りで記載したと思われるが、環境省は高岡地区広域圏事務組合が、がれきの受入れを行っていないことを、会計検査院に報告するべきではないか。
2 答弁第四三号の九の1から3までについてでは、高岡地区広域圏事務組合が交付方針に基づき交付金の交付対象となった理由を説明しているが、これは、「実際には高岡地区広域圏事務組合ではがれきを受け入れられる状況にはないことから、高岡市が受け入れたが、同事務組合が整備中の焼却炉の完成後には高岡市の廃棄物を同事務組合が受け入れることになっていたため、交付方針に基づき、がれきは同事務組合が受け入れたものと考える」ということなのか、あらためて説明されたい。
3 高岡市が受け入れたがれきの量は約五百トンであり、これを受け入れることを口実にして約六十三億円の交付金等が高岡地区広域圏事務組合に支払われた。
 がれき一トン当たりの処理の平均コストが約四万円から約五万円であるにもかかわらず、高岡市が受け入れたがれきの処理については一トンあたり一千万円以上も復興資金から支払われたことになる。
 これが適法とされるのであれば、交付方針自体に問題があると考えるが見解を明らかにされたい。
4 前記三の2に関連し、高岡市の環境クリーン工場(焼却施設)には九十トン炉が三基あり、二〇一三年四月二十七日から同年十二月末までに、がれきを日量で七トン一般ごみに混入し、日量で百五十トン焼却し、千七百トン処理する計画としていた。しかし、受け入れたがれき約五百トンを処理した段階で終了した、と理解してよいのか。
5 前記三の4の処理計画の下では、高岡市で受け入れたがれきの処理によって、本来高岡市の焼却施設で処理しなければならない廃棄物が積み残されることはなく、また、その廃棄物の処理を新設する高岡地区広域圏事務組合の焼却炉での焼却に依存する状況には無かったと考えるのが妥当ではないか。見解を明らかにされたい。

  右質問する。