質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三三号

ブラック求人の監視と取り締まり強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十一月十六日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   ブラック求人の監視と取り締まり強化に関する質問主意書

 求人票に記載された実態とは異なる条件にひかれて入社した結果、従業員の過労事故死など様々な問題が発生しているとの認識の下、二〇一五年七月十三日にNPO法人POSSEが厚生労働省に対しブラック求人の監視と取り締まり強化の申し入れをしたが、これに対する回答は未だないと聞いている。ついては、以下の各項目について、それぞれ政府の見解を明らかにされたい。

一 公共職業安定所で公開する求人票の「時間外」の項目に「あり」と記載されている求人については、事業主に対して三六協定の提示を求め、労働基準監督署による受理印の有無そして三六協定に記載されている労働時間及び対象職種と実際の求人票に書かれている内容の相違についての確認ができるまで求人を掲載しないようにするべきではないか。

二 求人票の「時間外」の項目に、三六協定の延長限度である年三百六十時間の一ヶ月平均である月平均三十時間を超える時間外労働時間が記載されている場合は、その求人を掲載しないようにするべきではないか。

三 求人票の「賃金」の項目では、「a基本給(月額平均)又は時間額」、「b定額的に支払われる手当」、「cその他の手当等付記事項」となっており、固定残業代はb欄に記載されることになっている。しかし、「定額的に支払われる手当」には、時間外割増賃金等の計算の際に一時間あたりの基礎単価となる「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」(以下「基礎時給」という。)の算定基礎に含まれる賃金(以下「基準賃金」という。)と含まれないもの(除外賃金、固定残業代など)の両者があり、この欄に記載されることになる。これでは、求職者が求人票の記載から基礎時給を把握するのは困難であり、残業代支払いにおけるトラブルの元となる。この状況を改善するために、①新たに欄を設け、基礎時給を記載させること、②その計算根拠が確認できるように、a、b、c欄について、aを基本給、bを基準賃金となる手当とし、cをb以外の手当(除外賃金、固定残業代など)と区分する記載のルールに改めるようにするべきではないか、このようにすることでaとbが基礎時給を算出する根拠となりトラブルを減らせるのではないか。

四 固定残業代の記載のある求人のほとんどが違法または違法の疑いがあると考えられるため、全国の各労働基準監督署は、固定残業代の記載のある求人を出している事業所における残業代未払いの実態調査を行い、さらには固定残業代の記載のある求人を出している事業所に対しては重点的に監督および指導を行うようにするべきではないか。

五 公共職業安定所は労働基準監督署と連携し、労働基準監督署などから告発を受けている会社などの求人票は掲載しないようにするべきではないか。

六 求人票の書式に、求人を出す事業所が「この求人票に基づいて労働契約の申込をした労働者を採用する際には、当該労働者に対して最低でもこの求人票に記載された労働条件を保障します。」旨の意思表示ができる欄(任意のチェック欄)を作成するべきではないか。

七 求人票と実際の労働条件との違いがないかチェックするために採用時に労働条件明示書を労働基準法第十五条、労働契約法第四条等に基づいて提示することを徹底させ、労働条件明示義務違反への刑事罰による取り締まりを強化するべきではないか。

八 労働条件明示書と求人票との違いがある場合、事業所にその理由を説明させるべきではないか。

九 求人票と実際の就労時の労働条件が異なる旨の就労者からの苦情の総数、業界別数、会社名等の情報を公表するべきではないか。

十 職業安定法第六十五条第八号「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」を「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」とする同法第六十五条の規定を活用し、違法な虚偽の求人の取り締まりを強化するべきではないか。

十一 求人票の記載と実際の労働条件に相違があったことが判明した場合、当該事業者に対してペナルティー(例えば相違があった場合、一年間は求人申込サービスを利用できない、相違があった旨が求人票に記載される、など)を設けるべきではないか。

  右質問する。