質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六四号

内閣参質一九二第六四号
  平成二十八年十二月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員山本太郎君提出「東京五輪を通じて復興に向かいつつある我が国の姿を世界に発信すること」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出「東京五輪を通じて復興に向かいつつある我が国の姿を世界に発信すること」に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」(平成二十八年三月十一日閣議決定。以下「復興基本方針」という。)において、「遅くとも事故から六年後(平成二十九年三月)までに避難指示解除準備区域・居住制限区域の避難指示を解除できるよう環境整備に取り組む」こととしているほか、「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」(平成二十八年八月三十一日原子力災害対策本部・復興推進会議決定)において、「帰還困難区域のうち、五年を目途に、線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す「復興拠点」を、各市町村の実情に応じて適切な範囲で設定し、整備する」こととしている。
 なお、御指摘の「福島県外へ避難している東電原発事故被災者の福島県への帰還者数」及び「福島県における定住人口の増加」は、福島県外から同県内への人口の移動全般を指しているものと解されるが、当該移動は御指摘の「避難指示解除の進捗及び支援対象地域等の縮小」以外の要因によっても変化するものであり、当該移動のうちこれらの要因に伴うものを正確に把握することは困難である。

二について

 御指摘の答弁における避難指示解除の要件のうち放射線量に係るものは、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二十条第二項の規定により原子力災害対策本部長が行うことができることとされている避難指示の解除について、同本部長が当該解除を行うに当たっての基本的な考え方となるものとして、国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)の勧告等を参考に、原子力災害対策本部において平成二十三年十二月二十六日に決定したものである。

三について

 御指摘の避難指示区域の解除の要件については、「ステップ二の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」(平成二十三年十二月二十六日原子力災害対策本部決定)に記載しており、経済産業省のホームページ等で国内外に広く公表しているところである。

四及び五について

 政府としては、平成二十七年度に原子力規制委員会が国立研究開発法人日本原子力研究開発機構に委託して実施した東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布データの集約事業により、避難指示が解除された地域の一部において、一平方メートル当たり四万ベクレルを上回る放射性セシウムを含む土壌が存在することを把握している。
 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)は事故由来放射性物質(同法第一条に規定する事故由来放射性物質をいう。)による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的としており、これを踏まえ、土壌等の除染等の措置(同法第二条第三項の土壌等の除染等の措置をいう。以下同じ。)は人の健康又は生活環境に及ぼす影響の程度の指標となる空間線量率を低減する観点から実施されている。避難指示が解除された地域は除染特別地域(同法第二十五条第一項に規定する除染特別地域をいう。)に含まれているところであるが、当該地域においては、帰還困難区域を除き、平成二十九年三月までに特別地域内除染実施計画(同法第二十八条第一項に規定する特別地域内除染実施計画をいう。)に基づく土壌等の除染等の措置を完了するべく、これらを着実に行っているところである。
 また、政府としては、土壌等の除染等の措置の状況について、環境省のホームページ等で国内外に広く公表しているとともに、国際原子力機関を通じた発信も行っている。

六について

 東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(平成二十四年法律第四十八号。以下「子ども被災者支援法」という。)第六条第一項に定める調査については、避難指示区域において行うものを含め、「総合モニタリング計画」(平成二十三年八月二日モニタリング調整会議決定)に沿って行う調査の中で、関係省庁等の関係機関が連携して実施している。

七について

 「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」(平成二十七年八月二十五日閣議決定)における御指摘の記述については、子ども被災者支援法附則第二項において「第六条第一項の調査その他の放射線量に係る調査の結果に基づき」と規定されていることを踏まえ、記述したものである。

八について

 御指摘の「放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを担保する」の意味が明らかでないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)は、放射性同位元素の使用等の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性同位元素又は放射線発生装置から発生した放射線によって汚染された物の廃棄その他の取扱いを規制することにより、これらによる放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とするものであって、御指摘のように一定の地域に居住する住民の放射線障害を防止することを目的とするものではない。

九について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、被ばくによる健康リスクについては、ICRPの平成十九年の勧告等において、放射線による人体への影響について、疫学的な研究では、百ミリシーベルトより高い線量ではがんのリスクの可能性が高くなるとされるが、およそ百ミリシーベルトまでの線量ではがんのリスクが高まることは明らかにされていないとしている。
 また、原発事故の収束及び再発防止担当大臣の下に開催された放射性物質汚染対策顧問会議の下で開催された有識者から構成される「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の報告書において、「現在の避難指示の基準である年間二十ミリシーベルトの被ばくによる健康リスクは、他の発がん要因によるリスクと比べても十分に低い水準である」としているところである。

十について

 復興基本方針における「風評被害」という語については、その意味を具体的に定義して用いているものではないが、政府としては、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事故による風評被害を含む影響として、福島県をはじめとした被災地産品の買い控えや被災地への観光客の減少等が様々な要因により生じていると認識しているところである。
 なお、先の答弁書(平成二十六年六月十三日内閣参質一八六第一一七号)一及び六についてにおいては、「かかる被害に対して風評被害という表現自体を避けることが本来望ましいが、現時点でこれに代わる適切な表現は、裁判実務上もいまだ示されていないともされている」と答弁したところである。

十一について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、福島県をはじめとした被災地の産品や被災地への観光について、国外における科学的知見に基づく安全性に関する正確な情報提供や正しい理解の普及等に取り組んでいるところである。
 また、「風評被害」という語の英訳については、政府として、説明する内容やその相手方に応じて適切な語を用いて説明してきており、これらの説明の際の用語につき一概にお答えすることは困難である。

十二について

 御指摘の「みなし仮設無償化を打ち切ること」の意味するところが明らかではないが、災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)に基づく応急仮設住宅の供与期間の延長については、応急救助の実施主体である都道府県知事が内閣総理大臣に協議し、その同意を得た上で決定することとされており、東日本大震災における福島県の応急仮設住宅に係る供与期間については、平成二十八年五月三十日付けで、福島県知事から内閣総理大臣に対し、平成二十九年三月末とされていたものにつき、特別な事情があるものについては、平成三十年三月末まで延長したい旨協議があり、内閣総理大臣は、当該協議について、平成二十八年六月六日付けで同意したところである。
 また、政府としては、福島の復興及び再生の円滑かつ迅速な推進を図るため、住民の帰還促進や生活の再構築等に向けた財政上の措置を講じてきているところであり、同県が、当該財政上の措置等を活用しつつ、同県の状況に即した具体的な支援策を実施してきているものと承知している。さらに、政府としては、新たな生活への円滑な移行のための相談支援をはじめとして、被災者がいずれの地域においても安心して生活を営むことができるよう、定住支援に重点を置きつつ、地方創生分野の取組など各施策も活用しながら、引き続き必要な支援を行っていくこととしている。