質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第六八号

鉄道の小規模な遅延防止に向けた啓発活動に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年三月三十一日

藤末 健三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   鉄道の小規模な遅延防止に向けた啓発活動に関する質問主意書

 昨年四月、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会の下に設置された「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」が開催され「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)」が取りまとめられた。本答申においては「混雑による乗降時間の増大やラッシュ時間帯における高頻度の列車運行等に伴い短時間の遅延が慢性的に発生している。(中略)また、遅延発生時等における情報提供のあり方についても改善の必要性が指摘されている。長年の遅延対策の取組により高水準な安定輸送を実現している鉄道事業者も存在するが、鉄道事業者によって、その取組や成果には、ばらつきが存在している。」と指摘されている。
 東京圏の鉄道の遅延発生状況とその原因等を把握するため、特に遅延の発生が多い十九路線を国土交通省が調査した結果、調査期間(平日二十日間)のうち平均十三日で三分以上の遅延が発生しており、このうち三分から十分未満の遅延が八十六パーセントを占めていた。日常的に短時間で発生する遅延は、都心部駅周辺の高度集積化や沿線の宅地開発に伴い、鉄道の適正輸送能力や駅の容量を超えて、過度に利用者が集中することによる構造的な問題である。
 このように遅延が頻発しており、定時性を求める声は大きくなっていると見る。安全運行が最優先であるという大前提を徹底しつつ、信頼性の向上を図るためにも、利用者からの信頼が厚くいつでも安心して利用できる「信頼と安心の都市鉄道」の実現を目指して対策を進めるべきである。
 また、三十分以下(三分以上)の遅延の発生状況について、国土交通省が行った調査によると、遅延の発生原因の約七割が、混雑及び混雑を背景としたドア挟み(四十七パーセント)、急病人(十二パーセント)、線路支障(落とし物等)(六パーセント)など、利用者に起因するものである。このように遅延対策については、利用者の取組が大きな効果をもたらすと考える。
 このような認識の下、以下のとおり質問する。

一 鉄道事業者に対し、定時性を求める利用者の声は大きいものの、定時性を追求するあまり、安全輸送が損なわれることがあってはならないと考える。特に、鉄道事業者間で安全性向上に関する取組の程度に差異が生じていると思われることから、鉄道事業者間で、安全性向上に関する取組の経験やノウハウが共有され、自社に適合した取組を考案することができるような鉄道事業者の取組を促していくべきではないか。国としてどのような促進策が考えられるか、明示されたい。

二 鉄道駅における乗降・乗換えを円滑化するための駅係員による案内、運行の安全を確保するためのホーム要員・警備員の増員等、ソフト面の対策を講ずることが重要であると認識している。これらの対策の効果的な実施に向けて、鉄道事業者に対して国としてどのように働きかけていくのか、明示されたい。

三 前述のとおり、駅係員は、駅における乗降・乗換えの円滑化に寄与することが期待されている。しかし、駅係員に対する暴力行為の発生件数は、二〇一五年度においても合計で八百七十三件に上り、依然として高い水準にある。かかる行為は、鉄道の安全確保や利用者への良質な鉄道輸送サービスの提供に悪影響を及ぼすおそれがあることから、引き続き暴力行為は犯罪であるとの認識の下、警察等関係者と連携し、その撲滅に向けて啓発活動、駅構内の巡回等の対策を行っていく必要があると考えるが、国としての取組方針はいかがか、明らかにされたい。

四 利用者の行動によって、遅延の解消に向けて状況を改善できる余地は大きい。他の利用者に配慮した所作により、遅延が抑制できるという認識を広め、利用者の主体的な行動を促すことが重要である。東京オリンピック・パラリンピックを通じて、整然かつ円滑な乗車が日本の優れた都市文化の一つとして世界に発信されることにも期待し、駆け込み乗車防止や整列乗車などのマナーアップについて利用者のより一層の理解と協力を仰ぐべきではないか。これを実現するための取組として、国と鉄道事業者の協力の下、キャンペーンを実施してはどうか。国としての考え方を明示されたい。

  右質問する。