質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第九一号

関東大震災時に起こった朝鮮人、中国人等虐殺事件への日本政府の関与に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年四月二十六日

有田 芳生   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   関東大震災時に起こった朝鮮人、中国人等虐殺事件への日本政府の関与に関する質問主意書

 第百九十回国会質問第一三一号において、「政府は、関東大震災時における朝鮮人、中国人等の虐殺事件に日本政府が関与したことを事実として認定するか」という質問がありました。これに対する答弁(内閣参質一九〇第一三一号)は、「お尋ねの「関東大震災時における朝鮮人、中国人等の虐殺事件に日本政府が関与したこと」については、調査した限りでは、政府内にその事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である」というものでした。
 しかし、内閣総理大臣を会長とする中央防災会議の専門調査会が作成した、「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成二十年三月 一九二三関東大震災報告書【第二編】」(以下「報告書」とする)には、朝鮮人虐殺に日本政府が関与したことを記した記述があります。
 そこで、報告書の記述をふまえて、以下質問します。

一 報告書第二章第一節「内閣の対応」では、海軍の船橋送信所から内務省警保局長名で各地方長官に対し、朝鮮人が各地に放火し、「不逞」の目的を遂行しようとしており、朝鮮人の行動には厳密な取締を加えてもらいたい旨の電文を打電した例をあげ、関東大震災下の朝鮮人暴動等の流言について、「官憲が認定する形で、被災地はもとより、全国に拡大してしまったのである」との認識を示しています(七十三頁)。現政権も同じ認識ですか。

二 報告書第三章第三節「千葉県での対応」では、新聞報道を基にして、海軍の船橋送信所の所長が「集まった村民に対して、朝鮮人暴動に対する一般的状況、送信所の任務の重要性、「送信所襲撃の目的を以て来る朝鮮人」は殺しても差し支えなく自分が責任を負うことなどを訓示した」こと、この訓示により同送信所周辺で実際に自警団による朝鮮人の殺害が生じたことを指摘しています(百六十頁)。政府はこの新聞報道の内容を事実であると認定しますか。

三 報告書第二章第二節「軍隊の対応」には、「軍隊が無実の朝鮮人・中国人を殺傷した行為は深く反省すべき点であり、このような過ちは二度と起こしてはならない」と記述し(九十五頁)、報告書第四章第二節「殺傷事件の発生」では、「軍隊の歩哨や護送兵の任務遂行上のやむを得ない処置として十一件五十三名の朝鮮人殺害が記録されている」、「この際飛び込まずに逃亡しようとした他の朝鮮人は「多数の避難民及び警官の為めに打殺せられたり」」と例をあげ(二百七頁)、関東大震災下に軍隊・警察自らが、朝鮮人・中国人を殺害したと指摘していますが、政府はこれを事実と認定しますか。

四 関東大震災時における朝鮮人、中国人等の虐殺事件に日本政府が関与したことについて、歴代政府が遺憾の意を表明したことがありますか。表明したことがなければ表明する予定はありますか。表明する予定がないならその理由をお示しください。

五 政府は、報告書の記述の根拠となっている、防衛省防衛研究所図書館所蔵「大正十二年公文備考」、「関東戒厳司令部詳報」所収の「震災警備ノ為兵器ヲ使用セル事件調査表」は、関東大震災当時に日本政府が作成した、「関東大震災時における朝鮮人、中国人等の虐殺事件に日本政府が関与したこと」について、「事実関係を把握することができる」記録であると認識していますか。

  右質問する。